15話
「よしアレーシャよ、最初の任務だ」
「はっ!」
アレーシャはさらに深く頭を下げ、口元に笑みを浮かべた。
「この村の近くに、人族の街がある。そこに行って、今後1年はこの村に攻め込むな! と強く言って来い。そうだな… その宇宙船に乗って、華々しく登場すれば、より効果的だろう」
予想外の言葉だったのか、アレーシャは勢いよく頭を上げ彼を見た。
「この惑星の住人を、直接干渉するのは宜しくないか… と…」とアレーシャは、黙ってこちらを見ている兼次に、恐怖心を感じ言葉の中で詰まってしまった。そしてすぐさま頭を下げた。
「申し訳ございません。出過ぎた真似でした」
「たしか、連合の重要監視惑星になっていたな・・・」
「はい、しかし創世主様には関係ない話でした。では行ってまいります」
アレーシャは、立ち上がると兼次に一礼すると、駆け足気味で宇宙船に戻っていった。宇宙船の扉が閉まると、宇宙船はゆっくりと高度を上げた。全体が光に包まれ、周囲を明るく照らしながら上空に進んでいく。その周囲には村人が総出で、その光景を見上げていた。
「これで問題は解決したな」
兼次は振り返り麻衣を見ると、うっすらと笑みを浮かべた。
「そして麻衣よ、異世界転移前の準備が役に立つ時が来たようだな!」
「え! なに?」
「村人にスーナの実の育て方を伝授するのだ。さあ行け! Goだ!」
麻衣は、兼次の目の前に置かれている種籾の袋を見て、溜息をついた。
「さすがに地球外植物のデータは、持ってないけど?」
「まったく、肝心な時に役に立たないな。よし俺が教えてやる、スマホを右手に持て」
「なにがはじまるの?」
麻衣はポケットからスマホを取り出すと、電源を入れ兼次を見た。
「で?」
「よし! よーく聞け! ググレカス!」
「は? ぐぐれかす?」
麻衣は兼次の言葉を聞いて、首を傾げ考え始めた。そのままスマホで検索をはじめ、答えにたどり着く。検索結果を見て、過去に使われている言葉であった。
「システムメッセージ、現在は使われてない言葉です。と言うより、地球のデータにあるわけないじゃん!」
「それもそうだな… まぁ、アレーシャに任せるか」
兼次は立ち上がると、村人が集まっている方に向かって大きな声で呼びかけた。
「お前ら! 見世物じゃないぞ! 終わったから各自家に戻れ!」
しかし村人たちは戻らず、所々でひそひそ話が行われている様であった。それを見た兼次は、振り返りアディやロディに村人達を戻す様に促した。アディとロディの言葉に応じた村人達は各々の家に戻っていった。
「アディ、後は任せた!」と兼次は、種籾の袋を持ち上げアディに渡した。
「これをどうしろと?」とアディは、袋を受け取り兼次に言った。
「先ほどの女性に聞けば、いいのですかな?」とロディが、アディを補足する。
「その前に、先程の奴とはどんな関係なんだ?」とリディが兼次に問う。
「かっちゃん、お腹すいたー」とニアがお腹を擦りながら言った。
「アディ達は、さっきの女に聞け。それで食糧問題は解決する」
兼次はニアを引き寄せ、彼女のお腹に手を当てる。兼次の手にヘコンダお腹の感触が、伝わってきた。
「お腹が背中にくっつきそーだよー」とニアが、兼次の手を払いのける。
「実が育つまで、食糧問題をどうするか… 毎回狩りに行くのもなー」
そんな兼次の行動を見ていた麻衣は、次の言葉を何となく予想していた。彼女は腕を組み、右手をアゴにあてた。
「兼次は思った『しかたない、ララを呼ぶかー』」
「呼ぶよ!」と兼次は麻衣を言うと、スマホを取り出し画面を眺めた。「さて、現地は状況は…」
ニアと麻衣は、兼次の近くに寄ると、スマホの画面を見始めた。そこには横たわるレッグと、その側に座り込む瑠偉の姿が映し出された。
横たわる猛獣、仰向けで気を失っているレッグ。瑠偉は座り込み考え込んでいた。
(どうすれば・・・)
「ララさーん! 居ませんかー?」
周囲を見渡しながら瑠偉は、小声で呼びかけた。しかし静まり返った大地に、風で草木の擦れ合う音がわずかに聞こえるだけだった。溜息交じりで、正面を向くとララが見える状態で座っていた。
「ヒィ!」と瑠偉は体を仰け反らせた「だから、突然現れるのやめてくれます?」
「お嬢様、こちらをお使いください」
ララは右手を出すと、瑠偉に向けた。その手には四角く薄く白いビニールに入った物が、手に載っていた。それは中央部分が円形状に浮かび上がっていた。それを見たことないのか、瑠偉はララの手に顔を寄せ、その物体を丹念に観察し始めた。
「なにかの薬ですか?」
「避妊具です」
「なっ!」と瑠偉は驚きながら仰け反り、両手を地面に着けた「しません! って、何度も言ってるでしょ!」
瑠偉はそった体を起こし、腕を組みをしララを睨みつけるように見た。
「それ、引っ込めてください」
「残念です」とララは手を引っ込めると、その物をポケットに入れた。
「どうすれば? レッグさん、大丈夫でしょうか」と瑠偉は優しくレッグの体を眺めた。
「これは… マズい状態ですね」
ララの言葉を聞いて瑠偉は、顔を起こしララを見る。
「まず、レッグさんの服を脱がし全裸にします。そしてお嬢様も全裸になります。そして肌と肌を重ね合わせて、レッグさん体温を上げましょう」
ララの言葉を聞きながら、歯をかみしめ嫌悪な感覚を抑える。
「服濡れてないですよー!」
「っち、知ってましたか… 気絶しているだけですから、そのうち目を覚まします。触って感触を確かめるのは、今しかありませんよ?」
ララはレッグの体の方に手を向け、どうぞどうぞと言う仕草をした。
「触りませんよ? なんか、あやしですね」
瑠偉は考え込んだ、暫らくすると遠くから「おーい」と言おう声が聞こえた。瑠偉には聞き覚えのある声、ガフとクレハの声だった。そのまま声の方を振り向くと、予想通りガフとクレハが手を振りながら、こちらに近づいてくるのが見えた。
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