沈黙のグルメ(お前の様なグルメが居るか!) 黒銘菓短編集28弾

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

グルメと食事

レストラン『天獄』

この国最高のレストラン。

世界中のコックがこの店の厨房に立つ事を夢見ると同時に、世界中のグルメがこの店の席に座すことを夢見ている。



そして、この物語の主人公、シモン=シガルは今、その夢の席に座してディナーを楽しんでいた。

「シガル様、お飲み物のお替りは如何ですか?」

「頂こう。ここは最高だ。」

「有り難う御座います。」

柔らかな明かりに照らされたテーブルに座り、私は給仕の人と話していた。


周囲には10人程の客。

色黒で華奢な男、帽子を被った大男、紅いドレスを身に纏った少女、銀髪の初老の男………

大半の人間が食事を楽しんでいた。


鮮やかな紫色の液体が目の前のグラスに注がれる。

皿には艶やかな羊肉が載っている。

ナイフを入れて口に運ぶ。

ソースと羊肉の旨味が口の中で高め合い、讃え合い、単体では考えられない美味を齎す。

「………………最高だ。」

「恐れ入ります。」




流れる音楽

汚れ一つ無い店内と洗練された人々

料理は香り

舌は悦び

肉体は雷に撃たれたように痺れる




最高だ。









ズガーン!

急に調和が乱された。

香る硝煙と爆裂音、そして、客と思っていた男が店の天井に風穴を開けながらテーブルに上って、

「強盗だ!動くんじゃねぇ!」

銃口を人々に向けて言った。

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