第25話

「はぁ……なんで自分に言い訳なんてしてるんだろう……私」


 私は自分でそんな事を思いながら、机に顔を埋める。

 はぁ……何やってんだろ……別に料理出来る友達なんて他にも居たのに……。

 私がそんな事を考えて居ると芽生が私の机にニヤニヤしながらやってきた。


「由羽、さっき湊斗君と何を話してたの?」


「え? 別に……ちょっとバイトをお願いしただけ」


「へぇ~なんで湊斗君にぃ~?」


「あいつが適任だったからよ! お願いだからそのニヤケ顔やめて! 別にそう言うのじゃ無いから!」


 私が芽生にそう言うと、芽生は私の方を見てニヤニヤしながら嬉しそうに話し始めた。


「へぇ~そうなんだぁ~、じゃあなんで色違いのスマホケースなんか使ってるのぉ~」


「た、たまたまよ……」


「もう、女の子なんだから『たま』なんて連呼しないでよ」


「そこは今関係無いでしょ……」


 私はそう言う芽生にため息を吐く。

 

「ケースが同じなんて、良くある事でしょ?」


「そうかしら? そんな偶然良くあるかしら?」


「あるわよ。もう、何が言いたいの?」


「助けられて惚れ直したのかと思って」


「そこは素直に言うのね……」


 惚れ直すかぁ……。

 確かに助けてくれた時とかは格好良かったけど……って、違うでしょ私!!


「そもそも……あいつにはもう新しい彼女いるでしょ?」


「え? あぁ、清瀬さんの事?」


「そう、私が入る隙間なんてもう無いわよ。入る気も無いけど……」


「あの二人はまだ付き合ってないでしょ? まだ諦めるには早いわよ!」


「諦めるって……そもそも私は……」


 私はどうしたいのだろう……。

 最近私はそんな事を考え始めていた。

 湊斗と別れて……私は何をしたかったんだろう。

 そう言えば、なんで私は毎回湊斗を怒っていたのだろ……。

 

「もう! さっさとその無駄にデカいおっぱい使って、さっさと旦那を取り戻してきなさいよ!」


「無駄にデカいとか言わないでよ! 旦那でも無いし!」


 好きでこの大きさになった訳じゃないわよ!





 学校が終わり放課後、俺がいつものように帰り支度をしていると、清瀬さんが教室に俺を迎えにやってきた。

 一緒に帰ろうと言ってきた清瀬さんと俺は現在帰り道を歩いていた。


「ねぇ、藍原さんとはどんな話しをしてたの

?」


「え? ただの雑談だよ……別に大したことは話してないよ」


「ふぅ~ん、そうなんだ」


「な、何?」


 清瀬さんはジト目で俺を見てくる。

 

「まぁ、気になってる男の子が他の女の子と仲良くしてたら普通は気になっちゃうよね~」


「いや、別に何もないよ。それに藍原は元カノだし……」


「だから余計心配って言うのもあるんだけどねぇ~」


「そ、そう?」


「ま、私はデートの約束が出来たからもう良いけどね」


「え? デート?」


「うん、デート。一緒に映画を見に行く約束したじゃない」


「え? あぁ……それもデートか……」


「そうでしょ? あ、それとも春山君はデートとは思ってくれてなかったとか?」


「あ、いや……そ、そんなことないよ」


「ふぅ~ん、怪しい~」


「いや、なんかそう思うのはおこがましいのかなって……」


「なんでよ、男女が一緒に出かけるってことは、それもうデートだよ」


「それも……そっか」


 そう言えば昔、同じような事を藍原から言われたな……。

 

「あ、また藍原さんの事考えてたでしょ?」


「え!?」


 毎回なんでこの子は俺の考えてる事がわかるんだ。

 昔母さんが女の勘はかなり鋭いって言ってたけど……本当なんだな。


「はぁ……敵は随分強敵みたいね」


「敵って……別に俺と藍原は……」


「そうかなぁ? 私の勘って結構当たるんだけど?」


「無いよ、絶対に……」


 なんて事を言いつつも俺は少しだけ藍原の事を考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る