第4話
*
「じゃあ、また明日ね」
「あ、あぁ……また明日」
俺は清瀬さんとファミレス前で別れた。
笑顔で手を振って自宅の方に歩いて行く彼女の背中を見ながら、俺は先程の出来事をぼーっと考えていた。
「友達からか……」
願っても無い話しなのだが、俺は彼女が何を考えてそう言っているのかわからなかった。 彼女は別れ際に『少し考えてみてよ』なんて笑顔で言っていたが……。
一体彼女は何が目的でそんな事を言っているんだ?
話しが急すぎて、嬉しいはずなのに、怪しすぎて逆に喜べない。
「俺……あの子と話したの今日が始めてだよな?」
始めて話した相手をフェミレスにまで誘い、しかも『友達からはじめてみない?』なんて告白まがいのことまでするなんて……話しが美味すぎる気がする。
「うーむ……とりあえず、明日直晄に相談してみるか……」
俺はそんな事を考えながら、自宅に向かって歩き始めた。
いや、こんな嬉しい話しがある訳がないよなぁ……。
いきなりこんなモテ期が来る訳もないし……てか、あの子の考えてる事がマジでわからないなぁ……。
そんな事を考えているうちに自宅のマンションに到着し、俺は自分の家である304号室に向かう。
「ただいまぁ……」
「ん、おかえり」
自宅に帰ると母親がソファーで横になりながらテレビを見ていた。
ゴロゴロしてるなぁ……。
俺は家族に彼女の話しをしては居ない。
したら色々と面倒だと思ったからだ。
今では藍原の事を家族の誰にも言わなくて正解だったと思っている。
別れたなんて知られたら、色々聞かれて更に面倒になるし……。
「今日の飯何?」
「カレーだけど?」
「オッケー、俺部屋に居るから」
「はいはい、晩ご飯の時呼ぶからね」
「あいよ」
「あ、それとアンタ」
「ん? 何?」
「彼女と別れた?」
「は?」
俺は母親にそう言われて一瞬ドキッとした。 なんで母さんがその事を知っているんだ?
俺は一言もそんな話しはしてないし……見つかった感じも無かったが……。
「な、何言ってんだよ。俺は入学してからずっと彼女なんて……」
「あぁ、その様子だと別れたのね……」
「だからちげーって! 大体なんでそんな事がわかるんだよ!」
「何年アンタの母親やってると思ってるのよ、彼女の居る居ないくらい、アンタの波動を感じればわかるわよ」
「なんだ波動って……」
厨二っぽい事を言い始める母親に肩を落としていると、母親は言葉を続ける。
「学校入学して結構最初の方から付き合ってたから……丁度一年? 早かったわねぇ~」
「そ、そこまで……」
「ほら、図星」
「しまった……」
俺はぽろっと言ってしまった自分を恨んだ。 てか、良くそんなのわかったな……この母親何者だよ。
「ま、今回は良いけど、次の彼女紹介しなさいよ」
「か、関係ないだろ!」
「そんな事言ってもお母さんにはわかるのよー」
「あぁもう! とにかく放って置いてくれ!」
俺はそう言って自分の部屋に逃げ込んだ。
なんで話しもしてないのにあんなに色々知ってるんだよ……。
「はぁ……なんか疲れた……」
俺は疲労感を感じてベッドの上に倒れた。
「清瀬さんか……」
正直言って可愛いし、話して見た感じも凄く良い……そんな子にあんなことを言われるのは凄く嬉しいのだが……。
「マジで何を考えてるんだか……」
本当に俺に気があるのか、それとも何か裏があるのか……俺は清瀬さんの事を考えながらベッドに横になっていた。
*
「はぁ……」
私は何故か先程からため息を連発させている。
理由は湊斗の馬鹿のせいだ。
「なんなのよ! あの女!!」
湊斗と話しをしていた黒髪の女子生徒。
湊斗に告白まがいの事をしていた。
なんで湊斗にあんなことを?
絶対裏があると私は思っていた。
「あんな馬鹿の事を好きになるなんてありえない……絶対に裏がある……」
きっと、付き合って財布代わりに使われて捨てられるのが落ちに決まっている。
それ以外であいつを好きになる女なんて居るわけが無い!
「てか、なんで私が湊斗の事でこんなに悩んでるのよ!!」
考えて見れば私と湊斗はもう付き合って居ないのだ。
そんなに気にする必要もないはずだ。
なのに……なんでこんなに気になるの?
「はぁ……それもこれも湊斗のせいよ!!」
私は湊斗に腹が立ち、近くにあった電柱に向かって蹴りを入れる。
ムカつく、ムカつく!
「大体なによ! あんなデレデレして!! ムカつく!!」
なんでこんなにイライラするんだろう?
それもこれも全部湊斗のせいよ!
「はぁ……なんでこんなに……」
怒っても仕方が無いと私は気がつき、私は再び足を動かして自宅に向かって歩いて行く。 一年くらい前は湊斗の事が好きだったのに……。
「はぁ……なんでこうなってるんだろ……」
今更考えたって仕方無いはずなのに、私はそんな事を考えながら、自宅に帰って行った。 湊斗があの子にどんな答えを出すのか、私にはわからないが………あの子と湊斗が付き合ったら、とりあえず湊斗を殴ろう。
そう心に決めた私であった。
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