料理に興味が一切ない俺が、味覚が狂った異世界に転移した
弐屋 中二(にや ちゅうに
エルディーン王国編
第1話 感電死
ラーメンを茹でるときに、お前の様に麺を水の中にいれて
一緒に沸かしてはいけない。
まずは沸騰したお湯を用意して、そこに麺を入れて
中火で茹でる。それが美味いラーメンを作るコツだ。
そんなことを地元の母親は言っていた。
ジャージ姿で、コンロにかけた鍋の水の中に麺を
そのままぶち込む俺は作山直巳。さやま・なおみなんていう名前は
女性みたいで昔から嫌いだった。
料理好きの母が付けた名だ。
大体、ちゃんと作るより
こっちのがトータルでは出来るのが早いのだ。
袋入りインスタントの味などどうでもいい。
電話だ。テーブルに置きっぱなしの
スマホを怠く手に取る。
「おい!作山ぁ!取引先に提出した書類に
致命的なミスがあったぞ!今すぐ、会社出てこい!」
俺は電話を切って、さらにスマホの電源も切る。
目をかけてくれているのか何かは知らないが
大事な休暇度に電話をかけてくる
クソ上司のパワハラはもう沢山だ。
今はちょうど三月終わり、新卒で一年頑張ったし
もうあのブラック企業も辞めよう。
麺が柔らかくなったので、適当に調味料を
その中にぶち込んで、ラーメン皿に入れて
啜る。当然、チャーシューもネギもモヤシもない。
だってめんどくさい。
炭水化物で腹が満たされればそれでいいだろ。
同僚の子たちは、料理サイトとか調べて
食材を安く買いこんで、美味く調理してる。
大学の知り合いも、そういう器用な友達が多かった。
ああ……大学、戻りてぇなぁ……当時はバカばっかで最悪だと思ってたけど
社会人の今考えると、パラダイスだったわ。
色々と考えすぎると、夢も希望もなくなりそうなので
スマホの電源入れなおして
上司のメアドと電話番号を華麗に
ブラックリストにぶち込んで、近くのコンビニにでも
出かけることにする。
別に料理なんてできなくても
コンビニという便利なものがあるから
必要ないのだ。飯さえ炊ければ、十分旨いものを
食っていける世の中だしな。
カンカンカンと音をさせながら、ボロアパートの
半ば錆びている外階段を下りていく。
そしていつもの住宅街の道を
歩いていると、いきなり頭上から
「にいちゃん!避けろ!」
と大きな声がして、次の瞬間には
体中に激しい痛みと共に、感電したかのような衝撃が走っていた。
ギリギリ意識があるときに見た最後の記憶は
太い電線が半ばから途切れて、ブラブラと揺れていて
車から伸ばされた作業用の足場の上から
黄色のヘルメットを被ったおじさんが
俺を唖然とした顔で見下ろしていたことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます