5話 複雑に絡み合った世界


 兼次・麻衣・リディ姉弟とララが、森林の中でも木が少ない場所に居た。上空からの日の光も程よくあり、周囲よりも明るかった。その中央の地面には、小さな水たまりがあり、日の光を反射してキラキラと輝いていた。


「この辺でいいかな」


 と兼次はリディから離れ、木の側に近寄ると、木を背もたれ代わりにして地面に座り込んだ。それを見た麻衣はルディと一緒に、彼の左隣に座る。ララは彼の右隣に座った。

 最後まで立っていたリディは、4人を見渡すと仕方なく彼の正面に座った。


「リディ、お前との話はあとだ、その前に確認したいことがある。ララ、連合とは?」


 兼次はリディを見て、彼女の表情を確認すると、ララに向かって話しかけた。


「銀河連合です。光速を超えて移動できる宇宙船を保有している。又は、それ以上の渡航技術を、持っている超高度文明の組合みたいなものです。低文明の惑星に配慮し、そこを植民地化しない為、お互いに監視する為に出来た組織です。キプロスも加盟しておりましたが、滅んでいますので現在は7つ惑星が加盟しているはずです」

「7つか… 銀河の規模を考えると、超高度文明の生命ってのは意外と少ないな」


 ララの話をリディは、黙って聞いていた。しかし聞こえてくる単語が、理解できず。眉間にしわを寄せて、どのタイミングでその事を、質問しようか考えていた。


「それで教団と連合は、どちらが強いんだ?」

「総合戦力では、圧倒的に連合が上です。しかし、連合の中にも教団の信者が居ます。したがって直接戦うとなると、教団の方に軍配が上がります。そのことが解っているので、連合は教団に手出しできないでいます。教団の方も、手出しできないと踏んでやりたい放題です。それが、現在の銀河内の現状です」


「高度に文明が発達しても、相変わらず宗教問題は複雑だな。それで、先程の奴は教団信者と思うか?」

「最後の言葉『連合に報告しません』や、『何であるか理解している』 そして、分かっていても逃げなかった。そこから考察すると、99%の確率で教団信者です。今ごろは、教団上層部と連絡を取っているでしょう」


「そこから推測される未来は?」

「マスターに会おうと、この惑星に大量の宇宙船が、押し寄せると考えます」


「仮に俺が教団に、神として祭り上げられるとどうなる?」

「この銀河の勢力図が、一気に崩れるでしょう。絶対神を得た教団の力が、連合を上回ります。そして教団の勢力規模だとマスターの言葉が、末端まで届かない可能性があります。暴れる輩も出てくるでしょう」


「俺が居る地球は無事だろうが… 他の惑星の者は、迷惑な話だな」

「なんか、凄い投げやり感が・・・」と麻衣が、2人の会話に割り込んできた。


「まぁいい、その辺は事が起きてから考えるとしよう」

「どうせ、丸投げするんだろうけどね!」


 彼の言葉を的確に、フォローをする麻衣。それに気分を悪くした兼次は、空気弾を彼女の額めがけて放った。しかし、彼女の額に到達する前に、その空気弾は弾けた。


「っふふ、何時までも同じ手は、通じないわよ!」と麻衣は腕を組み、兼次に向かって自慢げに言った。

「そうか、もう使えるんだったな。まぁいい… ではリディ、次はお前の番だ」


 リディは、まだ状況が呑み込めていない様子であり。彼女は覚えている知識を、フル回転させていた。そして、ようやく絞り出した答えが…


「さっきの、光ってるアレは鳥なのか?」

「あれは乗り物だ、中に人が乗っている」


「あれに乗る? その前に翼もないのに、どうやって浮いている?」

「電磁誘導光子振動装置と言うやつだ。簡単に言うと、電磁波で光子の動きを制御して、空間を歪めて重力を制御して浮いている。飛行する時は、機体が光子に覆われる。だから飛ぶ時は、光るんだよ」


「え? 言っている意味が、サッパリ分からないが・・・」

「科学知識が無い状態では、理解できんだろうな。とにかく、あれは空飛ぶ乗り物だ。それで納得しておけ」


「んん~」とリディは、アゴに手を当てながら唸り始めた。

「そんな事は、今はいいだろ? お前たちの問題が先じゃないのか?」

「そ、そうだな・・・」


「ちょっと、待って!」


 リディと兼次の話に麻衣は、兼次に向けて右手を広げ出すと、会話に割り込んできた。


「何だ麻衣?」

「兼次ちゃん。何時から、そんな高度な科学知識を?」

「麻衣は、俺の本体の事を知ってるだろ? その知識を持っている種族から、頂いたんだよ」

「へー・・・ そうなんだ」

「マスター、今の言葉で気になる点が?」

「何だララ?」

「先程の飛行技術の点ですが、連合クラスの科学力を持ってないと・・・」

「まったぁーーー!」


 兼次はララの質問を遮る様に、大声を張り上げ発言を止めた。

 …ララの奴、気付いたのか? まさか、こんな形でボロが出るとは…と思った兼次。自身が滅ぼしたキプロスが、連合に加盟していた事。先程のララの説明と、彼の持っている知識。これらを総合すると、ララは恐らく、兼次がキプロスを滅ぼした事を察したのだろうと考えた。


「ララ… それ以上は言うな。以後誰にも言わない様に、特にな?」

「分かりました。永久に封印しておきます」


「え? なになに? なに2人で納得してるのよ?」

「麻衣、気にするな。忘れてくれ」

「そう言われると、余計に気になるのが人間なんだよねー」

「わかった、麻衣。魔法石を1000個やるから、しばらくガチャってろ」

「マジでー!?」

「マジだ。ララ、入れておけ」

「了解しました」


 兼次は麻衣がスマホを取り出し、ゲームを始めるのを確認すると、ララの耳元に顔を寄せた。そして小声で「結果は、全部ノーマルかレアでいいぞ」と耳打ちすると、ララも「了解しました」と小声で返すのであった。

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