ログインボーナス23日目 オーロラ
段ボールで快適とは言ないが寝れてしまったので、案外何処ででも寝れるタイプの人間なのかもしれない。
少し早い時間に起きてしまったみたいで、うとうとしてたら配達員さんに目を覚まされられた。
配達員さんに目を覚まされられた。
物凄く驚いた。
パジャマ姿の配達員さんが俺の肩を揺らしていたのだ。
「おはようございます。支度してください」
「支度? 何の?」
それに配達員さんもまだパジャマである。
「今日のログインボーナスはオーロラです」
「……オーロラ!?」
眠気が吹っ飛んでいった。
交互に配達員さんと洗面所を使い身支度を整える。
「パスポートは大丈夫ですので、水着ありますか?」
オーロラを見に行くのに水着?
「無いです」
最後にプールに入ったのは中学生の授業だった。
「では現地で調達しましょう」
オーロラが観測できる地域に水着は売ってないと思うのだけれど……。
自宅を出て配達員さんが運転する車に乗る。
空港に着いたら券など買わずそのまま整備場へ、そこで待っていると白いバンが来て俺たちをジェット機の前まで連れて行ってくれた。
乗ったジェット機は白塗りで赤いラインが数本入っている。
もしこれが冒険譚だったらドラゴンなのかもしれない。
なぜかそう思った。
機内はとても快適だった。
その一言に尽きる。
まず配達員さんと一緒に朝食を食べた。
パン主体の洋食だと思ったが、ご飯主体の和食だった。
白ご飯、味噌汁、温泉卵、焼き鮭の切り身、卵焼き、煮物、お新香、ほうじ茶と。
素体の質もあるだろうけれど、配達員さんと食べるご飯は美味しい。
配達員さんショックを起こしていた昨日の俺に教えてあげたいくらいだ。
昨晩から最高だと。
朝食を食べた後は、配達員さんとトランプで遊んだり映画を観たりして過ごした。
フェアバンクスという空港に着いた時、腕時計は13時を回っていた。
だけれど日は沈んでおり、空港の時計は20時過ぎを示している。
何だか不思議な感覚だ。
空港内の待合テーブルで、配達員さんが用意してくれたお昼ご飯を食べる。
おにぎり2つに魔法瓶に入れられていた味噌汁を頂いた。
配達員さんも同じものを食べていた。
配達員さん曰く、食べるものと食べる時間を守れば、どこにいても体内時計は狂わないらしい。
周りの視線は、嫌悪とかそんな感じではなく、羨望と言った感じだった。
食べ終わると配達員さんにコートを渡される。
どうやら外は寒いようだ。
空港を出ると配達員さんに「すこし待っていてください」と言われ、待っていると配達員さんが運転する黒塗りの高級車が俺の目の前に停止する。同じ車かと思ったがナンバープレートと数字が違った。
助手席に乗って1時間半ほど経った頃チェナという場所に着いた。
それまでの見ていた景色は都会、田舎町、田舎町、森林森林森林という感じだった。
フェアバンクスを抜けた後、山に囲まれた田舎町を2、3回通り抜け山を登ったと言えば伝わるだろうか。
星がとてもよく見えた。
ほんとに現地に水着が売っていた。
俺と配達員さんはオレンジ色のクソダサい水着を購入した。
まだ時間があるようで、配達員さんと外を散歩する。
小さな川の沿いに腰を掛け星を眺めたりもした。
俺の腕時計が15時になりそうな頃、カウンターでタオルを受け取り、それぞれ更衣室に分かれる。
シャワーを浴び、水着に着替える。
温泉に出ると、混浴だったようでダサいオレンジのビキニを着た配達員さんと顔を合わせる。
当然向こうは知っているようで、恥ずかしいのは俺だけだった。
他の客と離れ、配達員さんと隣合せで温泉のぬくもりを感じながら空を眺める。
滅多に見れない大きなオーロラが出たみたいで、ファンキーな人たちが英語で盛り上がっていた。
「綺麗ですね」
「ソウデスネ」
綺麗ですねと微笑んだ配達員さんの笑顔が眩しすぎてカタコトになってしまった。
20分ほどオーロラを楽しんだ後、上り着替え、配達員さんの運転する車で山を下って、空港に戻る。
途中の街で「何かアメリカンな物でも食べますか?」と訊かれたが正直、心がお腹いっぱいだった。
それでもお腹は空くもので帰りの機内で、配達員さんおススメの山盛りナポリタンを彼女と一緒に頬張った。
長い暇つぶしが始まると思ったが、なぜか置いてあった持ち運びできる家庭用ゲーム機で、レースやら格闘ゲーム、ハンティングゲームを2人で楽しんだ。
この飛行機は電波に耐性があるみたいだった。
部屋に戻ってきたのは夜の23時だった。
まさかオーロラを日帰りで見に行けるとは思いもしなかった。
「色々と楽しかったです、ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったです。おやすみなさい」
そうやり取りした後、部屋に入って1日を振り返る。
とても楽しかった。
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