妖怪愚痴録 ~たそがれ茶屋は妖怪たちの拠り所~

B星

001夜 あかなめ♀


 私、『垢嘗あかなめ』ってやつなんだけど。そうそう、バスタブとかの垢を舐めて食べてるの。


 で、私には結婚を考えてる彼氏がいるわけ。


 もうさ。出会ったときに、この垢嘗だって、電流走っちゃったんだよね。運命だって、思ったんだよね。


 彼氏も同じ気持ちって言ってくれてて。


 友だちにも自慢とかしちゃって。


 なのに。なのにさ。今になって、知ったんだけど。


 あいつさ……。


 一人暮らしの女の家のバスタブばっか舐めてんの!


 しかも二十代限定! これが俺のポリシーとか言ってさ!


 いいんだよ、別に。ほかの垢嘗だったら、どこのバスタブ舐めてたって。


 でもさ、あいつは私の彼氏なの。私がやめてって言ってるんだから、やめてくれたっていーじゃん。いくら人間っていってもさ、女は女、メスはメス、って私は思うわけ。


 女の垢を舐めるなとは言わないけど。一人暮らしの若い女、限定とか……。


 私は、彼氏ができてから、一人暮らしの男のところはけてたのに。マジ裏切られた気分……。しかも、頼んでもやめてくれないなんて、マジありえない。


 運命の相手だって思ったのになー。友だちにも自慢しちゃったのに……。


 あー、マジでどうしよ。

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