ショート・ショート 掌編・短編集

北条むつき

バースデイLINE

 仕事帰りに不倫相手のユミからLINEが入った。


「今日は何がいい?」


「今日はあなたのバースデーね? 夕食何がいい? 大好きなロールキャベツ? それとも大嫌いなビーフシチュー? じゃあ、19時に待ってるわ」


 後妻とは結局うまく行かず、こう言う事になっている。また同じ過ちを繰り返すのかな?


 子供はまだ小さく、誕生日だと言っても気にも留めない。なんせ連れ子は懐かない。

 いつものように明かりの灯ったアパート。中から料理中なのか香しい匂いがする。可愛らしくデコられたベルを鳴らす。


「お帰り!今日は早いかな?」

「そうかい?」

「いつもなら10分は遅刻するのに!」


 玄関から小さなアパートに入る。香しい匂いが扉を開けると一層にしたと思いきや、突然見慣れた顔ぶれ。キッチンで料理をしていたのは妻だった。


「誕生日おめでとう、あなた? 今日は大嫌いなビーフシチューよ?」

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