1 ルール
子供の頃って変なルールを作って
それを頑なに守っていませんでしたか?
ここで言う子供と言うのは
小学校にあがったぐらいの年頃です。
車道と歩道の境目の白線から出たら
ゲームオーバーとか
学校から家まで石を必ず
蹴っていかないといけないとか。
子供の遊びで派生したルールもあれば
友達同士の繋がりを強めたくて仲間内だけで
作った決まり事、
なんとなく、偉そうな大人の口ぶりを真似して
大人になった気分に浸りたかったから作った
めちゃくちゃなものまで。
ふと思い返すと笑ってしまう、
ああ懐かしいななんてものも
誰か一つはあるのではないでしょうか。
筆者も子供の時分、
あるルールを自分に課しました。
笑われるかもしれませんが
実は今でも頑なに守っているんです。
私が小学校5年生の頃の話です。
その日はいつも通り
ご飯を食べてお風呂に入り
大好きなテレビを家族全員で
見ていました。
とても面白いテレビで
笑いながら見ておりますと
風呂上がりにがぶがぶと飲んだ
お茶のせいか、
トイレに行きたくなってしまいました。
次のCM…いや、その次、その次…
と我慢していたら
とうとう限界になって
番組の途中でしたが
慌ててトイレに向かいました。
実家は2階建てで、
1階は祖父母の部屋が
2階に両親、私と妹の部屋がといった具合に
分かれていました。
だから、1階の居間にいたのだから
1階のトイレを使った方が速いのですが
2階のトイレの方が馴染みがあり
(しかも漫画が沢山置いてあったので)
切迫しながらも2階に駆けあがったのです。
階段を登りきりコの字に右へ曲がると
一番角にトイレがあります。
角ということでほの暗かったのですが
何しろ速くトイレですませたかったので
普段点ける廊下とトイレの電気に目もくれず
勢いよく扉を開きました。
一瞬です。
ほんの一瞬です。
外の街頭の明かりが入り
少しだけ明るい個室の中、
真正面にある無機質な白い便器の後ろに
顔が隠れ腰ほどまである髪を
真ん中から分け左右に流し
ぼうっと立っている女性が見えました。
とっさの判断で
スイッチに手を伸ばして点けると
そこには誰もいません。
いえ、いるはずがないのです。
何故なら、皆様もトイレを思い出して
欲しいのですが
大抵は便器の後ろと壁の間に
人が入れるスペースなどないのです。
子供ながらこのことは口外しては
いけないと思い
何事もない顔をして居間に戻りました。
しばらくは「あれは見間違いだ。」と
自分を納得させて考えないようにしていました。
しかし、ある時にふっとその光景が頭に
思い出されたのです。
白い便器の後ろに
透けた女性が立っている。
その便器の右側、
水を流すレバーの所から生えているかのように
女性の白く華奢な腕がすーっと指先まで
しっかりとあったのです。
これは勘違いではない。
確実に人ならざるものが
あのトイレにいたんだ。
そう分かった時、恐怖で動けなくなりました。
その日以来、
私は絶対に電気を点けてから
トイレの扉を開けています。
それが子供の頃から私が
守り続けているルールです。
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