幕間

夏から秋へ

 郷土史研究会の部員達は一人を除いて、全員遺体で発見されました。


 清水、安達、三角の遺体はあの場にあったわけですが、それ以外の人達はスケート場内部と下水内で見つかりました。相当時間が経ったものもあったそうで、身元確認に時間がかかったそうです。

 ところで生存者が一人いたのですが、つい昨日、突然正気に戻ったそうで、カニさんから色々と郷土史研究会の中で何が起きていたかを教えてもらいました。

 しかし『突然の回復』にカニさんは嫌な予感がする、と言っておりました。その予感は大当たりで……僕も大雪ではしゃいで外に出ちゃう辺り、間抜けというか弛んでいたというか……そう考えると、今ここで車ごと氷漬けになってるのも当然といいますか、まあ、あの馬鹿野郎が、ああなったから僕がこうなってるのも運命といいますか、こう、等価交換っていうんですかね? 

 うーん、寒くていよいよ考えが変になってきてますが、次は秋! 秋ですね!


 ……うー、さっむい……。


 ええっと、落書きが消滅して、僕らは事後処理をカニさん達に任せて、帰宅の途につきました。疲れたから今日は解散だな、明日は警察に呼ばれなかったら打ち上げでもするか、とばーちゃんが提案し、異議なーし、とぐったりした返事をした僕達ですが、確か、夜の七時半ぐらいでしたか、ばーちゃんがPCの前で何じゃこりゃあ、と叫びました。

 同時に家の電話が鳴ります。

 続けてヤンさんとオジョーさんと百合ちゃん先生からメールがどしどし送られてきました。電話に飛びつきながら、メールを開く僕。

 ばーちゃんはノートPCを開いて僕の所にすっ飛んできました。

「と、とんでもない動画がアップされてる!」

 電話で委員長の声を聞きながら、メールをさっさっさっとチェックした僕は、半笑いでノートPCのモニターを眺めました。僕達のアップした動画のコメント欄に、別の動画のURLが張り付けられています。


 そう、あの有名な『巨大女』騒動の始まりです。


 動画の内容は、落書きを上からとらえた映像から始まります。

 撮影場所は後に検証しましたが、あのF神社の境内裏だと思われます。

 それから場面が変わると、僕達が四方八方から洗浄している映像が、場所を変えながら段々と近づいていく実況スタイルで続きます。こちらは、ちらりと安達の死体が映るのでスケート場横の建物一階から始まり、最終的にはバスの裏まで近寄っています。後で皆に聞きましたが、誰も僕達以外の人を見ていないそうです。

 この投稿者はこの一本だけしか動画を上げておりません。僕は、あの巫女さんじゃないかな、とこの時考えていたのですが、実際は――これは後で話しますか。


 ともかく動画のコメント欄は大炎上中です。


 フェイクだ、リアルだ、これってオッサンと委員長じゃね? ヤンさんとオジョーさん、キンジョーさんもいねえか? 等々、あっという間に大手掲示板に転載、続いて、まとめブログへ転載。そこから各SNSに転載、と秒単位でガンガン来訪者が増え、メールや掲載待ちコメントが四ケタに達したところでばーちゃんが緊急で僕のコメントを撮影してアップ。


 僕は簡単な挨拶をした後、これに関しましては、許可等色々ございますので、しばらくお待ちください。真偽ですか? ありゃ、本物です。と収拾してんだか煽ってんだか、いや、極上の煽りだとヤンさんは言ってましたが、まあ、ともかく、ネットからの問い合わせがさらに加速し、ついでに警察からの事情聴取が始まり、それが以降一ヶ月間、ほぼ毎日続くことになり、並行して編集作業に追われることになり、五年生の八月という、普通ならかなり楽しいイベントの連続になるはずの長期休暇は、落書きと同じく、あっという間に溶けて無くなってしまったのでした。

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