10/10 木曜日

 曇り。比較的暖かいが午後から気温が下がる。


 今朝は学校へ着くなりすぐに渡辺さんへ落とし物を届けに行った。

 仕方のない事とは言え、人のものを何も言わずに自分で持っておくというのは気分の良い物ではなかった。


 登校して教室に着くなり渡辺さんへ手渡す。

 「助かったし!さんきゅー」と生徒手帳の写真の様な笑顔で言うと、続いて「2日目のバンド絶対見に来て!」と言っては

 目を閉じては口を小さく動かし、時折腕を上げては下へ動かしている。

 バンドのイメージトレーニングをしているのだろうか。


 当日までに自分のすべき仕事は終わったが妙に落ち着かず、放課後は学校内を見て周っていた。 

 音楽室の中からは誰かの歌声が聞こえてくる。

 暫くすると中から渡辺さんが出てきた。額に汗が滲んでおり、自分を見ては「最高の時間にすっから!」と言い、速足で廊下を歩いていった。

 2日目の練習だろうか。

 2日目は委員会の仕事も特にないので、見に行こうか。


 家へ向かう道の途中、スーパーから大きい袋を持った上原さんと会った。

 制服を着ておらず、金髪になっていた。

 校則では髪を染めるのは禁止だが、学校祭に限り先生方も「当日から1週間は良し!」と言っていた。

 だが、まさかあの上原さんが染めるとは。

 

 上原さんの家は知っていたので、帰り道まで手伝おうか、と言うと「迎えの車が来ているから大丈夫」といいそそくさと曲がり角を曲がって姿を消した。

 なにかまずい事を言ってしまっただろうか。


 明日は学園祭当日だが、委員会としての仕事は特にない為、久しぶりに気兼ねなくぐっすり眠れる気がする。

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