プロローグ

 夜闇に塗られた部屋の中、あたしはジッとお姉ちゃんの入った骨壺を見つめる。


 三年前に死んだお父さんのときにも思ったことだけれど、人は焼かれて骨になるとこんなにも小さな箱に収まってしまうのが信じられなかった。


 ――あいつらのせいだ。あいつらが、お姉ちゃんを殺したせいで……。


 湧き上がる悔しさと憎悪に唇を噛みしめ、大きく深呼吸をするように息をつく。


 最後の会話を交わしたあの日の深夜、自室で首を吊りこの世から消えたお姉ちゃんの顔が脳裏に焼き付いて離れない。


 絶対にやりきれなかったはずだし、もっと生きていたかったはずなのに。


「お姉ちゃん、見ててね。あたしが、仇を討ってあげるから。お姉ちゃんに酷いことをしてたあいつらを、あたしが……」


 何も言わない遺骨と、その奥に立てかけられた遺影。


 それらを交互に眺めやりながら、あたしは暫くの間誰もいない部屋の中に立ち尽くしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る