女子高生の日常

 真心が高校に進学して一週間、つつがなくそれは進んでいった。


「はい、空ちゃん、今日は枇杷びわどうぞー」

「ありがと、空ちゃん、最近いつも果物持ってくるね」

「まーねー、親戚の人がくれるんだー、あ、伊藤君も食べる?」

「ありがたく貰おう」


 昼休みの休憩時間、昼ごはんのお弁当の後に真心はバッグから袋を出し枇杷を取り出し渡していく。この枇杷も妖精印の果物だ魔力の為に朝ご飯、昼ご飯、夕ご飯の三食毎日食べているのである、昼は多めに持っていきこうして空や後ろの席で始業式の日、爆睡していた少年にも配ったりしている。


 少年の名は伊藤俊介いとうしゅんすけ。日々寝不足なのか休憩中もずっと寝ていたりする少年であった。ただ授業では決して寝ていないので根は真面目な少年なのだろうと真心は思っている。そして友達と話す姿も見ないのでたまに真心は少年に果物を渡して会話を試みようとしていたりする。


「はぁ~今日のも美味しいよ、真心ちゃん」

「ああ、こう、力が漲る感じがするよ」

「ありがとー、伊藤君のは言い過ぎじゃないかな」


 だが、事実この妖精印の果物は真心に着実に魔力を増やし続けている。

真心も大食漢という訳ではないので大体1日2~3つの果物を食べて毎日30程度の伸びを見せており、ここ6日間でそこそこの数字を見せている。

特に真心が今朝初めて獲れたと言うバナナはなんと一本で100もの魔力を増やす事が出来たので現在の魔力はおよそ300を有するまでに至ったのである。


「あー、また安達さんが果物食べてる、私にも分けて分けてー」

「あ、いいなー伊藤の奴だけ、まだあったりしない?」

「あ、みんなの分もあるよー、はいどぞー」


 3人が枇杷を食べているのが別の女生徒や男子生徒が目ざとく見つけると真心は更に袋から枇杷を何個も取り出してクラスメイトへと渡していく。クラスメイトに渡す分も妖精に頼んで置き沢山用意してもらったのだ。そうして今や真心は果物とそのコミュニケーション能力が合わさりクラスの人気者として立ち位置を確立していた。

 

 ちなみに人が来た頃に伊藤は廊下へと外に出ていきいつのまにいなくなっていた。


「あ、そうだ真心ちゃん、お泊りだけどいつなら平気かな?」

「あ、もうお父さんには話してあるよ、いつでもどうぞって」

「それじゃ、明日とかどうかな?」

「おっけい、お父さんにも教えておくね」

「安達さんと安住さんって本当仲いいよねー」

「勿論、空ちゃんとは大親友だからね!」

「ちょっと急に抱き着かないでよ真心ちゃん」


 真心が空に抱き着いている姿にクラスメイトの一人がつぶやく。


「……尊い」


 クラスメイトの心は全員一致で一言の言葉を表せた。同感だと。




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