彼と過ごした日々は、長く無く。
猫探し(マカ)
第1話
恋しよう。
彼の言葉で、打たれるのはパチンコ台のレバーでも、ボタンでもないキーボードが鳴る。カチカチ、カチカチ。
カチカチ、カチカチ。
カチカチ、カチカチ、カチカチ。
鳴り止まないタイピングの音はわざと鳴らしているわけではなくて、より多くの文字を電子パネルに打ち込むために羅列されていく文章達が、死んでいくように止まない。始めから死んでいる様な文章ならばいいのかもしれないが、死んでいるだけの文章はないのだ。
初めから作られた文章が有るかと思えば、作られているわけでもない。彼の作った文章は、やがて編集部へと挙げられる文章なのだ。
彼は、ライターだった。何者でもないわけではなく、誰に言う身分でも無いからこそ、ライターと言う職業を秘める事ができるのかも知れない。
彼の言葉は、戦慄的で心に刺す何かがある。ライターとしての言葉では無く普段の無邪気な言葉。
ー変人
ー負けたくない。
ー諦めるの?
ーかわいくなったら、
灰になった紙を、じわりと広がる性悪な気持ち。幸いにも、灰になっただけでなく
じんわりじんわりと火を膨らませていき、簡単には消えそうもない火が出来上がっていた。
彼が、言っていた言葉を燃やした。
( ずっと、ずっと
好きだった。ずっとって、
なんだろう。 )
好きな気持ちさえ、焼かれてしまう。
この灰が事件を、引き起こす発端になるとは思えなかった。
『 幸せな家庭を、放火。』
6月下旬に、宮城県仙台市青葉区旭が丘の7階建ての( wing777 )マンションの7階の一室が、放火される事件が発生した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます