第18話 魔法大会決勝

魔法大会四回戦の舞台に俺は、相変わらず

パンツ一丁で立っている。

背後には、バムと着飾ったファイナが居る。

「では、四回戦、第二試合を始める!」

審判員の声と共に


相手のチームの黒パンツの屈強な魔法受け役であるはずの男が

何といきなり俺に素手で殴りかかってきた。

恐怖で動けないでいると

後ろから出てきたバムが鋭いアッパーカットで

男の顎を砕いて、一瞬で沈めた。


ホッとしたのも束の間

「ギ・アバダラサ・ムバ!」

相手チームの小さな女の子がそう叫ぶと共に

俺たちの頭上に広範囲で、尖った氷の刃が現れて

そして一挙に降り注いできた。


その瞬間、バムが俺の身体を持ち上げて

バムの頭上で回転させ始め、

ファイナは呪文を詠唱しながら

しゃがんでその下に入った。


うーわー目がー目が回るー。

バムは容赦なく、パンツ一丁の俺の身体をグルグル回して

降り注いできた氷の刃を、弾き飛ばしていく。

そして、さらに連続で炎魔法を横に放ってきた

少女に俺を抱えて盾にして、突入していった。


ちょ、炎怖い!火傷しないのは分かってるけど

めっちゃ怖い!俺の盾でバムは炎を防ぐと

少女の首筋を軽く叩いて気絶させた。

最後に残ったローブ姿の男が狼狽えた顔をする。

「よし、行きますわよ!ボ・グロズネル……あ……」


詠唱の終わったファイナが魔法を放つ前に

バムがあっさりと男を気絶させてしまった。

「あ、すいません……何かをしてきそうな

 気配があったもので……」

ファイナは首を横に振って

「よいのです。まだ決勝までは二回戦ありますから」


ずっと人間魔法盾にされていた俺は

ようやく、普通の人間に戻れたので

ホッと息を吐く。


その後、二時間の休憩を挟んで

準決勝も、同じような戦いで

何とか勝つ。ファイナはまたも魔法を打つ間も無く、うな垂れていた。

決勝挑戦者用の個室になった

控室で、服を着るのも忘れて、椅子に座り

ボーっと天井を眺めていると


心配した顔のバムが近寄ってくる。

「あの、……私が言うのもなんですけど

 大丈夫ですか?」

「あ、ああ……あと一回で終わりだろ?

 なんとかもつと思う」

ファイナが近寄ってきて


「あ、あの……決勝では、私の魔法を……」

バムは頷き

「必ず必要になると思います」

「……信じますわ!バムさんは仲間ですもの!」

二人は固い握手を交わす。


決勝戦は、何と全員黒パンツのみの

マッチョでスキンへッドのおじさんたち

三人組との試合だった。

見た目からしてめちゃくちゃ強そうである。


バムが相手を辛そうに見ながら

「魔法も受けるし、魔法も使えるし

 身体も強い三人組です」

「やばいな……強すぎだろ……」

「私に任せてください!」

ファイナは、一人でやる気である。

笛が鳴らされてそうこうしているうちに

決勝が始まってしまった。


ガチムチスキンのおっさん三人が

並んでジリジリとこちらへ迫ってくる。

バムもどうやら、殴りに行く隙が無いようで

前に出てこられない。


お、犯される……これはダメだ。

迫りくるマッチョメンたちに

既に尻の穴を諦めた気分の俺は、何とか

バムとファイナだけは守ろうと、ジリジリ下がりながらも

二人の前に立ちふさがる。


そんな感じで二十秒ほど

下がり続け、舞台の端まで追い詰められた

俺の背後から、ファイナが


「あっはっはっは!わたくしの

 最強魔法を喰らいなさい!

 死霊よ、食らいつくせ!

 ボ・グロズネル・マガ!!!!」


呪文名を空へと叫んだ瞬間に

晴天だった空が、一気に暗雲で陰り

稲光が瞬き始める。


そして俺たちの寸前まで

迫っていたマッチョスキン三人が

舞台の中心の空間に

ぽっかり空いた真黒な穴から伸びてきた

無数の亡者の手から

一気に引きずり込まれていく。


バムと口を開けて

目の前の光景を眺めていると

瞬く間にマッチョ三人は絶叫しながら

穴の中へと消えていき、何事も無かったかのように

大穴が閉じて、空が元の晴天に戻った。


あれー?おっさんたちは……どこへ……。

一瞬、穴の中に地獄みたいな光景が広がってたのが

見えたけど……。

俺がバムと固まっていると


「やりましたわ!ついに私の最強魔法が

 敵を一挙に倒したのです!」

ファイナは一人で飛び跳ねて喜びだした。

ほぼ同時に、審判員が大きな声で



「禁呪の使用が確認されたので

 チームゴルダブル、失格!」



と俺たちに告げてきた。

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