11話 storyteller(ストーリーテラー) 作戦会議

「うーん・・・・ もっと、情報が欲しいですねー」


 刻夜志摩は、上半身をベッドに投げ出し、腕を頭で組んだ。天井をぼんやり眺めながら、考え込む。過去の記憶を深く探り、何か無いかと考え込んだ。静かになった、彼女の部屋。彼女の近くには、少年メイドロボが置物の様に、動くことなく彼女を見ていた。


「アレを使って・・・ でも、まずいかなー??」


 刻夜志摩は、ゆっくりと起き上がった。腕を組みながら、少年メイドロボの方を悩ましい表情で見た。


「アレと申しますと?」

「連合のデータベースにアクセスできる部屋が、浮遊島の最深部にあるのですが… 私しか入れないんです。でも今の私は別の人間ですから、もう入れないくなっているはずです」


「テナ=シエル様が、絶対に入るな。と言われた、完全に孤立した部屋の事ですか?」

「そうです。私の前の体と、私の記憶をリンクさせないと開けれないのです。でも、もう一つ開ける方法があるのですが・・・」


「その方法を、お聞きしても?」

「私の遠い昔の体、その生体認証で入れます。たしか・・・ 私の体、作ってましたよね?」


「マスターの許可を頂き。現在は、生体融合型ロボットして稼働中です」

「そ… そうですか。その領域に踏み込みましたか… まぁ、彼が居るし… いいのかな?」


 刻夜志摩は、少年メイドロボから目線を外すと…

 (昔の私の体が、動いていると思うと… なんか、複雑な気分ですね…)


「どうかなされましたか?」


「ああぁ、何でもないです。大丈夫ですよ」と刻夜志摩は、手を振り笑顔で答えた。そして、再び真剣な表情で、少年メイドロボと向かい合った。


「キプロスは滅んでいる事になっています。そして、私も死んだ事になっています。私のアクセス権は、使えないはずです。部屋に入る事は出来ますが、そこから先は貴方が何とかしてください。ただし、痕跡を絶対に残さないようにしてくださいね?」

「分かりました、細心の注意を払います。しばらくお待ちください」


 刻夜志摩は立ち上がると、机に向かって歩き始めた。机にあるテーカップを取ると、残っていた物を全て飲み干した。カップをソーサー受け皿置くと、静かな部屋に陶磁器が当たった音が、響き渡った。


「お知らせします。データベースの侵入に、成功しました」

「えっ? もう?」


 かなりの時間が掛かると思っていた彼女は、その言葉を聞いて驚いた。口を半分開けて、細かい瞬きを始めると、黙って少年メイドロボを見ていた。


「刻夜様?」

「えー… 地球に来てから、なにか増設しましたか?」


「現在進行形の形で、処理速度の増加を行っております。現在は処理速度は、キプロスに居た頃に比べ約128倍に増加しました。もちろん、マスターの許可は頂いております」

「そ… そうですか。(…大丈夫かしら? )」


「大丈夫です、問題ありません。私の上には、最恐の抑止力があります」

「まぁ、いいでしょう。それで、何かわかりましたか?」


「約一年前に、連合がルシアン星を訪れています。高出力レーザーなどの兵器で、シールドを破ろうと試みたようです。しかし、破れなかったようです。空間転移も試しておりますが、失敗しております。あとは、シールドの構成データを調べたようです。そのシールドは、我々が昔に技術提供した物が張られていました。それから教団も訪れていますが、何もせずに帰っていったそうです」


「そうですか、あれですか… そうなると、破るのは不可能ですね」

「気になる点が、ひとつあり光明が見えました。そこから、救出シナリオをシミュレーションしようと思います。刻夜様、ありがとうございました。何時もの就寝時間が過ぎてしまいました。今日は、お休みなさってください。後日、報告いたします」


「分かりました。楽しみにしてますね」


 少年メイドロボは、動き出す。机の上のテーセットを取ると、静かに歩き出し部屋から出て行った。刻夜志摩は、そのままベッドに入り込むと、目を閉じた。

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