《Side:松本姫華》

全てが起こる1ヶ月前に遡る。


剣斗と朝から話が出来た後、私は副会長のあきに生徒会の仕事をちゃんとするよう怒られていた。


「まったく。生徒会長なんだから1人の生徒とだけ話してちゃ駄目でしょ!皆に挨拶しないと」


そう言って、私を叱る幼馴染みで副会長のあき。


「でも、ああしないとケン君と話せないんだもん!高校生になってからは避けられる事が多くなったし」


とむくれる私に


「しょうがないわよ!剣斗も高校生なんだから昔みたいにはいかないわ!それに、嫌いじゃないって言ってたじゃない?」


「そうだけど」


それでも、もっと話したいの!と言う私に、あきは肩を竦めるばかり。


その日の放課後、生徒会の仕事も終わり副会長のあきと一緒に帰っている途中、


「あき、本屋さん行っていい?」


「いいけど、何買うの?また小説?」


と聞いてくる、あき。


「うん。今朝、ケン君が読んでた奴!」


「ヒメも相変わらずね。いくら剣斗と話をする為だからって」


と苦笑いする彼女に


「きっかけは確かにそうだけど面白いわよ?それに私の気持ちは知ってるでしょ?」




私には大事な幼馴染みが2人いる!1人は親友でもある遠藤あき。


もう1人は私達より1つ年下の佐藤剣斗。


親同士が仲が良かった私達は小さな頃から一緒に遊んでいた。


高校生になってからは少し避けられてるけど私は彼が好き。


私が彼の事が好きだと自覚したのは中学2年の時。


1つ年上の不良生徒に告白された私は断った事で、その友達に校舎裏に連れてかれていた。


不良生徒達に囲まれて何故断ったんだと問い詰められた私は怖くて泣いていた。


そんな時、まだ1年生だった彼が助けてくれた。


たまたま、近くのごみ捨て場に来てた彼は怒鳴り声が聞こえて様子を見に来ただけだった。


でも、囲まれてたのが私だと気が付くと私達の間に入り庇ってくれた。


まだ小柄な彼は、体格の良い不良生徒達に囲まれながらも一生懸命に私を庇っていた。


自分も怖くて震えているのに。


騒ぎを聞きつけた先生達が不良生徒を連れていくまで庇い続けてくれた彼に私は泣きついた。


彼は昔からそうだった。私やあきが困っていると必ず助けてくれた!


その時、私は彼の事が好きなのだと自覚した。





家に帰った後、私は部屋で買った本を読んでいた。


本を読みながら眠ってしまった私は森に居た。


周りは木があるだけ。奥に進んだ私は村を見つけた。


私に気づいた村の人が話しかけてくる!


「あんた、大丈夫かい?何かあったのかい?」


そう言って話しかけてくる人達の、ある部分に私の目は釘付けだった!


『ケモ耳と尻尾がある』


私は動物が好き。小説にハマってからは獣人に少し憧れていた。


『今、目の前に獣人がいる』


「あんた、1人だけかい?家族は?」


目の前の光景に驚いていると、おばあさんが話しかけてきた!


「いえ、1人です」


私がそう返事をすると、おばあさんは悲しげな表情を浮かべ


「なら、あんたも一緒に村で暮らすかい?」


そう尋ねてきた。


「良いんですか!!」


私が興奮気味に返すと


「ああ、歓迎するよ!さあ、皆。新しい仲間だよ!」


おばあさんが皆に伝えると小さな子達に囲まれた!


「か、かわいい!」 


子供達に囲まれていると、私はお尻の方に違和感を感じた。


『わ、私にも耳と尻尾がある!』


黒い耳と黒い尻尾。私も獣人になってる!


『これは夢ね!でも天国にいるみたい!!』


私が自分の姿に感激していると


「お姉ちゃんの尻尾きれいだね!」


周りの子達が褒めてくれる!


「ありがとう」


夢ならばと子供達の耳や尻尾をモフモフさせてもらった!


「お姉ちゃん、変なの~!」


私のそんな様子を子供達は不思議そうにしていた。  


子供達と遊んだ後、私は料理の手伝いをした。


私が作った料理に不思議そうに眺めてた人達も少しずつ食べては驚いていた。


「あんた、料理上手だね!」


私が作った料理を食べたおばあさんが、そう言ってくれる!


「ありがとうございます!」


『でも、ただ魚のあらを使った味噌汁なんだけどな?』


疑問に思いながらも食事を終え、私はおばあさんの家で休ませてもらった!


気が付くと自分の部屋の中に居た私は夢の事を残念に感じながらも学校に行くので


それから毎日、夢を見た。


森にいる私は奥に進んでいく!


すると、いつも村があり村の人は毎回違うけれど歓迎してくれている。


私が料理を作ると皆、驚いて夢中で食べ続ける。


私は夢を見るのが楽しみになっていた。





そして、今。

私は暗闇の中にいる。


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