第31話 ララと鉱石採掘

 ララはどんどん薬草を採集した。


「また今度のために、採り尽くさない程度にしないとね」

「りゃっりゃー」

 採り尽くさないに採集しても充分な量が集まった。


「あと必要なのは……」

 ララは昨日読んだ秘伝書に書かれていた技術を使うために必要な薬を頭の中で整理した。


「薬草系は充分だけど……。鉱石系が不足しているかな」

「りゃあー?」


 実家から持ってきた鉱石などもそれなりにある。

 だが、昨日読んだ秘儀書に書いてあった理論を実行するには種類が足りない。


「足りない分は街で買えるかな?」


 買えるかもしれないが、買えないかもしれない。

 とはいえ、そこらに落ちているようなものでもない。


「魔法を使うしかないかな」

 ララは探知サーチの魔法を使う。

 探知は基本的な魔法だ。使える魔導師は非常に多い。


 だが、ララの使う探知は規格外だった。

 探知範囲も、探知する物体の細かさも尋常ではない。


「あったよ、ケロちゃん」

「りゃ?」


 そしてララは一直線に走り出す。

 五分後、なんでもないところで、足を止める。


 飛竜よりも速いララの速さで五分もかかったのだ。相当遠い。

 それだけララの探知範囲が広いということでもある。


「ケロちゃん、この地面の下に鉱脈があったよ」


 それはまだ誰にも発見されていない鉱脈だ。


「そろそろ、夕方になりそうだし急いで掘ろうね」

「りゃっりゃ」


 ララは魔法を使って、一気に地面に穴を穿つ。

 土を吹き飛ばし、岩盤を容易く貫いていく。


「そろそろいいかな」

 巨大な穴と、掘った土と石を積み上げたことによる巨大な山ができた。


「ここから、もう一回、探知の魔法を使って……」

 積み上げた巨大な山の中から、必要な鉱石を探し出すのだ。

 先ほどみたいに広い範囲にかける必要はない。

 だから、精度を思いっきり高めた探知の魔法だ。


「ほいほいほい」


 ララは鉱石をどんどん見つけて魔法の鞄の中に入れていく。

 探知の魔法を使いながら、魔法を使って穴を掘って鉱石を拾う。

 ララは簡単にやっているが、一流の魔導士でもできないことだ。


「たくさん拾えたね」

「りゃあー」

「次は精製しないとだね」


 鉱石のなかには結晶になっている物もある。

 だが、大半の鉱石は不純物だらけだ。

 そのまま錬金薬の材料にするには支障がある。

 それに、そもそも鉱石の種類が少なめだ


「金属の種類を変えるのは錬金術の本領発揮だからいいんだけど……」


 元々錬金術とは、卑金属を貴金属に変換するための術である。

 元素変換はお手の物。

 現代の錬金術師には不可能な技術だが、ララにとってはそう難しくない。

 

「とはいえ、鉱石の量が多すぎるし、今まで使ってた錬金壺だと時間かかりすぎるかも……」


 ララの錬金壺の大きさは両手で抱えられる程度の大きさだ。

 そして、ララが採掘した鉱石類は大量だ。


 ひとまずどのくらいの量があるのか確認するため、魔法の鞄から鉱石を出す。

 ララの身長よりも大きな山ができた。


「ふむう。まずは精製して結晶化させて、それから元素変換が基本かな」

「りゃむ?」


 ケロは鉱石の山に興味を持って、よじよじと登っている。

 そして、きらきら光っている石を見つけては、

「りゃっりゃー」

 嬉しそうに抱え上げる。

 財宝を集めたがる竜の習性なのだろう。


「竜はカラスと同じで光るものが好きだもんね」

「りゃ? りゃああ」


 ケロはララに飛びついて肩の上に乗って、髪をかむ。

 そして羽をバタバタさせた。

 カラスと一緒にされたことが心外だったのだろう。


 そんなケロを撫でながら、ララは鞄をごそごそ探る。


「とりあえず錬金壺を新しく作ろうかな」

「りゃう?」

 ケロは「そこからやるの?」と言いたげだ。


「家から持ってきた材料で作れるかな……」


 ララが鉱石を採掘したのは今日が初めてではない。

 採掘と精製の練習をするため、魔王城の裏山でも採掘したことがある。

 その時に精製した材料などは適当に鞄の中に入れてあった。

 それにおこずかいで買った材料などもある


 主に鉄やミスリル、オリハルコンなどである。


「えっと、今までの壺より大きくして、昨日知った理論を使って……」

「りゃ」

「あ、いいこと思いついた」


 ララは金属を魔法を使って熱で溶かし、混合させて合金へと変える。

 それから錬金壺の形に成型していく。

 非常に加工しづらい金属だ。だが、ララの魔法にかかればなんということもない。


「りゃあー?」

 ケロは首をかしげる。「錬金壺の大きさ、小さくないかな?」と聞きたそうだ。


「ケロちゃん、大丈夫。中は魔法の鞄の要領でとても広いんだ」

「りゃう?」

「たしかに、製作難度はあがるけど金属を節約できるからね」


 そんなことを言いながら、錬金壺を作っていく。

 成型して魔法の鞄化を進めてから外に魔法陣を刻んでいく。

 魔法陣には、昨日知った理論を応用している。


「できたー」

 内部拡張に濃縮機能と複製、大量生産機能を付与された錬金壺が三つ出来たのだった。

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