濡れ衣の悪役令嬢は現世で妹を溺愛する
アルパカ・パカ
第1話 姉妹の前世
「ノア・スチュアード。貴様はアンナ嬢に悪質ないじめをしたそうだな...言い逃れなどできないぞ!!証言は取れている!!!」
そう言って続け様に婚約破棄と処刑を言い渡されたた時...
私は思ってしまった。「これで解放されるのね...」と。
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(ノア目線)
私の名前はノア・スチュアード。
この国の四大公爵家の一つであるスチュアード家の長女である。
私には二つ下の妹がいて、名前はステラと言う...
私と違い、笑顔の可愛らしい明るい少女だ。
私は幼い頃からこの国の第一王子であるアルド様との婚約が決まっており、将来の王妃として妃教育を受けてきた。
お父様は宰相で氷のような冷たい印象を受ける整った顔立ち、お母様は絶世の美女と名高い妖艶な女性である。自分でいうのも何だが私も妹も美しい容姿をしていた。
私は家族というものが分からない。というのも、
小さい頃から両親の愛情を感じたことがないからだ。
目すら合ったことなどない...
だから私は笑ったことも泣いたことも怒ったこともない。感情とは何なのか。私の生まれた意味は何だったのか...
どれだけ頑張っても褒めてもらえず、認めてももらえない。
気づけば何のおもしろみもない空っぽな女になってしまった。
アルド様は人形のような私が嫌いなようだった。
妹のような見る者の心を幸せにする笑顔はムリだが
何もないなら何もないなりに常に手本となれるような人を目指したら、一目おかれるようになれた。
だが、みんな私を遠目で見るだけで友好関係を築いてくれるような人はいなかった。
孤独から、解放されたかった...
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(ステラ目線)
私の名前はステラ・スチュアード。
四大公爵家の一つ、スチュアード家の次女です。
私には二つ上のお姉様がいます!お姉様は、淑女の鏡と言われる程完璧な女性で、私の憧れなんです。
幼い頃、病弱で寝たきりになっていた私に毎日会いに来てくれたのはお姉様だけだった。
お外の世界のことを聞かせてくれたり、絵本を読んでくれたり...病気に勝てたのも、お姉様が私を支えてくれたからで...今も私を心配してくれるし、応援してくれる。
残念ながら、お姉様はそれらの気遣いを無意識に行っているようで、あまり覚えていないらしいけれど、こんな素晴らしいお姉様を持って私は幸せ者である。
お姉様がいなければ、私は病気に勝てなかったかもしれない。
だから、これからは私がお姉様を支えようと、そのために生きようと思っていた...
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(ノア目線)
私は断頭台の前に立っている。
ふと横を見ると、アルド様とアンナ様がこちらを見ている。
そもそも、私はアンナ様の存在をアルド様から断罪された時初めて知ったのである。
アンナ様の顔を見たのも、彼女が男爵令嬢だということも名前も初耳であった。
大方、彼女がいじめられていたのは本当のことであろう。だって、王子であるアルド様に近づくには、それなりの身分や教養が必要だ。
第一、アルド様には婚約者である私の存在があったのだから、彼女がアルド様と親密になるには貴族の『暗黙了解』を無視することになる。目をつけられるのも納得がいく......
アルド様がアンナ様を好きになったのは私にも否はあるし婚約破棄は仕方ない。
それに処刑についても、誰が彼女をいじめていたとか...誰に濡れ衣を着せられたとか...どうでもいい。
弁解もする気はないし、言ったところで信じてもらえないのはわかる。アルド様の婚約者であった私が黒幕として疑われるのは必然的だ。
いじめの証人というのも、アルド様の取り巻きだろう。
そういえば、『男に色目を使い媚びる男爵令嬢がいる』という噂を聞いたことがあるが、アンナ様のことだろうか...?
それにしても男たちの彼女に向ける視線はいやらしかったり恋する乙女のようで、正直見ていて気持ち悪い。
ふと気になってアンナ様に視線を移す。
アンナ様は私と目が合った瞬間、周りの男たちに向ける笑顔とは違う悪女の微笑みをして見せた。
今のを見ていてわかったことがある...噂の男爵令嬢はアンナ様で間違いない。
偏見かもしれないが きっと、権力と寵愛とお金欲しさにアルド様に近づいたのだろう。
その証拠に今もアルド様が隣にいるにも関わらず、周りにいる男とキスしているではないか...
アルド様はそれに気づいていないようだが。
私を婚約者の座から引きずり下ろせて良かったわね?誉めて差し上げましょう。
将来、アルド様と共に王妃として国を支えるのは難しいと思っていた私はあなたに一つ言いたいことがある。
男遊びをしていれば学業に身は入らない。
アンナ様...男と権力のことしか頭にない学業も真面目にやって来なかったであろうあなたが納めるこの国はどうなってしまうのでしょう?
私にはもう関係ないかもしれませんが、民を苦しめないで上げて。民が頑張っているからこそ国が国として成り立ち、支えられているのです...王族は民を導く者。それをどうかお忘れなきよう...
では、私は潔く消えて差し上げましょう。
王国に幸あれ...
私はアンナ様と目を合わせると、同じ悪女の笑みを美しく返した。
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(ステラ目線)
「お姉様...お姉様お姉様お姉様お姉様!!!!!」
私はお姉様の首が落ちるところを見て発狂してしまった。
その場に立っていることも出来ない。
周りにいる使用人や侍女が何やら言っているが、聞いてあげられる余裕はない。
遠くにいるアルド様とアンネ様を睨み付ける。
陛下が、長年王族に使えるスチュアード家の一家全員を処刑を命じなかったのは、スチュアード家が優秀な家柄であるからだ。
命じなかったというよりは、『命じることが出来なかった』それほどスチュアード家の地位は揺るぐことはないということなのだ。
それが私にはこれ以上ない死刑宣告であった。
お姉様だけが罪を償わせられて...しかも、これは濡れ衣でありお姉様はいじめなんてするような人ではない。
お姉様が処刑されるのはあまりにも残酷すぎる...
私はまだお姉様に恩返ししていない。
今回のことだって、ただ見ていることしかできなかった...アンナ様がアルド様と親密な関係になっていくことを止められず、見ていただけ。
『婚約者のいる殿方に手を出してはならない』と注意しようにも、彼女の周りには常に取り巻きの男たちがいた。
言おうにも言えない状況に腹が立ったのを覚えている...
私は無力だ。何も出来なかった。
お姉様のいない世界なんて生きていたくない。
それに、罪悪感で息が上手く出来ない...
私の周りには同情の視線が向けられている...
気づいている人は気づいているのだろう。
お姉様は無実だということを...
でも彼らの中に王族に意見出来るほどの地位を持っている者はいない。
でも、お姉様はあの日 自分に着せられた濡れ衣を否定しなかった。きっと、弁解しても信じてもらえないと思ったのだろう。
やっとの思いで立ち馬車に乗る。
お姉様のいない家につくとすぐに部屋にこもる。
家にいた両親はお姉様の死を気にしていないようだった...
「お姉様...申し訳ございません。」
私はその日の夜 毒を飲んで自殺した。
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