第21話

「私はこれのピンクゴールドにするわ、私はカメラ意外興味無いし」


「それなら一丸レフ買えよ……」


「高すぎて買えないのよ、馬鹿じゃないの」


「まぁそうか……」


「スマホのカメラだって、そこら辺のカメラに負けて無いのよ、だからカメラの性能が良いスマホを買った方がいいでしょ?」


「まぁ、そんなに何を撮るんだって話しだけど……」


「うっさい」


「いてっ!」


 またこいつは俺に暴力を……。

 俺は藍原にチョップされたところをさすっていると、目の前の店員さんが俺たちを見てクスクスと笑っていた。


「仲がよろしいんですね?」


「す、すいません……うるさくして……」


「いえいえ、仲が良くて、羨ましいです。彼女さんも可愛いし」


「え! い、いや……こ、こいつは……」


「あ、ありがとうございます」


「え!?」


 そう言った藍原を俺は思わず二度見した。

 藍原は俺の方を見て目で訴える……話しを合わせろと……。

 まぁ、変に説明するよりもここはそう言う設定にしておけってことか……。


「ま、まぁ……そ、そんな感じです」


 元ですが……。

 なんてことを俺が考えていると、今度はまた別なところから声が聞こえてきた。

 

「あれ? 君たち!」


「え……あ、貴方は!!」


 声の主はなんと、昨日助けてくれたスーツ姿の男性だった。

 ネームプレートには高岩と書かれていた、恐らくこの店のスタッフなのだろう。


「昨日はありがとうございました」


「はは、良いんだよ。そうか……君たちはそう言う関係かぁ~」


「あ、ま…まぁ……あはは」


 元ですけどね……。

 なんて事を考えながら、話しをしていると、男の人は俺に名刺を差し出してきた。


「そう言えば自己紹介をしていなかったね、僕は高岩修司(たかいわ しゅうじ)だ。よろしく」


「あ、どうも……」


 俺は名刺を受け取り、名前を確認する。

 ん? てかなんか名刺に書いてるな……へぇ……この人この若さでエリアマネージャーか……まぁ、エリアマネージャーって何か知らないけど……。


「そう言えば、犯人捕まったらしいよ」


「え? 早いですね……」


「あぁ、車の車種とナンバーがわかっていたからね、今頃犯人は取り調べの最中じゃないかな?」


 それは良かった。

 もし捕まってなかったら、藍原がまた危険な目に逢うかもしれないからな……。

 

「しかし、本当に良かった。君も彼女も大した怪我が無くて」


「いや、高岩さんが居なかったら、俺は多分ボコボコにされてましたし……」


「そんな事は無いさ、ああやって彼女を助けに行ける勇気は中々出ないよ」


「そ、そうでしょうか?」


 そんな話しをしていると、高岩さんが他のスタッフの人から呼ばれ、業務に戻っていった。

 

「あの人……」


「なんだ? どうかしたか?」


「イケメンね……」


「おい」


 この面食いが……。

 俺はそう思いつつも声には出さず、ため息を吐く。

 俺と藍原は機種を決定し、手続きを済ませる。

 あとは帰るだけなのだが……。

 またしても、高岩さんに呼び止められた。


「春山君、良かったらこれを持って行ってくれ」


「え? 良いんですか?」


 そう言って渡されたのは、電気屋の商品券だった。


「この前のイベントのあまりなんだけど、これで彼女とお揃いのスマホケースでも買うと良い。これは昨日頑張った僕からのプレゼントだ」


「い、いや……でも自分はこれを貴方から貰う理由が……」


「良いから良いから、じゃあ僕はまだ仕事があるから」


 高岩さんはそう言うと、店の裏に戻っていった。

 しかし、正直このプレゼントは嬉しい。

 スマホのケースって結構高いしな。

 

「良いもん貰っちまったな……」


「そうね、どうする?」


「何が?」


「今から買いに行く? その商品券が使える電気屋、帰り道にあるけど?」


「あぁ……じゃあ買いに行くか……ついでだし」


 俺たちはスマホのケースを買いに真っ直ぐ電気屋に向かった。

 

「うわ、スペース広いな……さて、どれにするか……」


「普通ので良いわよ、何か良いのないかしら……」


 俺たちは二人でスマホのケースを選んでいた。


「あんた、これ良いんじゃないの?」


「なんだよそのケース……後ろに【漢】って書いてるだけじゃん。もっとマシなのにしてくれよ」


「じゃあこれは?」


「もっと酷いわ! なんだそのケース! 後ろに【働きたくないでござる】って書いてあるじゃん! もっと嫌だわ!」


「あはは、でも面白いじゃん! 買いなよ~」


「おまえ、楽しんでやがるなぁ~。じゃあお前はこれにしろよ!」


「え! 嫌よ! 何これ? なんでウサギの耳が付いてるの?」


「しかもこれ光るんだぞ?」


「何それ!? その機能いる? あはは、おかしい!」


 俺たちは二人で騒ぎながら、スマホのケースを選んでいた。

 なんか、こいつとこんな風に話すの……久しぶりだな……。 


「あ、これ良いな……これにするか……」


「決まったの? 私も決まったわよ」


「じゃあ、レジ行くか。どんなのにしたんだ?」


「後で見せてあげるわよ」

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