第77話 待機

 「あの…良かったのでしょうか…」


 東條は小さな声で聞いてきた。


 「ああ…。俺が今の生徒が不正を働いたことを霧島にでも伝えておく。そうすれば、今の生徒はゲームから除外されるだろう」


 他の生徒からの指名制だから俺が言ったこととは気づかれないだろうし問題もないだろう。


 「そ、そうですね…。…でも、今の人の名前…わかりますか?」


 そうか…聞いておくべきだったか…。


 「…それは期間内になんとかしようと思う」

 「そ、そう…ですか」


 そして少し沈黙があった。


 「その…でも…ありがとうございました。…また…さっきも助けられちゃったみたいで…」

 「…いや、助けたなんてそんな…別に何もしてないけど…」

 「いえ…私一人だったらどうしていいのかもわからなかったですから…」

 「…それより、さっき俺がスタンプ押そうとした時に何か言いたそうにしていたけど…何かあった?」

 「それは…あの、放課後は…スタンプ押してはいけないというルールもあったので…」


 ああ、そうか…そんなルールもあったんだったな。そんなことまでしっかり覚えて守っていたなんて律儀だな…。

 それから、俺の為を思って敢えてそこでは言わずにいてくれたのか…。


 …それよりも、今は聞くことがあったのだ。


 「いや…そんなことより、会長達はどこ行ったんだ?まだ解散するには早い気がするが…」

 「あの…それは…えっと…。何というか…」


 なんだかすんなり話してくれないが…なぜだろうか。


 「その…集計は慎重な作業とのことなので…今は人の入ってこない別室に移動しているらしいです…」

 「集計…?」

 「誰が犯人かという提出を確認するのはその部屋で行われるらしいです。詳しくは知らないのですが…そのようです…」

 「…東條さんはどうしてここに?」

 「私は…その…そんなものは一切受け取りませんでしたし…。だから一人ここに残っていたわけで…」


 そういうことなのか…。


 「その…影井先輩はその…待っていても来なかったので先に別室に移動することになったみたいで…」


 待っていた…というよりは会長は俺と顔を合わせずらかったのだろうな。

 それから秋山辺りが俺は来ないのだろうと見限って場所を移したのだろうな…。


 「でも…東條さんはどうしてずっとここに?部活には行かないの?」


 そう聞くと、東條は少し頬を赤らめて下を向いた。


 「…私は…そ、その…待っていたんです…影井先輩のことを…」


 東條は部活にも行かず俺のことを待っていてくれたのか…。



 

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