《ランドの街inフラー公国》
街に着く2日前、森を抜けた俺は飛んで行くのはやめて地面に降りていた。
「道が左右に別れてるな。どっちに行けばいいんだ?」
『これは左右どちらに行ったら、地球から来ている奴がいるんだ?』
〈ここは、森を抜けたすぐにあるフラー公国の国境沿いです。右に行けばランドの街、左に行けばガルンの街に着きます。転移者がいるのはランドの街です〉
右か。結構遠そうだな。
『フラー公国ってどんな国なんだ?』
〈フラー公国はイース大陸にある3か国の中で中立の立場を持つ国です。現在、ゾーン大陸にはシダ帝国、フラー公国、ホース聖王国がありますが、シダ帝国が掲げる人族至上主義による全大陸の支配と人間は皆平等と言う博愛主義の立場のホース聖王国による対立があり、フラー公国はどちらの国にも肩入れはせず中立を保っている状況です。〉
とりあえず、シダ帝国に行くときは気を付けた方が良さそうだな。
『じゃあ、フラー公国ってのは獣人にとっては悪くない場所だったりするのか?』
〈いえ、基本的にはシダ帝国とフラー公国は獣人に対して厳しく街には多くの獣人の奴隷がいるでしょう。〉
『ホース聖王国は獣人の扱いはどうなんだ?』
〈奴隷を持つことは禁止されていませんので獣人の奴隷もいますが、他の国よりは少ないです!〉
とりあえず、フラー公国にいる転移者に会ったらホース聖王国に行ってみるか。
サポーターと話ながら進む俺は道の途中で馬車を引いている少年に気がついた。
どうやら、獣人の少年だ。ボイナに聞いていた虎人の特徴と一致するけど馬車を引かされて鞭で叩かれていた。年はまだ7歳ぐらいに見える。
「このグズが。もっと速く馬車を引け」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
鞭で叩かれながら馬車を少しずつ引いていく少年。
「くそ。あの奴隷商め、何が虎人はパワーが強いから馬よりも速く移動が出来るだ!嘘つきよって!」
そう言って何度も少年を叩く男!
「あいつ!!」
俺が少年を助けようと馬車に向かおうとすると
〈いけませんマスター。無駄です、今は放っておくしか出来ません。〉
そう言ってサポーターが止めてくる。
『何で止める?放っておけと言うのか?』
〈すみません。ですが奴隷である以上、マスターが何かをすると罪に問われることになります。見捨てるしかありません。仮に今助けることが出来ても街には多くの奴隷がいます。扱いは皆、大差ありません。その度に助けるつもりですか?目的を見失ってはいけません!〉
そう言って、俺を止めるサポーターに何も言い返すことができない俺は目をつぶり深呼吸をしてから
『悪かった。先に進む。』
ボイナに貰ったマントのフードを深く被り馬車の横を通り抜けた。
『奴隷は商人が販売しているのか?』
〈はい。奴隷商人は国からの認可を受け奴隷の販売をしています。獣人以外の奴隷は犯罪を犯した者や借金により奴隷になる者がおりますが獣人だけは誘拐された者等も奴隷として売られています。〉
『なんで獣人だけ』
〈本来は犯罪奴隷か借金奴隷のみしか売ってはいけないのが全大陸の共通のルールですが、獣人族以外の者はルールを守っておりません。その為、多くの獣人がゾーン大陸から連れ去られております!〉
サポーターの話を聞いて怒りがこみ上げる。
そこまでされる事を獣人がした訳ではない。ただ、他の種族と違い獣耳と尻尾があるから。ただ、それだけの理由だ。
別に俺は聖人君子じゃない。
奴隷が認められているなら理解はする。けど、今の俺は獣人の姿をしている。なら、獣人族は俺の仲間だ。仲間が理不尽な思いをしているのに黙って見ている事しか出来ないのか?
そんな胸のモヤモヤを感じながらも俺は道を進みランドの街に着いた。
街に入るには守衛をしている人に金を払って払わなければならないらしい。
『いくら払う必要があるんだ?』
〈銅貨3枚です!〉
俺は銅貨3枚を取り出す。ボイナに貰った袋の中に入ってたのは、銅貨100枚、銀貨100枚、金貨100枚だった。
道中、サポーターから通貨に関して聞いた所
〈この世界の通貨は、銅貨、銀貨、金貨、赤金貨、王金貨、白金貨、白王金貨があり、銅貨から金貨までが庶民で一般的に使われ、金貨から王金貨までが貴族、王金貨から白王金貨までが王族で使われています!〉
『価値は?日本円にするとどの位?』
〈世界樹の記憶から日本円に置き換えますと、銅貨は100円、銀貨は千円、金貨は一万円、赤金貨は百万円、王金貨は一億円、白金貨は百億円、白王金貨一兆円です。白金貨と白王金貨は国同士の取引や特別な場合に使われます。〉
『特別な場合?』
〈万が一王族が拐われた場合の身代金、国の危機を救った場合に払われる報奨金などです!〉
との説明を受けた。俺は守衛に金を払って街に入る。
「ようこそ!ランドの街へ!お通りください!」
丁寧に対応してくれる守衛。すると後ろで騒ぎが起きる!
「どうして?街に入るには銅貨3枚でいいはずでしょ!」
「うるさい。獣人族が入るには金貨一枚が必要だ!嫌なら他の場所に行くんだな!」
守衛と揉めていたのは兎の獣人の女の子。確か兎人って奴だ!大量の荷物を乗せた馬車に乗っていることから商人のようだ。
「なんでよ!ガルンの街では銅貨3枚で入れたわよ!」
どうやら、獣人族って事で差別しているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます