くちづけ

部屋の鍵を開けて入った瞬間に

引き寄せられた。


そのまま、抱き寄せられて、

はじめはそっと、それから奪われるように、くちづけされる。


初めてのわけでもないのに、

わたしの胸は苦しいほどに高鳴る。

悟られるのが恥ずかしいから、

ワザとあなたの首に手を回して、

わたしから求めるようにくちづける。


そんな風に始まる二人の夜。


「シャワーを浴びてこなきゃ」

そういう唇を塞がれて、もっと深く深く。


「そのままでいい」なんて言わないで、

恥ずかしすぎて顔が見られない。

「あなたの匂いに包まれたい」なんて台詞セリフ、何処で覚えてきたの?

わたし、香水つけてないのに。


あなたの手で少しずつ、

ただの、わたしだけにされていく。

唇はいつの間にか首筋に移っている。


吐息といきこぼれるのを止められない。


花びらのように洋服が散らばっていく。

そうして、わたし達は、

そこでたわむれる蝶になる。


二人の夜は続く。


増える、くちづけの痕と共に

しがみつく背中の爪痕と共に。


激しく優しく熱く

ひとつに溶けていきながら。

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