19話3Part Devil Hero gegen Knight③

 


「ていうか、なんでそんなに怒ってるの?」


「......決まってんだろ。神判だよ」


「......へ?」



 瑠凪はそのまま伏し目がちに騎士を睨んだまま、はっきりとこう告げた。



「二流の騎士程度が、人間の信仰心を上げたり大天使を助けた位で"唯一神"の座につけるなんて思うな」



 その瞳は天界の神"唯一神"に対しての畏怖と恐怖、そして哀れみを抱いた瞳であった。......かつて"唯一神"に最も近い者の称号を得て天界で2番目に偉い"大天使筆頭熾天使"になったからこそ知っている、"唯一神"の×××。自分だけが見た"神"の座の闇。


 ......しかしその闇と同時に、"神"の座の神聖さや威厳、威光、そして偉大さ。人間の信仰心を高めたり大天使を助けたりする程度の善行......確かにそれも大事かもしれないが、それの沙汰ではない"何か"を成し遂げた者が"神"になれる。......それがたとえ悪行であっても、その悪行の凄さに魔"神"という位を得るのだ。



「っげほ......僕じゃないよ、"唯一神"になろうとしてるのは」


「......は?」



 そう言ってカエレスイェスは向かい合っている瑠凪やその後ろに立つ聖火崎、或斗、葵雲の更に後ろを見た。......視線の先は東方ほどではないが距離があるため霞んで見える皇都·ラグナロクに佇む皇城、その真上に浮かぶ天空5稜郭。



「......総帥だよ、総帥。イヴ·カノープス」



 そしてそう呟き、ゆっくりと続けた。



「総帥はね、まず聖教の協会本部会の司教になった。それで人間達の信仰心は上がってくんだ。総帥はあれでも勇者軍で1番偉いし、大道芸人だかマジシャンだか忘れたけどそっち系でも国民的人気を誇ってるからね」


「......それは知ってるし何となく想像が着く、今はもうその段階のずっと先までいってるはずだろ?そこの説明を......」


「はいはいイライラしない!もう少しだから!......天界が力を取り戻すために5唯聖武器を集めてるのは知ってるでしょ?だから天使も信仰している聖教の司教になる事で自然と天界で有名にもなった」


「長い!」


「待って理不尽!!こっちはちゃんと説明してるだけだよお!!......そしてその次に、"唯一神"のお近づきになるのに天使の手助けをして"天人"の位を得ようとした」



 いつの間にか前に近づいてきて話の長さに聖剣を構えて、今にもカエレスイェスの首を撥ねそうな聖火崎を宥めた騎士。葵雲と或斗は知らぬ間にどこかに行っているし、瑠凪は一応話の相槌は打ちながらもスマホを眺めたり街を眺めたりしている。


 人の話を聞けないのかこの人達......と半ば呆れながらもカエレスイェスは一応続けた。



「そのためn「ちなみにここでいう"天人"とは、天界の為に満身創痍、粉骨砕身で努力したり働いたりする人の事よ」


「誰に向かって説明してんだよ」


「ちょっとメタい事言わないの2人共!!それと説明させて!!そのために"勇者軍の探し人"を探すのに単身で日本に旅立った聖弓勇者を、"背徳者だった"としてイヴと一会や僕達プテリュクス騎士団で暗殺する算段だったんだよ!」



 その後に貯めるように下を向いて、一言ため息をついた後に顔を上げた。一同にはその表情にどこか呆れているような感じが入っているように見えた。その間に聖火崎も館に戻って行ったのだが。



「......でも誤算が2つあった。まず1つ目は天使が先に勇者を殺そうとした事だね。でもまああっちはあっちで"聖弓勇者が聖剣も所持していた"っていう誤算があって途中で引き返しちゃったみたいだけど」



 ......何回も言うが望桜達が東京に滞在していた時、聖火崎と帝亜羅とフレアリカがガブリエルとミカエルに襲われたのだ。その時聖火崎は聖弓はもちろん、聖剣も使って2人を追い返したのだ。


 それはやはり2人もそれは予想してなかったようで、聖火崎達曰く"急に引き返していった"というのはそれの事なのだろう。それを聞いて瑠凪は納得そうに頷きながらも話の続きを早くと目で促している。



「あー......確かに。そういやなんで持ってんだろ」


「詳しい事は本人にでも聞きなよ。それで2つ目は、"勇者が(元)魔王や悪魔と結託していた"らしい事だよ。まあ僕は今さっきまで信じてなかったけど、君達の様子から見てどーやらほんとっぽいしい?」


「げっ......」



 カエレスイェスの疑惑の目に心当たりしかない瑠凪は、決まりが悪そうに視線をうろうろさせている。


 反応がまさしくそれ、そんな瑠凪の様子と先程の聖火崎を葵雲と或斗聖弓勇者を悪魔と、瑠凪が助けに来た堕天使が助けに来た事からその噂が本当なんだな......とこっそりため息をつくカエレスイェス。



「......ていうか脅されてるとはいっても、なんでここまで素直に質問に答えてくれたんだよ?」


「決まってるでしょ?......手品師が作った世界なんて、どれが本当でどれがマジどれが嘘なのかックなのかって疑心暗鬼になっちゃって信じらんないから。そんな世界なんてきっとつまんないでしょ?」


「ふっ......確かに、あそこまで質が高くてタネも見破れない、凄いマジックする手品師が作った世界なんて生きてたって"これも手品なんじゃないか?"っていう疑心が常についてまわるわけだもんね」


「そーゆーこと。それにさっき僕、ルシファーに"二流の騎士程度が神になれると思うな"って説教されたよね?」


「まあ、本当にそうだからね。......それで?それがなに?」



 そしてカエレスイェスは明らかに自嘲の笑みを浮かべた。そして、



「......だって、カエレスイェス神に似たる者だから。神に似てるだけであって、取って代わることはできないからねえ......と、はいこれ」


「......?」



 そう呟き2つの物を瑠凪に渡した。1つ目は何故か分からないが、東方名物の"ふわふわパウンドケーキ"。そして2つ目が......



「これは......!」


「"天使の証"だよ、ガブリエルの」



 ......きらきらと光る黄金色の細かい装飾のかけられたそれは"ガブリエルのもの"と一目見て分かるほど、留め具部分からのびたエメラルドグリーンのリボンが存在感を放っていた。


 1部が血に濡れ汚れてベタベタしているのだが、それでも神々しさが抜けない、抜けきらないそれの端はどこかで落としたのか大きく欠けていた。それを見て瑠凪は、先程までとは打って変わって頬を綻ばせて笑みを浮かべた。



「......まだこれ、使ってくれてたんだ......」


「あれ?君は天界時代にもガブと仲良かったって話は聞かなかったけど、それ、君があげたやつとか?」


「ああ、まあ......別に特別親身にしてた訳でもないんだけど、全く話さなかったって訳でもない。顔を合わせれば世間話くらいするし、ガブが小さかった頃なんかはサリエルが居ない隙を見計らってしょっちゅう顔だしてたから」


「へえ〜、顔合わせた時とかにあげたものってことね。なら落とさないように言っときなよ」


「へ?ああ、うん......」


「......どうしたのさ、さっきまで物騒なものチラつかせたりしてたのに急にしおらしくなって」


「別に何もないし!!......ガブ!ガブ!!」



 そしてカエレスイェスに背を向け気を失っている大天使の元に駆け寄っていく瑠凪を見て、騎士はゲートを開いてに逃げ帰ったのであった。


 ......聖剣·エクスカリバーを回収した後で。




 ──────────────To Be Continued──────────────




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