第8話 料理大会二日目

審査員たちの大好評を受けて

一回戦をあっさり突破した俺たちは

午後までに三回戦まで勝ち抜いて

そして、翌日の四回戦に挑むことになった。


「あと三回勝てば、この地獄も終わりです……」

生ゴミに小石をまぶし続けて、

さすがに罪悪感が極限に達したのか

まっすぐ立てなくなったバムを支えて

夕暮れに照らされたコロシアムを出ていく。


帰り道でマルギルに出会うと

「私は一回戦でダメでした……会心の出来だったのですが

 酷評されましたよ。お二人は、どうでしたか?」

「え、ええ……何とか三回戦まで行きました」

「そうですか……頑張ってください」

彼は肩を落として、去って行った。


正直に作って負けた彼は

勝つために生ごみをあえて作った俺たちより

遥かに偉いなと思いながら

そのうな垂れた背中を見送ってから

宿へと帰る。


ベッドにバムを寝かして

彼女が買いだしてきた食材から

リンゴを選び、慣れない手つきで

ナイフで皮を剥いて、切り分けて

バムに食べさせる。


「おいしいです……本当は食べ物って

 こんな風に疲れた人を元気づける

 味のはずなのに……」

バムは悔しそうに上半身を起こして

一切れのリンゴを齧る。


「だよな……俺も辛かったわ」

「ねぇ、ゴルダブル様、もう止めちゃいましょうか……」

弱気になったバムに

「いや、ダメだ。ここまで来たら

 優勝しないと意味がないだろ」

「……」


涙ぐんだ目でこちらを見つめてくる

バムを、たまらずに優しく抱きしめてやると

疲れていたのかそのまま

寝息を立てて眠り始めた。


俺も残ったリンゴを食べて

寝る準備をして床で寝る。

ちなみにもう三日間、床に寝袋を

敷いて寝ている。

バムが俺にベッドを使わせようとしたが

それはさすがに悪いと断った。


翌朝、すっかり元気になったバムが

調理場で美味しい料理をたくさん作って

部屋まで持ってきてくれて

それを二人で食べて、今日も一日頑張ろうと

誓い合い、俺たちは再びコロシアムへと向かった。


朝早くから、予選は始まっていて

四回戦はあっさり、小石入りの生ゴミで突破できた。

バムは辛そうに小石をまぶした料理をゴミ箱に捨てると

「あの……そろそろ、メニューを変えませんか?」

と提案してくる。


俺もさすがに良心が痛みまくっているので

次の、準決勝である五回戦からは少なくとも

人が食べられるもので、とても不味いものを作ろうと

言うことで合意して、次の試合開始までに

コロシアムの待合室で

あーだこーだと、二人で話し合って

一つの結論に至った。


五回戦は、勝ち残った四組が

今度はコロシアムの広い舞台を四等分して

即席で用意された、石窯のオーブンや

炊事場で、より複雑な料理も

できるようになっていた。

さらに制限時間も二百四十分である。


もちろん事前に知っていたので

俺たちは、それを利用することにした。

二人でまずは協力して、まずは粉を卵などと混ぜて練って

普通に旨い大きめのホットケーキのような料理を作る。


さらに一度完成したそれを切り分けて

あえて焦がしたり、お湯で濡らして

ベチョベチョにしたりしつつ

さらに用意された多種多様な不味い調味料を

何種類も混ぜて味付けしていく。


制限時間ギリギリまでねばって

何度も二人で顔を顰めながら、試食もして

やっと吐きそうな味の汚い見た目のホットケーキが

できたので、それを雑に切り分けて

大皿に汚らしく盛り付けると

料理終了を告げる、審判たちの笛が鳴った。

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