第8話 脅迫

「あなた、私の身の回りの世話をしなさい。お給金を出してあげるわよ。」

 エリザベスがクリスティーナの前に立ち塞がる。

「結構です。お金には困っていませんから。」

 クリスティーナはエリザベスの申し出を断る。

「いいの? 私の申し出を断ると、孤児院の子供たちが野党に襲われて皆殺しになるかもしれないけど。それでもいいの?」 

「な、なんですって!? 卑怯者!」

「何とでも言いなさい。オッホッホー!」

 クリスティーナはエリザベス姫のお世話係になった。

「さあ、クリスティーナ。私のカバンを持ちなさい。」

「嫌よ。どうして私が!?」

「孤児院の子供たちがどうなってもいいの?」

「なあ!? 分かったわよ! 持てばいいんでしょ! 持てば!」

「そうよ。クリスティーナ。素直が一番よ。オッホッホー!」

 エリザベス姫の高笑いが響き渡る。

(クソッ!? なんで私がお世話係をやらないといけないのよ。まあ、いいか。お金ももらえるしね。これも孤児院の子供たちのためよ。)

 いじめの始まりを軽く考えているクリスティーナ。

(最初はカバン持ちや、お水を持って来さすような簡単なモノから。次第に従順に私の命令に従う犬のように躾て、最後はゴミの様にボロボロにして使い捨ててあげる。私のブラピに近づくからいけないのよ! 覚悟しなさい! クリスティーナ!)

 いじめる側のエリザベスは、最後までストーリーを持っている。


「さあ、クリスティーナ。水を拭きなさい。」

「はい。お嬢様。」

 エリザベスは、故意に水を床に零し、クリスティーナに拭かせる。少しの期間にクリスティーナはエリザベスの言うことを従順に聞く様に躾けられた。それもそのはず、毎日「孤児院の子供たちがどうなってもいいの?」と脅され続けたのである。プライドを捨てて屈辱に耐えさせられたクリスティーナの心から抵抗心が無くなるのも無理はない。これが、いじめだ。

「やめろ!」

「あら? ブラピじゃない。うれしいわ。私に会いに来てくれたのね。」

 そこにブラピが現れる。

「やめるんだ! クリスティーナ! もう従わなくていい!」

「ブラピ。」

 ブラピの優しい言葉に涙が止まらないクリスティーナ。

「あなたがいけないのよ。私のモノにならないから。」

「なんだと!?」

 エリザベスはクリスティーナに耳打ちする。

「あなたが私の元をされば、ブラピを殺すわよ。」

(え?)

 ゾクっと全身が震えるクリスティーナ。

「ブラピ! 帰って! 私はお嬢様のお世話係なの!」

 クリスティーナは落ちる所まで落ちるのでした。

 つづく。

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