中編
「おお、速い」
普段は命中回避の判定に使われるだけのステータスが実パラメーターとして反映され、一足で数メートルを跳ぶ。遺跡の敵エリアへはあと数歩。敵の反応がうっすらと赤く視界に映る。この調子なら壁走りすら出来るかもしれない。
『おはようございます。戦闘行動を開始しますか?』
その時、耳元で聞き慣れない女性の声が響いた。
「え? だれ?」
『付属型戦闘支援AI、リリイフラワーです』
思わず尋ねる俺の問に、リリイフラワーとやらは涼しく甘い声で自己紹介をする。その間にも飛ぶようなスピードで遺跡の道を駆け抜ける。
『現在使用可能な武装はメタルナックル、メタルキック、メタルショットです』
つまりはパンチキックと……何かの射撃武器だな?
その確認と共に遺跡の広場状空間の真ん中で制動。俺の眼の前では、土偶をスタイリッシュかつ細身にしたような形状の防衛人形が起動し、二体のそれが腕をもたげてこちらへ迫らんとしていた。
「メタルパンチ!」『ナックルです』
名称は発動条件ではないので問題なく攻撃発生。前ダッシュ込みで放たれた俺の拳がうっすら衝撃波的なエフェクト入りで防衛人形の胸板にヒット。このフロア最弱の敵なのでその一撃で砕け……ない!
「すっげえ弱いよどうなってんの!?」
『アーマーの強化がされていませんので』
つまり……どういうことだ。
「パンチ! キック! キック! 倒れたところにエルボー!」
敵は空気を読んで待ってくれるということはないのでとりあえずがむしゃらに攻撃をする。エルボーには攻撃判定がなかったので一緒に倒れたところでチョップ気味のパンチでとどめを刺す。
「強化って何?」
そして、粒子化して消えゆく防衛人形の間で立ち上がりつつ、俺は謎のAIちゃんに説明を求めた。
『何事もまずは説明を読まないといけませんよ』
ハイ……
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