うなるオバケ
小さなぼうやと小さな
ぼうやが庭で遊んでいると、
その日、ぼうやは
「ヤァぼうや」
「やぁシロヒゲ」
シロヒゲの声が聞こえたので顔を上げると、ぼうやは「おや」と思いました。
シロヒゲの
「初めまして、ぼうや。あっしはポッポと呼ばれておりやす。お見知り置きを」
「こんにちは、ポッポ」
ポッポは首をヒョコヒョコ前後に揺らしながら歩いてくると、ぼうやが作り置いていた
「ハハァ、こいつぁいいシロモノですなぁ。さすがはぼうや」
「ありがとう」
シロヒゲも白いヒゲを揺らしてやってきました。
「やいポッポ。ぼうやが
「おっといけねぇ」
ポッポはぼうやに向き直って腰を
「いやなに、ちょいと、あっしの
シロヒゲが隣でウンウンと
「問題って?」
ぼうやが聞くと、ポッポは青い目を細めて言いました。
「
ぼうやはうーんと
「大きい声でうなるオバケ? たくさんいるの?」
「声が聞こえる場所は
「こわいなぁ。安心して眠れないね」
ぼうやがぶるると
「なぁ、そいつ、
「あぁそうだ。おおよそ人間が寝るような時間になるとぱったり聞こえなくなって、朝になるとまた
「お昼に出て来て、夜は寝てるのかな? オバケじゃないのかな?」
「さぁそいつはどうでしょう。たんに変わりもんかもしれねぇ」
「
「落ち着けやい。正体もわからないうちに
ポッポがちょんとシロヒゲをどつくと、小さなシロヒゲはひっくり返ってしまいました。
「うーん、ちょっとこわいけど、猫のみんなもこわいよね。そのオバケのいそうなところ、見に行っていい?」
「もちろん!
あっしは一足先に行って仲間に話を通しておきやすんで、ぼうやはシロヒゲと一緒に後から来ておくんなさい。では」
ポッポは嬉しそうに顔をゆるませると、首を前後にヒョコヒョコ揺らしながら来た道を戻って行きました。
ポッポが見えなくなると、ぼうやはこっそりシロヒゲに
「ねぇ、ポッポの歩き方ってさ、ちょっとハトに似ているね?」
シロヒゲはそれを聞いて目をぱちくりさせました。
「そりゃそうさ。だからあいつはポッポなんだ」
ぼうやはシロヒゲとポッポの案内で、町のあちこちを見て回りました。
よくオバケの声がすると言う場所に着くと、地図と赤いペンを取り出してまんまるの
「そろそろ、ここいらで声が聞こえてくる時間です」
そこには
ぼうやはびっくりしてあたりを
ふと
ぼうやが歩き出すと、シロヒゲも
ぼうやには
(あんなに大きな音がしたのに、
何も見つけられないまま
「なんかわかりそうかい、ぼうや?」
「うーん、まだわからないよ」
「そうか。
ポッポのやつだって、
シロヒゲはそう言っていたけれど、いまにオバケが
ぼうやはパパとママにただいまを言った
地図をテーブルの
「さっきからずっと、
「ママには言えないの」
ぼうやは
「あらそう」
ママはそんなぼうやの様子をとくに気にかけていないかのような顔をして、ぼうやの
「このあたりの地図だね」
「うん」
「赤い丸はなんの
「ないしょ」
「こっちは
「ないしょ」
「あ、わかった! 新しい駅を見てきたんでしょ」
「えき? なんのこと?」
「
「えきって、電車の駅? ここに?」
「そうだよ」
「うそだぁ。
その時、ママがテレビを
次の日、シロヒゲとポッポがぼうやを
「シロヒゲ、ポッポ、こんにちは。待ってたんだ」
二匹の猫はびっくりして顔を
「こんにちは、ぼうや。
「うん。オバケの
「なんですって」
「いっしょに見に行こうよ」
ぼうやは
公園に
「あった!」
それは
ぼうやは落ち葉を
「なぁぼうや、遊んでないでオバケを探そうぜ」
「違うよ。ちょっとここを見てて」
ぼうや、シロヒゲ、ポッポは柵を
すると、ごおおおという例の音が聞こえてきて、ぼうやが置いた葉っぱがふわりと
「やつだ! この穴から聞こえたぞ!」
「するってぇと、化け物はこの中に?」
シロヒゲとポッポが
ぼうやはニッコリして言いました。
「次は直接オバケを見に行こう。あっちの
ぼうやが指差している先は、公園のはずれにある
ぼうやとシロヒゲが
「ぼうや、行っちゃあいけねぇ」
「なんだいポッポ。
ポッポは
「ぼうや、あんたは
あっしらを
シロヒゲはそれを聞いて、しょんぼりと耳を
「そうだった。ごめんよぼうや。おいら、自分のことで頭がいっぱいだった。ぼうやが
ぼうやは
「ありがとうシロヒゲ、ポッポ。
大丈夫だよ。
ねぇ、いっしょに行こうよ」
ぼうや達は、ポッポ、ぼうや、シロヒゲの
やがて背の高いフェンスに突き当たりました。フェンスは横に長く続いていて、向こう
「なんだ、
シロヒゲがフェンスに顔を押し付けて
それはぼうや達の
その長い
「今のはデンシャってやつですね?」
「うん。そうだよ」
ぼうやはポッポとシロヒゲを
「あれは
さっき穴を見たでしょう? あれはツウキコウって言って、地下鉄が
「なるほど、あっしらが聞いてたのは、デンシャの音だったんですね?」
「うん。電車がツウキコウの近くを通った時に、音が出てきてたんだね」
「葉っぱが動いたのはどうしてだい?」
「電車って、走っている時に大きな風を吹かせるんだよ。それも出てきてたんだと思う」
「なーんだ、バケモノじゃなかったのかぁ」
シロヒゲはごろんとその場に横になってしまいました。
「こら、
しかし、声——いや、音ですか。ここ最近になるまで聞こえなかったってのが、
「えっとね、地下鉄、カイツウしたばっかりなんだ。駅が新しくできたんだって。ニュースでやってたよ」
「なるほどねぇ。いやはや、あっしらだけじゃ思いつきもしなかったでしょう。
いやぁぼうやのおかげで助かりました。さすが
ポッポがやっと
「こわくないよって、みんなに教えてあげてね」
「もちろんでさぁ。このポッポにお
ぼうやとポッポが笑いあっていると、すぐ近くから不思議な音が聞こえてきました。
すぴー…… すぴー……
音のする
「あれ? シロヒゲ、寝ちゃったの?」
シロヒゲの白いヒゲがぴくぴくと動きました。
「むにゃ……ここ……
地下鉄に乗っていると、ほんの少し明るいところに出ることがあります。
そこで外を
人間たちがそこを「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます