第18話 Uluwatu(ウルワツ)

エディ「酒井さん、山田さん、ウルワツ寺院へようやく到着しました。さぁ、車から降りて寺院を散策しましょう。このエリアには野生のサルがいるので、ご自身の手荷物には注意してください。ここのサルは神獣を言われています。神様の使いである生き物なんですよね。またこのウルワツ寺院から眺めれることができる海はインド洋です。波が荒く、かなり迫力のある海ですからね。今では、その波なのでサーフィンの有名なスポットでもありますよ。バリ島のパワースポットの一つで有名な観光名称なんですよ。」


山田「パワースポットなんでなんだかうれしいですね。酒井さん、ウルワツ寺院です。何か伝わってくるものはありますか。」


僕「そうだな。今のところ特にはないけれどね。南国の樹々の間を歩いていると、何だか心がいやされるよね。ところどころ差し込みバリ島の日差しが何ともいい感じのコントラストを醸し出しているよね。」


山田「本当にそうですね。バリ島のサンサンと降り注ぐ太陽なのに、木陰は涼しいですよね。なんだか神聖な空気に包まれている感じがしますね。」


エディ「このウルワツ寺院は観光のケチャダンスを夕日越しに見ながら鑑賞できるツアーもあります。先ほど車の中でお伝えしましたが、その舞台がこちらの建物です。かなり迫力があるみたいですよ。ぜひ、今回見学してみていただければいいとも思いますよ。」


僕「そのケチャダンスは、観光用なんですよね。村で実際行われている儀式のケチャを視たいもんですね。エディ、そんな村のケチャって見られるところありますか。」


エディ「そうですね。あるにはありますが、日程が合うかどうかというところと、ブラックマジックがベースのため、ちょっと危険かもしれませんけど。ケチャとは少々違うみたいですけどね。」


僕「そうなんですね。でも興味はあるんですよね。」


エディ「一様、探してみますね。」


山田「ケチャって何ですか。」


エディ「ケチャは、バリ島の民族舞踊なんですよね。そうですね。ケチャは、今現在も残っているバリ島のブラックマジックをベースにしています。今もそうですが、心霊医療もあるんですよ。その魔よけのような踊りの一種が、ケチャなんですよ。山田君、ケチャを簡単に説明しますね。KECAKと表記されます。その最後のKは発音しないため、地元ではチャと呼ばれているそうです。観光客用にケチャと呼んでいるみたいですね。バリ島の男性合唱なんですよね。また、呪術的な踊り(サヒャ)の舞台劇ともいわれます。バリ島では疫病が蔓延した時などに、初潮前の童女を媒体として先祖の霊を下ろし、加護の助言を受けていたといわれています。そういった舞踊は、現在もバリ島に存在しているんですけどね。」


山田「そうなんですね。まだ、そんなことがあるんですね。不思議ですね。やはり、神々の棲む島ですね。」


僕「そうだよ。山田君。バリ島はそういったスピルチュアルなものが、まだまだ継承されているんですよ。でも、そういった環境がバリ島の人たちに感謝の気持ちを持たせているんでしょうね。」


山田「このバリ島って本当に不思議で、ミステリアスな島ですね。」


エディ「バリ島では、人々がトランス状態になる儀式があるんですよ。」


僕「それってなんですか。その儀式って。すごく興味があるんですけど、教えていただけますか。」


エディ「スマラプラ県エリアにある村で、実際に行われているといわれています。その呪術は、バクサバリ村というところで行われているみたいです。」


山田「どんな儀式なんですか。」


エディ「そうですね。その儀式は、その村の中にある寺院で行われるようです。儀式が始まる前には、境内では上半身裸で黒と白の格子柄の腰布を巻いた男たちが集まって行われるようです。」


僕「ちなみに黒と白の格子柄の布は霊力を持つといわれています。その霊力をもって儀式に参加するんでしょうね。」


エディ「僕の友人でその村の出身者がいるんですよ。その友達から聞いた話なんですけどね。」


山田「そうなんですね。その儀式とは、どんなものなんですか。その儀式では、ちなみにどんなことが行われるんですか。」


エディ「酒井さん、山田さん、その続きを話しますね。」


僕「エディ、よろしくお願いします。」


山田「俺もその続きを聞きたいです。なんだかすごく興味が掻き立てられます。」


エディ「その儀式に参加する男性たちが、川で沐浴であるマンディをし、体を清めるらしいです。その清められた体で儀式に参加するって感じみたいですよ。川でマンディを終えた男たちが境内へ戻るころには、顔つきが厳しくなっているんだそうです。雰囲気が一変しているみたいですよ。」


僕「そうなんですね。怖いけどなんだか興味深いですね。彼らに神様が降りているって感じなんですかね。マンディは体を清めるという意味があるんですね。日本でも神社仏閣を参拝する前には、手水といって手と口を洗うんですよね。」



エディ「日本でも水で清めるってあるんですね。その続きもあります。その男たちは、雄叫びをあげ、自らの士気を高めるようです。寺院の門のあたりでは、村の女性たちが儀式のための歌を歌い始めるらしいんです。その歌は、かなりおどろおどろしい曲みたいなんですよね。」


山田「おどろおどろらしい曲ってどんな感じなんですかね。」


エディ「僕も聞いたことがないのでわからないんですけどね。その歌声が境内に響き渡るころには、儀式で使うバラカンジュールという音楽の音もだんだんと大きくなってくるらしいんですよ。」


山田「バラカンジュールとは、どういったものなんですか、酒井さん。」


僕「そうですね。ガムランの楽器の一種ですね。悪霊にかかわるものといわれているようですね。その勇壮な響きは、悪しき霊との戦いに相応しいものといわれています。その村で行われる悪魔祓い的な儀式なんでしょうかね。それならば、マッチする音色ですよ。儀式では、よく用いられる打楽器の一種ですね。」


山田「そうなんですね。非常に興味深いですね。そんな伝統的な楽器がまだまだバリ島にはたくさんありそうですね。」


僕「そうなんですよね。なんだかわくわくしてきますね。きっとその村は、興味深い光景とまた空気感に満ちているんでしょうね。」


山田「俺、実際、その現場にいると失禁しちゃうかも。」


エディ「山田さん、まだまだその続きがありまして、その楽器から奏でられる音が境内に響き渡るころには、みこしを担いだ男たちやインドネシアの武器であるクリスを手にした男たちが列をなし、境内を回り始めるらしいです。突然、何かに引っ張られる感じでみこしが暴走し始めるらしいです。」


僕「みこしの暴走ですか。なんだか日本でいうところの大阪岸和田のだんじり祭りみたいですね。」


エディ「日本にもそんなお祭りがあるんですか。」


僕「あるんですよね。でも。バリ島のその儀式とは、少々異なっていますけどね。」


エディ「そういったトランス状態で儀式に参加している人たちは、神様が降りてくる状態になるらしいんですよ。武器のクリスを天にかざし、やたらと走り回る人や、生きた鶏のひな鳥を捕まえ、引きちぎり、むさぼる人まで出てくるらしいですよ。」


僕「生きた鳥を捕まえてむさぼるんですか。」


山田「マジですか。こわー。」


エディ「そうなんです。それほど神様の力が影響しているんでしょうね。そのみこしが見物人の中にも突っ込んでいくらしいです。その圧倒された空気感で意識を失う人たちも出るらしいですよ。」


僕「それはすごいですね。かなりの迫力ですね。」


山田「すごく興味深いです。」


エディ「ちなみにバリ島では、トランス状態のことをクラウハンといいます。それは「来る」って意味なんですよね。何かが自分自身の中に入り込んでくるって感じなんでしょうね。」


僕と山田は、ガイドのエディから非常に興味深い話を聞くことができた。今回の滞在で訪れることができるなら、是非、その場所へ訪れてみたいと思った。


エディ「それじゃ、この辺りから僕たちはウルワツ寺院へ参拝しましょうか。ウルワツ寺院の境内には入れませんので、この辺りでウルワツ寺院のシルエットがきれいにみられますので、この辺りでどうでしょうね。下を見るとインド洋の荒波が見られますよ。かなり迫力がありますから。」


僕「そうですね。天気もすごくいいし、この神聖な空気感もなんだか趣深いですね。」


山田「この感じはなんだか、俺、好きなかもです。」


エディ「この入口から入っていきます。」


その門はバリ島での一般的なものであった。ウルワツ寺院へは僕たちのような観光客は参拝できないようである。神聖な場所のため、バリヒンドゥー教信者以外は寺院の中に入ることが許されていないようだ。


ウルワツ寺院とは、切り立った岬の先に作られた寺院であった。寺院がそびえ立つその景色は、神様を大切にするバリ島の人々を象徴しているようだった。岬の下には、迫力があるインド洋からのしら波が打ち寄せている。かなりの強い力で岬に押し寄せているようである。


そのコントラストが非常に絵となる景色だった。ウルワツ寺院では夕日を背景に観光用のケチャが上演される。本日も上演されるとのことだった。僕はバリアンから言われたとおりウルワツ寺院へと訪れたが、今のところ何も変化はない。というか何かを感じ取るっていうことはなかった。確かに寺院の神聖な場所ではあるため、心が引き締まる感じはあるのだが、それ以外に何か感じるかというと今のところはない。寺院からケチャダンスの舞台までは公園になっている。その公園には、ハイビスカスなどの南国の色鮮やかな花々が咲き乱れている。聖獣である猿もたくさんいる。ある意味、極楽浄土のような景色に近いのかもしれない。


山田「酒井さん、何か感じ取れますか。というよりは、何か変化はありましたか。」


僕「特にないんだよね、今のところは。」


エディ「そうですか。バリアンは何を感じ取ってほしかったんでしょうかね。」


山田「大海原の女神様が、酒井さんの守護霊になっていらっしゃるんですよね。」


僕「そういわれたよ。おそらく、このインド洋からの風と海のパワーを感じ取ってほしかっただろうね。」


山田「女神様からは、緊急に伝えなければいけないことはなかったんですかね。となるとある意味安心ですね。」


僕「そうだね。ただこのウルワツという場所というかインド洋へ来たことに意味があるのかもしれないよね。」


山田「そうですね。酒井さんへ海からパワーを伝えているんでしょうね。酒井さんの直観力がさらに磨きをかけられるんでしょうね。」


僕「そうですかね。まぁ誰かの助言でもなければ、なかなかバリ島の南の端までは来ませんからね。珍しいところへ来れたきっかけがあっただけでも良かったですよ。」


そんな会話を僕と山田とエディと三人でしている時に、僕は一瞬目眩がした。ふらっと立ち眩みがした。これは、南国バリ島の日差しの強さだったのか、インド洋からのパワーに押されたのかどちらかは、この時はわからなかった。インド洋に反射している南国の太陽の光がまぶしいくらいだった。その光が海の色を色鮮やかに映し出していた。


山田「酒井さん、大丈夫ですか。今、立ち眩みがしたんじゃないですか。ふらふらされていましたよ。」


エディ「酒井さん、大丈夫ですか。本当に。」


僕「大丈夫ですよ。ちょっとふらついちゃっただけですよ。なんか引っ張られた感じがしただけなんですよ。今は大丈夫ですよ。ご心配をおかけしました。」


僕は二人に心配をかけないようにそういったが、実際のところは、なぜ、あの場所で立ち眩みがしたかは、本当に不思議だった。今までバリ島へは今回で30回訪れているが、バリ島の暑さでの立ち眩みをするとは、初めてだった。もしかして、僕自身の中に大海原の女神が入り込んできたのかもしれないとふと思った。僕たちはウルワツ寺院の公園を一周し、ウルワツの自然からパワーをいただいた。僕たちはウルワツ寺院という場所を後にした。


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