ケモミミサワリタイ。シッポモフモフシタイ。

 俺の中で育ったある欲求。今なお増していくそれを、なんとか満たしたかった。

 しかし、その行為を野郎にやるならともかく、女の子にするのは如何わしさを含み不可能であった。

 だが、野郎になんて興味もなければ、やりたいとも思わない。それはもう別物と言っていいくらいだ。


 どうせなら。いや、絶対に女の子に対してしたい俺が、いくら『如何わしくない! 純粋な興味です!』と叫んでも、認められることはなかった。

 隣に『あたしに本気でぶん殴られてもいいならいいわよ』とか発言する女がいては、まあ無理だ。やった場合、本当にやられるし、やられたら死ぬ。


 ──だが、神は俺を見捨てなかった! なんと、その望みが叶おうとしています!


「い、いや……やめて、いや────!」


「はぁはぁ……大丈夫だよ。優しくしてあげるからね。痛くしないから、ちょっとだけ我慢してね……」


「んんっ──!」


 はぁはぁ……こうなるまでには少し話は遡る。

 まあ、キミたち。聞きたまへよ!


 歩いていたら見つけたコンビニふうの建物。そこに違法性を感じ、内部に踏み込んだ俺たち。そこでは何やら、本当に違法なことが行われていたらしい。

 その違法コンビニの店主であるネコミミ少女。名をミルクちゃんと言い、彼女はお姫様のお友達とのことだ。


 彼女は自らの違法性を自覚していたらしく、俺たちに捕まる前に逃亡をはかろうとした。

 店内に積まれたダンボールの山により、裏口に逃げる事は出来ずに、正面突破にて逃げようとした。


 しかし、残念な身体能力であった彼女は、俺によってあえなく御用に。猫なのにね……。

 きっとメロンくらいある部分が重いのでしょう。すごいんだよ? マジでメロンくらいあるんだ。


『ミルク、ここで何をしていたの?』


『……』


『──答えなさい! 事と次第によっては大変なことよ! ここで何をしていたのか言いなさい!』


『……』


 違法とは言っても、それが何なのか分からないので、お姫様はミルクちゃんに尋問した。もうね。俺が白状したくなるくらいに怖いのよ。

 だが、ミルクちゃんは黙秘。お姫様が聞き方を、厳し目から優し目に切り替えても黙秘を貫いた。


『仕方ない。誰か呼んで引き渡しましょう。何も答えないし、仕方ないわね』


『……』


『けど、もしそうなったら、あたしほど優しくは聞いてもらえないわよ? 昔から仲良くしてきた貴女を、尋問やら拷問にかけるなんてしたくないの。だから、話して』


『……』


 わざとらしくお姫様が言ったことにも、ミルクちゃんは反応せず黙秘。このままでは、誰が何を聞いても彼女は黙秘するだろう。

 そう思った俺はお姫様に頼んでみた。

『ケモミミサワリタイ。シッポモフモフシタイ』と。


『いいわよ。このままじゃ埒があかない』


『──マジで!? 本当にいいの!』


『ただし! 耳と尻尾だけよ。他のところに触ったら容赦しないわよ』


『──心得ております! お姫様バンザイ!』


 つけ込むようで悪いがこうしてチャンスを掴んだ! あとはほら、モフモフしたり、ニギニギしたりするだけだから。


『ミルク、これが何もなしに白状する最後のチャンスよ。その男は本当にやるわよ。さっきからヤバイ目で、貴女のことを見てるもの……。ここに来るまでも、女と見るなり同じような目をしていた。あたしが睨みをきかせてきたから何もなかったけど、あたしが止めなければ大変なことになっていたでしょう……』


『うぅ……』


 ここでミルクちゃんは初めて声を出した。

 お姫様の脅しが効いている。このまま喋られたら、モフモフがなくなってしまう。

 そう判断した俺は、欲望を行動へと移した。


『そいつは欲望に忠実だし、行動力は無駄にあるわ。おまけにおかしな嗜好をしている。あぁ……貴女の耳に手が届くまで、3、2、1……0』


 ……だいぶ失礼なことを言われたが、俺はついに念願のケモミミに到達した!

 すげーーっ! これ本物の耳だ! 触れてる部分は温かく、ピクピク動く!


『んっ──、だめ……そんなにしたら……』


 耳は敏感なのか1タッチ毎に、ミルクちゃんはビクッ、ビクッと身体が震え、変な声を出し続ける。とてもイケナイことをしている気になる。


『あぁ──ん。んんっ……』


 何かに目覚めそうなくらいにゾクゾクしてしまった。モフモフ感も予想通りだし、なんていうか俺の周りにはいないタイプの女の子にドキドキしていた。


『これでもダメなのね……。やりなさい』


 お姫様の存在を忘れるくらいに夢中だったので、声をかけられたときは俺がビクッとしてしまいました。

 そのお姫様の顔は、なんとも言い難い表情だったが、今のは尻尾にいけということだろう。


『いや……やめて……尻尾は……』


 ここで冒頭へと繋がる。俺は尻尾に手を伸ばし、軽くギュとした。ミルクちゃんはいやらしい声を出す。


「──ストップ!」


「あっ……尻尾はダメ……ダメ……なの」


 お姫様からストップと指示が出るが、瞬間的には止められず、1回余計にサワサワしてしまった。おかげでギロリと睨まれた。


「ミルク、嫌なら喋りなさい。このコンビニは何なの? ここで何をするつもりだったの?」


「ううっ……」


 観念すると思ったが、彼女はうつむき目をぎゅっとつむる。それを見たお姫様から、さらにいけとGOサインが出る。


「ああっ──、本当に尻尾は……だ……め────!」


 触れたスベスベ尻尾よりも、エッチな声を出すミルクちゃんにドキドキします。やはり、これは大変如何わしい行為だった。


「まだ、足りないみたいね……。もう見ていられないんだけど仕方ないわ。続け──」


「ううっ、しかなかったんです! 私にはこうするしか、あぁっ……んんっ──!」


 エッチな声を発していたミルクちゃんは、ようやく観念したのか泣き始めた。

 見てられないと顔を逸らそうとしたお姫様は、『──いつまで触ってんのよ!』そう言って、俺に向けて鋭い蹴りを放つ。

 蹴りによりミルクちゃんから引きはがされ、俺はダンボールの山に突っ込んだ。


「──痛いっ! 酷くない! 何も悪いことしてなくない!?」


 これに関しては、僕なんにも悪いことしてないよね? お姫様がやってもいいって言ったくせに。この仕打ちは酷くない。

 ……いい思いしたんだから? その通りです! 大変満足しました!


「ミルク、変態は退治したわ。さあ、話してちょうだい。ここで何をしようとしていたの?」


「姫さまー、こわかった。怖かったですーーっ!」


 ダンボールに突っ込んだ俺をまったく気にせず、2人だけの世界に入っていく女子たち。

 抱きついたミルクちゃんを、お姫様は優しく撫でている……。


「よしよし。それで。なんなのここは?」


「コンビニです……」


「いや、それは見たら分かったから」


 うん、コンビニなのは一目で分かったから。ずっとコンビニって言ってるし。

 ああ、俺? 起き上がるのを飽きためたのよ。下手に動くと、ダンボールが落ちてきて埋まるわこれ。


「まだ、開店してないんですけど」


「だからガラスのところ絵だったのね」


「はい。1人じゃ全然進まなくて。でも、私1人しかいないし……」


 いや、1人でコンビニ経営は無理があるんじゃないだろうか? いざ開店となったら絶対に無理だろ。

 そもそも異世界のコンビニは24時間営業なのか? あと何を売ってんのよ。


「ここで何を売るつもりだったの? それが逃げようとした原因でしょう?」


 名探偵は少ない情報で推理したようだ。

 開店していないコンビニに問題がないのは明らか。となれば、品物にやましいところがあるというわけだな。流石は名探偵。


「これです……」


 ミルクちゃんは、レジが入るであろうところの奥の方に歩いていき、壁にあるスイッチを押す。すると、暗かった店内に電気がつく。


「えっ」


「えーーっ、電気あんの!? 城にもなかったのに! って、しまった! ダンボールが、ギャ────」


 何よりも電気ついたことに驚いてしまって、うっかり飛び起きてしまった。

 結果、ダンボールが予想通りに崩れてきて、俺は生き埋めに……なってないな。隙間ができて逆に脱出できそうだ。


「で、出られた。ダンボールがやけに軽いやつだったのが幸いだった。ところで、どうやって電気引いてんだ? すげぇ気になるんだけど」


「太陽光発電です」


「それも、えーーーーーーっ!? まさかの太陽光発電だった! どうなってんの異世界!? 俺、今日はずっと驚きっぱなしだよ!」


 太陽光発電って! 異世界にあったコンビニは、ありえないことばかりなようです。

 どういうわけで太陽光発電なの? コンビニってのも変だからね? 何がどうなっているんだよ!


「そんなことより。ミルク、これ……」


「いや、太陽光発電は無視できないから。コンビニが太陽光発電とかおかしいからな。ツッコむとこ山のようにあるよ!」


「少し黙ってなさい。今度は壁にツッコませるわよ?」


「……」


 俺の危機察知能力が発動した。だから黙ります。

 あと一言でも発していたら、俺は壁にめり込んでいただろう。そして死んでいただろう。


「どうしたの。この玩具」


「だって、もう戦なんてないのに、みんなつまらなそうで……。悪魔さんに頼んで、店と商品を用意してもらいました」


「だから、こそこそやってたのね? 誰も咎めやしないわ。もう戦なんて起きないんだから」


 あぁ、この子も感じていたのだ。この世界はつまらないって。それで玩具か。

 玩具と言っても複雑なものではなく、木の玩具に、簡単な玩具。そしてこれは子供のためか。


「そう、なんですか? お城からなんのお達しもないのに?」


 ああ、そういうことか。納得だわ。

 あの、おっさんたちのせいか! どんだけ戦に特化してんだ! 全員、脳筋すぎるだろ!


「それで、お城にも姿を見せなかったのね。あたし、あなたに頼みたいことがあって探しにきたのよ」


 つまり、俺の案内とやらはついでだったんだね? 大して案内されてないし、別にいいんだけどね。


「人手が足りないのよね? なら、必要なら言いなさい。こいつが手伝うわ。プロデューサーってのは、そういう役職なんだから」


 急になんか俺の話になったよ。普通に嫌だよ。プロデューサーって、そんな便利屋みたいな役職じゃないよ?

 んっ……さっきから何で黙ってるのか?

 壁にツッコみたくないからだよ! わかれよ!


「──本当ですか! 変態さん!」


「やるわよね。変態さん?」


 キミたち、とりあえず変態呼びはやめてほしいな。あと最後に1つだけ……──悪魔すごくね。

 なんなの悪魔! 実は世界にはいっぱいいるの!? セバスだけでもヤバいと思ってんのにさ!

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