53話 天気図講習会3
「低気圧を記載する時は全て赤ペンで記載してくれ、中心に×印を書き込み、付近にLと書いて、中心気圧の数値を記載する。LはLowの略で出来るだけ北側に書いた方が見やすいと思うよ。台風であればTと記載、何号とかが読まれた場合はその番号も一緒に記載する。台風1号だった場合はT1と記載するのが良いね。ただの低圧部だった場合は×印は要らないよ。熱帯低気圧であるならばTDと書こう。TDはtyphoon is developing(台風が発達している)と覚えたり、tropical depression(熱帯低気圧)って英訳して覚えたりするのも良いけど、それは別に覚える必要は無いよ。単純に台風の頭文字のTを取ってTとTDって覚えたら良いよ」
熱帯低気圧と台風の違いは風速だ。熱帯低気圧の中でも風速17.2m/sを超えた物を台風と定義している。
「次に高気圧だ。高気圧の情報は全て青ペンで書き込んでくれ。これも同じ様に中心に×印を書いて、付近にHと記載し、中心気圧の数値を書く。次にこれらの二つは進行方向などもラジオで読まれる。それも記載する必要があるんだ。進行方向の矢印は×印を始点として引き、速度を◯◯km/hと記載する。この時に注意なのが速度を書く時に略記してはいけないって点だ。見たらわかるだろ?と思って『30km』みたいな感じで訳すのはダメだ」
国背先輩はホワイトボードに書いた双丘……高気圧から青い線を引いた。
「その気圧がゆっくり移動している際は矢印の所にSLW……つまりスロウの略を書く。ほとんど停滞と読まれた場合はALM―STAと記載する。これもALMはほとんどの意味を表すalmost 、STAは停滞の意味を表すstagnationから取っている。これは英単語から覚えた方が覚えやすいかもしれないね」
ここら辺になって来ると訳分からないな。俺は頬杖をついてホワイトボードと自分の手引き書を見比べる。俺以外にも話に飽きたのかうとうとし出す人は複数人いた。
「そして前線の種類と書き方についてだ。前前線については説明したね。今回はそれをもう少し噛み砕いて説明していくよ」
詳しい事良いからさっさと書き方だけ教えて帰らしてくれないかな。俺はこんな失礼な事を考えていたが、国背先輩はそんな事は知らずに話を続けた。
「まず、書く前にポイントがある。前線って言うのは暖かい空気と冷たい空気のぶつかり合いなんだ。それ故に前線が放送された地点の座標は滑らかに繋がなければならない。だから最初にすべきなのは台風などの印と混濁しない様に気をつけながら放送された座標の位置の点を前線と同じ色のペンで点を打ち込んでアタリをつけて置くって動作なんだ」
国背先輩は点をホワイトボードにいくつか打つと再び、指を近づけた。
「前線の種類について。まずは二つ説明するよ。寒冷前線。冷たい空気の押す力が強くて暖かい空気の下に冷たい空気が潜り込んだ前線の事を言うよ。これは短期間に強い雨を降らせる。理由は数分前に説明したから分かるよね?青で線の上に三角形が上に連なった様な形を書く。冷たいからトゲトゲって思ったら良いよ。かき氷とかを食べた時とかのズキって来るイメージとかが覚えやすいかな?」
国背先輩は先程アタリを取っていた青い点の上に寒冷前線を書いた。
「次に温暖前線。これは逆に暖かい空気の押す力が強く、冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げた前線の事だね。これは赤で線の上に半円が乗っかった様な図を描くよ。柔らかな熱気をイメージすると良いかもね。これは広範囲にしとしととした雨を降らせる。これも数分前に説明したね」
国背前線は温暖前線も同じ様にホワイトボードに書いた。
「おっと大事な事言い忘れてた。書く前に注意するのが必ず北半球では寒冷前線が温暖前線の西側に出るって事についてだ。これは風が吹き込む位置によって起こる。暖かい空気を含む低気圧は反時計回りに吹き込む、冷たい空気を含む高気圧は時計回りに吹き出す。そうなるとそれがぶつかり合う前線が出来る位置ってのは当然寒冷前線が西側になるよね?だから東へ延びる温暖前線がある場合にその東端から寒冷前線が出発する事はぜったにあり得ない。ラジオが放送する時に中心から『温暖前線が……に達し』って読んだあとに『低気圧の中心から』って言葉を省略して『寒冷前線が……』って読むから温暖前線の終点からそのまま寒冷前線を描き始める何てミスは絶対にしないようにしてくれ」
国背先輩は汗を拭っていた。時刻は既に五時過ぎ前。国背先輩は三十分近く講義をしていた。
「次に閉塞前線。前線は空気を押しながら位置を移動する。それで寒冷前線の方が温暖前線より速度が速いんだ。それで追いついて出来たのが閉塞前線だ。要するに冷たい空気と冷たい空気が合体しちゃって暖かい空気が完全に上に行っちゃった状態だね。閉塞前線は紫色のペンで温暖前線と寒冷前線を合体させた様な図を描く。線の上に三角と半円を交互に描く感じだね」
閉塞前線……これは特に意識しなくても良さそうだ。
「最後に停滞前線。暖かい空気の押す力と冷たい空気の押す力が釣り合ってしまって停滞する前線の事だね。日本で言うと梅雨とかの時期に四方にある高気圧が押し合う形になるから前線が停滞するんだ。そうなると長期間、曇りや雨の天候が続く事になる。これは赤と青のペンで線の上に赤ペンで半円、線の下に青ペンで三角形を交互に描いて表す」
梅雨。これは流石の俺達でも分かる。メカニズムは今初めて知ったが。だが、ここは詳しく説明する所でもない為か、国背先輩は時計を確認してから説明を端折った。
「それで今ここまで書いて天気図記録用紙にはまだ大事な物が書かれていない。それにこの時点では実はまだ放送も終わっていない。この後が一番大事だから良く聞いていてくれ。等圧線。言葉では沢山話だけどまだ話には出してないよね?」
国背先輩はホワイトボードに引かれている等圧線を指差して笑った。
「これを見たら一目で、気圧の谷がここにあるから天気が悪くなる!とか、ここは等圧線の間隔が狭いから気圧差が大きく風が強くなる!とかが分かる。等圧線自体は等高線と同じように考えたら良い。等高線だって間隔が狭いと坂が急になったりするし、高い位置から低い位置に向かって水は流れるでしょ?そんな事が一目で分かる。等圧線。これが書けなきゃ全てが台無しになる。という事で次は等圧線の書き方について説明したいと思う」
国背先輩の授業はまだ終わる気配は全く無かった。
後書き
天気図講習会編は最後のあとがきでちゃんと完結に手順纏めます。
低気圧、高気圧の描き方……中心に×印を書いてそれぞれ指示に従った記号を書き込む。低気圧は赤。高気圧は青。速度を書く際は略さない。
前線……書く際に放送された座標のアタリを取って温暖前線は赤の−●−●−(半円の記号が無かったのですみません。半円として見て下さい。寒冷前線は青の−▲−▲−閉塞前線は紫の−●▲−●▲−、停滞前線は赤と青の交互で−●▼−●▼−●▼−で表し、滑らかに繋ぐ。
※記号などは実際にネットで調べて見て下さい。
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