第40話



「ねぇ、春山君」


「ん? どうしたの?」


 教室に戻ってきた清瀬さんと合流し、俺は清瀬さんと下校していた。

 明日からゴールデンウイークのはずなのに、俺の心の中は不安でいっぱいだった。

 明日は清瀬さんとのデート、そして別な日には藍原とのデートが控えている。

 さっきも藍原が清瀬さんを呼び出してたけど……一体二人は何を話したのだろうか?


「明日は楽しみだね」


「あ、あぁそうだな、映画館待ち合わせで良いかな?」


「うん、大丈夫」


 満面の笑みでそう答える清瀬さん。

 俺はそんな清瀬さんの目が俺はなんだか燃えているように感じた。

 しかし、藍原は清瀬さんに何を話したのだろうか?

 俺は先程からそのことばかりが気になってしまっていた。


「な、なぁ……清瀬さん……藍原と何を話してたんだ?」


「ん? 気になる?」


「ま、まぁ……」


 そう言うと清瀬さんは立ち止まり、俺の目の前に立り止まる。


「え……な、なに?」

 

 俺がそう言うと清瀬さんはニコッと笑って、俺に言う。


「絶対負けないって話しをしてきたんだよ!」


「え……」


「ライバルだからね! 私も絶対負ける気なんかないもん!」


「そ、そっか……」


 俺は自然と頬が熱くなるのを感じた。

 自分の顔が赤くなっているのが、何となくわかり、俺は思わず清瀬さんから顔を反らした。


「あれぇ? もしかして照れてる?」


「し、仕方ないだろ! こ、こんな経験した事無いし……」


「うふふ……可愛い」


「それ、褒めてる?」


「うん、もちろん」


 なんかからかわれてる気がする……。

 俺は清瀬さんにからかわれながら、自宅に帰って行った。





「ねぇ、白戸さん」


「ん? 何?」


 僕は湊斗が帰った後、白戸さんと一緒に下校していた。

 

「なんで昨日はあんなことを言ったの? 言わない方がややこしくならなくて良かったんじゃ……」


「ダメよ、私は悪いけど基本的に由羽の味方なの……あそこであぁ言わないと、由羽は清瀬さんに負けちゃうから……」


「そっか……確かに藍原さんは、自分で湊斗を振ったから遠慮気味だったしね……」


「うん、清瀬さんには悪いけど……私は由羽の味方だから」


「そっか……」


「栗原君は春山君の味方でしょ?」


「ま、まぁ……そうだね」


 確かに僕は湊斗の味方だ。

 じゃあ、清瀬さんの味方はどこにいるのだろうか?

 

「はぁ……でもファミレスで言うのは良くないよ。店のお客さんみんな見てたし」


「他に良い場所が無かったし、仕方なかったのよ」


 僕と白戸さんはそんな事を話しながら、帰り道を歩く。

 今頃湊斗と清瀬さんも一緒に帰っているのだろうか?

 藍原さんは用事があるって言って、一人で帰って行ったけど……。


「はぁ……でも、あぁ言うの見てると……恋って面倒に思えるわよねぇ~」


「え? そ、そうかな?」


「そうよ……好きな人が居てもその人に思いを伝えられなくて……いつの間にか彼女が出来ちゃって……あぁ告白しとけば良かったなぁ~とか思っちゃうのかなぁ? そんなの私には面倒でさぁ~」


「そ、そっか……」


 はぁ……僕も湊斗の事は言えないな……。

 好きな人に告白も出来無い僕と湊斗じゃ、湊斗の方が上か……。

 しかも、当の好きな人は恋愛を面倒とか言ってるし……はぁ……僕こそ思ってるよ……もっと早くに告白しておけば良かったって……。


「面倒かな? 僕はそう言うドキドキが恋愛の醍醐味だと思うけど?」


「そうなのかな? 私はなんか、そういうのもよくわかんないし……」


「そっか……し、白戸さんって好きな人とか居ないの?」


「う~ん……居ないかな? 男子で一番話すのが栗原君だし」


「そ、そっか……」


 なんか嬉しいな……。

 僕は思わず頬が緩むのを感じていた。

 そんな事をしているうちに、揃って駅に到着した。

 ここから二駅離れた駅で僕達は下りる、白戸さんとはその駅で別れる。


「さて、由羽は大丈夫かしらね?」


「これ以上は僕たちが口を出す事じゃないよ」


「まぁ、それもそうよね……新しい作戦書類を作ってきたけど……無駄みたいね……」


 また作ってきたのか……。

 思わず俺は苦笑いをしてしまった。

 そんな話しをしながら、二人で電車を待っていると一人の女子高生が話し掛けてきた。


「あ、あの!」


「ん?」


 僕に話しを掛けてきたその子は、同じ学校の制服を着ていた。

 白戸さんの知り合いだろうか?


「えっと……白戸さんの知り合い?」


「え? 私知らないわよ?」


「え?」


「と、突然すいません! あ、あの栗原先輩! これ! お願いします!!」


「え!?」


 その子はそう言って僕に青色の便箋を渡してきた。

 な、なんだ?

 僕がそんな事を考えているうちに、その子はどこかに行ってしまった。

 これはもしかして……。


「え!? 嘘!? もしかしてラブレター? やったじゃん!」


「え? あ、あぁ……そ、そうだね……」


 笑いながらそう言ってくる白戸さんに、僕は苦笑いでそう答える。

 そして僕は気がついてしまった。

 あぁ……そうか……白戸さんにとって僕はただの友達なんだ。

 だから……こんな反応なんだ……。

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