第40話
*
「ねぇ、春山君」
「ん? どうしたの?」
教室に戻ってきた清瀬さんと合流し、俺は清瀬さんと下校していた。
明日からゴールデンウイークのはずなのに、俺の心の中は不安でいっぱいだった。
明日は清瀬さんとのデート、そして別な日には藍原とのデートが控えている。
さっきも藍原が清瀬さんを呼び出してたけど……一体二人は何を話したのだろうか?
「明日は楽しみだね」
「あ、あぁそうだな、映画館待ち合わせで良いかな?」
「うん、大丈夫」
満面の笑みでそう答える清瀬さん。
俺はそんな清瀬さんの目が俺はなんだか燃えているように感じた。
しかし、藍原は清瀬さんに何を話したのだろうか?
俺は先程からそのことばかりが気になってしまっていた。
「な、なぁ……清瀬さん……藍原と何を話してたんだ?」
「ん? 気になる?」
「ま、まぁ……」
そう言うと清瀬さんは立ち止まり、俺の目の前に立り止まる。
「え……な、なに?」
俺がそう言うと清瀬さんはニコッと笑って、俺に言う。
「絶対負けないって話しをしてきたんだよ!」
「え……」
「ライバルだからね! 私も絶対負ける気なんかないもん!」
「そ、そっか……」
俺は自然と頬が熱くなるのを感じた。
自分の顔が赤くなっているのが、何となくわかり、俺は思わず清瀬さんから顔を反らした。
「あれぇ? もしかして照れてる?」
「し、仕方ないだろ! こ、こんな経験した事無いし……」
「うふふ……可愛い」
「それ、褒めてる?」
「うん、もちろん」
なんかからかわれてる気がする……。
俺は清瀬さんにからかわれながら、自宅に帰って行った。
*
「ねぇ、白戸さん」
「ん? 何?」
僕は湊斗が帰った後、白戸さんと一緒に下校していた。
「なんで昨日はあんなことを言ったの? 言わない方がややこしくならなくて良かったんじゃ……」
「ダメよ、私は悪いけど基本的に由羽の味方なの……あそこであぁ言わないと、由羽は清瀬さんに負けちゃうから……」
「そっか……確かに藍原さんは、自分で湊斗を振ったから遠慮気味だったしね……」
「うん、清瀬さんには悪いけど……私は由羽の味方だから」
「そっか……」
「栗原君は春山君の味方でしょ?」
「ま、まぁ……そうだね」
確かに僕は湊斗の味方だ。
じゃあ、清瀬さんの味方はどこにいるのだろうか?
「はぁ……でもファミレスで言うのは良くないよ。店のお客さんみんな見てたし」
「他に良い場所が無かったし、仕方なかったのよ」
僕と白戸さんはそんな事を話しながら、帰り道を歩く。
今頃湊斗と清瀬さんも一緒に帰っているのだろうか?
藍原さんは用事があるって言って、一人で帰って行ったけど……。
「はぁ……でも、あぁ言うの見てると……恋って面倒に思えるわよねぇ~」
「え? そ、そうかな?」
「そうよ……好きな人が居てもその人に思いを伝えられなくて……いつの間にか彼女が出来ちゃって……あぁ告白しとけば良かったなぁ~とか思っちゃうのかなぁ? そんなの私には面倒でさぁ~」
「そ、そっか……」
はぁ……僕も湊斗の事は言えないな……。
好きな人に告白も出来無い僕と湊斗じゃ、湊斗の方が上か……。
しかも、当の好きな人は恋愛を面倒とか言ってるし……はぁ……僕こそ思ってるよ……もっと早くに告白しておけば良かったって……。
「面倒かな? 僕はそう言うドキドキが恋愛の醍醐味だと思うけど?」
「そうなのかな? 私はなんか、そういうのもよくわかんないし……」
「そっか……し、白戸さんって好きな人とか居ないの?」
「う~ん……居ないかな? 男子で一番話すのが栗原君だし」
「そ、そっか……」
なんか嬉しいな……。
僕は思わず頬が緩むのを感じていた。
そんな事をしているうちに、揃って駅に到着した。
ここから二駅離れた駅で僕達は下りる、白戸さんとはその駅で別れる。
「さて、由羽は大丈夫かしらね?」
「これ以上は僕たちが口を出す事じゃないよ」
「まぁ、それもそうよね……新しい作戦書類を作ってきたけど……無駄みたいね……」
また作ってきたのか……。
思わず俺は苦笑いをしてしまった。
そんな話しをしながら、二人で電車を待っていると一人の女子高生が話し掛けてきた。
「あ、あの!」
「ん?」
僕に話しを掛けてきたその子は、同じ学校の制服を着ていた。
白戸さんの知り合いだろうか?
「えっと……白戸さんの知り合い?」
「え? 私知らないわよ?」
「え?」
「と、突然すいません! あ、あの栗原先輩! これ! お願いします!!」
「え!?」
その子はそう言って僕に青色の便箋を渡してきた。
な、なんだ?
僕がそんな事を考えているうちに、その子はどこかに行ってしまった。
これはもしかして……。
「え!? 嘘!? もしかしてラブレター? やったじゃん!」
「え? あ、あぁ……そ、そうだね……」
笑いながらそう言ってくる白戸さんに、僕は苦笑いでそう答える。
そして僕は気がついてしまった。
あぁ……そうか……白戸さんにとって僕はただの友達なんだ。
だから……こんな反応なんだ……。
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