第42話 ペップ

「ちょっときいてくれにゃー!」

バムに羽交い絞めにされたまま

ネコミミ女子は、にゃーにゃーと話し出した。

「私は、家出したんだにゃ!それから北を目指したにゃ!

 そしてここまでたどり着いたときに気付いたにゃ。

 お金を忘れたことを……」


「それで、たまたま見かけた俺たちの食料を奪おうと?」

「ち、ちがうにゃ……捨てられたテントだと思ってにゃ……」

焦りながら首を横に振るネコミミ女子の顔を

火をつけたカンテラで照らす。

ふくよかな髪をショートヘアーにしていて

そこから大きなネコミミがふたつ生えている。


スカートの下からはブラブラと尻尾が揺れているのも見える。

「猫人?」

「ねこじんとは失礼にゃ!ハイキャッターが正式名称だにゃ!

 間違えたらひっかくにゃよ!」

バムに羽交い絞めにされながらジタバタと元気の良い

女の子にため息を吐きながら


「食料があればいいの?」

「そうだにゃ!旅に出たいにゃ!あと……お金も欲しいにゃ……」

「バム、いいよな?」

バムも仕方なさそうに頷いたので、開放して

お金と食べ物を荷物から出して渡す。


さっそく渡したファイナ用のサンドイッチを食べ始めた

ネコミミ女子は、物凄い勢いでその場に吐き出して

砂をかけて埋め始めた。

「ま、まずいにゃ……私を殺す気にゃのか……」

「え?不味かった?」

バムは素早く、俺たち用の食べ物を渡す。


ネコミミ女子はそれにかぶりつくように食べて

「おいしいにゃー!やったにゃー!しあわせー!」

「あの、君はハイキャッターとしては、味覚は一般的なのか?」

「当たり前だにゃ。健康優良女子だにゃ。

 学校でも一番だったにゃ」

そういいながら、ネコミミ女子は両手を差し出してくる。

まだくれと言っているらしい。仕方なく渡す。


焚火に火を点けて、三人で囲みながら

「ゴルダブル様、もしかしたら、ミチャンポ王国の猫人

 いえ、ハイキャッターたちは、味覚が……」

「そうだな、狂ってないのかもな……」

意外な発見である。ネコミミ女子はまだ食べ続けている。


「なんで南の漁師連合国と仲が悪いんだ?」

なんとなく尋ねてみると

「やつら魚の美味しい食べ方を知らにゃいって

 みんな言ってたにゃ。それでたまに我が国は戦ってるにゃ」

「ゴルダブル様、これって……」



「味覚の違いで国同士が争っているのか……」



ピグナが知らないわけないはずなので

それで俺たちをこちらに仕向けた可能性も出てきた。

「名前は?」

「バードーリー・ぺップって言うにゃ。

 みんなはぺップって呼んでるにゃよ」

「なんで家出したんだ?」

「私には世界をまたにかけた冒険家になるという大きな夢があるにゃ。

 でも親は分かってくれないにゃ……」


バムと目を合わせて

「ぺップさん、これからミチャンポ王国に行くんだが

 ちょっとガイドを頼めない?」

ピグナの他にも現地に詳しい人が欲しい。

「いやにゃ。それじゃ、戻ることにしかならにゃい」


首を横に振ったぺップにバムが

「実は私たち、世界を旅してここまで来たんですよ。

 それにまだ遠くに行こうと思っています。

 どうですか?お給料も弾みますよ?」

「う、お給料だしてくれるなら……ちょっと……」

ペップは悩み始めた。


後はバムに任せて、俺はテントの中で

寝ることにする。隅で寝袋にはいり

今度は蚊に悩まされることも無く

安眠していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る