8話3Part (元)魔王in勇者宅の東京旅行③
「すー、すー......」
「......なあ的李、鐘音。こいつさっきまでうなされてたよな?」
「そうなのだよ。でも、急に静かになった......?」
「悪夢が終わったとか?」
現在望桜と的李、鐘音は紫色の、瑠凪達の自宅の寝台で眠る彼を眺めていた。先程までうなされていた彼は、いつの間にか静かに、いつも通りの規則正しい寝息を立てて眠っていた。
「......ん......んん......?」
「お、やっと起きたのだよ」
「遅いぞ、全く......お前の分の準備はしといたから、車が来るまでの間大人しくしてろよ」
「服は僕の貸すから、感謝してね」
目を開くと、目の前には13代目とその側近、そして蝿蟲族の頭領の顔が。あれ、こいつ名前なんだったっけ......
そう考え込んでいると、横から別の人の声がした。どうやらここには、沢山の人がいるらしい、色んな人の声が聞こえるから。
「にしても、帝亜羅〜、この可愛い子のことをあたしはなんて呼べばいいの?」
「梓ちゃん......?葵......くん?でいいかな?目の色をとって葵くん。仮名だけど......」
「......え、別に構わない......けど......」
左を向くと、赤毛のショートカットの少女に、いつぞやの自分が腕を斬り落とした少女が居た。......そういえばここ何処だ?マンションの廊下じゃない......?
アスモデウス......もとい葵自身はふかふかのベッドの上に座っており、部屋には先程話した人物に加え、瑠凪と或斗と太鳳がいた。部屋は少し広い程度で、ベージュ系でまとめてある。家具も角が丸く削られているものばかりで。
しかし葵が1番気になったのはデスクトップパソコンと、その横にズラリと並べてある古代拷問器具の12分の1程だろうか、ミニチュアサイズの模型だ。
それによく見たら自分の服も変わってるし。なんだこれ、誰か服替えてくれた......?汗で気持ち悪かった感覚も、何でか今はない。......そう考えた瞬間、妙に顔が熱を持ち始める。
「え、か、可愛い!!めっさかわいいい!!」
「梓ちゃん!?葵くん、どうしたの!?」
「え、あ、特になにも!!なんでもないよ!!ほんとなんでもない......と、ところで、望桜!!これ、誰が風呂に入れてくれたの!?」
「え?ああ〜......お前の友達だよ!瑠凪!瑠凪が入れてたぞ!」
「......へ、へえ〜......ん、瑠凪〜、ありがと〜......ぉ......」
シャワー浴びさせてくれて、服も替えてくれた張本人である瑠凪に、赤面しつつ、そして尻すぼみになりながらお礼を言った。
「おー!大丈夫だよー!と、こ、ろ、で〜......」
「なに?」
「その〜、顔の紅潮の意味、教えて欲しいんですけど〜?......まさかぁ〜、魔王軍最高火力の大悪魔であるお前が?8000年来の付き合いである友人にwwたかが1回ww風呂に入れてもらった位でww照れちゃってるわけ〜??ww」
「は、はあ!?違うよ!!ってかそれを言ったら、君だって1代目と色々やってたんだよね!?それについて僕は詳しく聞かせて欲しいな!!」
「え、あ、べ、別に!大したことやってないよ!!」
まるで子供同士の言い争いである。葵は単純に性格が幼げだから、対して瑠凪は、軍でも結構有名な天邪鬼だから、子供同士の言い争いのようになるのだ。
「「はあ〜、可愛い!!!」」
そしてその光景を見て同時に呻いたのは、望桜と梓。現在望桜の頭の中では、
(めっちゃかわいい、めっちゃ可愛い!!なんだこれ、天使同士が、いや悪魔同士だけど煽りあいしてる!!可愛い!!!)
この通りである。一方梓の頭の中では、
(いや〜、帝亜羅いいカプ持ってくるな〜!!これは瑠葵か?いや、私はっていうか一般的に見ても葵瑠っぽい!!可愛い!!お互いが幼げなとことか可愛いカプだね!!)
こうなっている。2人とも頭の中お花畑だ。頭の中の状況のとおり、望桜は中性男子コン、そして今露見したが梓は腐女子である。堂々と魔王軍最高火力とか悪魔とかポロッと言っちゃってるが、そこすらスルーしてしまうほどには末期である。
「......あ、車来たんじゃない?」
ふと、瑠凪が声を上げた。窓から外を覗いていた或斗が、来たとジェスチャーで示したらしい。そういえば、準備って、"とーきょー"に行くのに準備が要るの?
「ね〜瑠凪、"とーきょー"に行くのに準備がいるの?」
「は、頭おかしいんじゃないの」
「主様......それはちょっと......あ、葵の分も外にキャリーケースは準備してありますので」
「んん?そ、ありがと!」
「あるきゅん〜、お腹空いた〜」
「黙れ喧し豚」
「相変わらずひどくない!?」
いつもの調子の瑠凪とその従者2人。瑠凪は相変わらず、時折口が悪さが顔を出す。或斗は先程朝食を食べたのに"お腹空いた"とか言い出す太鳳を軽くあしらう。太鳳もいつもの調子だ。
「帝亜羅、忘れ物とかない?」
「あ、うん!大丈夫!」
「あたし東京2回目なんだよね〜!!」
「え〜!良いな〜!!」
初の東京にわくわくしながらも平然を装う鐘音に、何度も荷物の確認をする帝亜羅。その横では、1回目の東京旅行の際に見た景色や街並みを思い出しながら話す梓。
「さーて、東京行くぞー!!」
「おー! 旅費がかからないなら良いのだよ、全力で楽しみ給え」
片手でキャリーケースを持ち、もう片方の手を掲げて、全力で楽しむの意を体全体で表現する望桜。的李は顔では渋々、でも内心昇天まっしぐらしそうな位のハイテンションで頷いている。
8人という大人数での東京旅行。果たして、上手くいくのだろうか......?
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「うっ、やべえ吐きそう......」
「望桜!?しっかりするのだよ!!袋!!誰か袋!!」
「う......おえ......」
「うわああああああ!!」
「あー!!見て見て見て!!あれ東京タワーかな!?」
「煩いぞニート!!あれはただの鉄塔だ!!」
「ニート言うな!!」
「帝亜羅、東京はやっぱり物騒かな?」
「多分物騒だと思うよ鐘音くん」
「そー思ってあたしはスタンガンを3つ持ってきたんだよ!!」
「「なんで3つも!?」」
「ね〜瑠凪、それ何?」
「これ?東京BANANA」
「なんで東京行く前から東京のお菓子食べてるんだよ......」
「ネット通販ってあるじゃん。え、まさか、知らないわけ?」
「当たり前でしょ!?引きこもってたんだから!!」
「......はは、騒がしいね......ww」
『ほんと申し訳ないわ......』
「別に構わないよww」
車の中で各々は、めちゃくちゃ騒いでいる。それはもう、すぐ後ろや前の車だけでなく一瞬ですれ違う車の中の人にすら、"あの車は中の人達が非常に煩い"という印象を抱かれていそうな程に。
運転手は雅 梓の兄·雅 丞。そして現在通話中で放置してある丞のスマホから聞こえてくる声は、ここにいる全員を自宅に泊めてあげようとしている、普通の会社員の聖火崎 千代。黒の混じった紫色の髪の、可憐な少女のその正体は、下界の聖弓勇者ジャンヌなのだが。
そんな中、丞が運転する車は東名多摩川橋にさしかかり、丞が後ろに向かって目的地は近いと告げる。
「あ、みんな〜!東京入ったよ!聖火崎さんの家は......」
『目黒区の中目黒よ。そこからなら、20分ちょいくらいで着くはずよ』
「わかった!それじゃあ、そろそろ切るね」
『はーい』
そう言って通話を素早く切り、
「瑠凪!!富士山、富士山が見えるよ!!」
「遅いよ葵!!もうここ東京だっての!なんで静岡通ってる時に見ないわけ!?」
「あるきゅんあるきゅん、あれこそ東京タワーだよ!!」
「スカイツリーじゃないのか!?」
「スカイツリーはもっと高いのだよ......望桜、大丈夫かい?」
「もう吐くものも残ってねえから、大丈夫だ......」
「それ大丈夫じゃないでしょ......」
「望桜さん、大丈夫ですか!?」
「酔い止めいる?望桜さん」
「「梓(ちゃん)、もう遅い」」
東京に入ったことで眠っていた面子も目を覚まし、元々起きていた者はさらに騒ぎ立て始めた。......煩い。
そしてそんな面子を乗せた車は、聖火崎のマンションに6時間強かけてやっと到着したとさ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
コンコン、
「はーい......なんだ、お前か。遅かったな」
「これでも急いできたんだけどな......せいそうゆう、じゃなかった。えーっと......あ!ルイーズくん!!」
「は、なんでくん付けなのだ!?」
「くんは何となくでつけてみただけ......え?あれ?男じゃなかったっけ?」
「え......」
ルイーズの身体全体を目で見て確認する葵。顔、脚を見てそこからずーっと視線を上に上げていって......胸のところで視線の動きを止める。
「......あれ?」
その直後にそう言って首を傾げて、不思議そうにし始めた。ピンと来ないといった様子を見て、ルイーズの機嫌がどんどん悪くなっていって......
「なっ、小さい方が戦闘はしやすいし、き、気にしてなんかない!!っていうか、仮にも乙女の端くれである私にその態度は失礼ではないかアスモデウス!!」
「ちょ、痛い痛い痛い!!それにめちゃ苦しい!!それ、やめ、やめて!!」
葵の胸ぐらを掴んで揺らし始めた。元々の身長差があるので完全に足が浮いている状態になったアスは、必然的に首が絞まり始め窒息状態だ。
「いいか!?貴様の周りが大きすぎるだけだ!!」
「ちょ......本気、で......くる......し......」
「葵くん〜......て、ちょ、ルイーズさん!!首!!首絞まってますそれ!!」
「え?あ、帝亜羅......あ」
「葵くん、大丈夫かな?」
葵はその直後解放されたが、暫し昏倒していて、そのまま次の朝まで起きなかった。
──────────────To Be Continued───────────────
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