漆黒の青年

すたんぷ

彼はそこにいる 1

彼は漆黒の青年と呼ばれていた。ただそこにいるだけで瘴気を放ち、草木や建物を飲み込み黒く染め上げる。

 

 染め上げられた草木は枯れ、建物は一切の光を失い、やがて青年と同じく瘴気を放つ。彼はしゃべることはそうそうない。なぜならしゃべったとしても忌み嫌われるだけの存在なのだから。

彼は言う。生きていてもそこに意味はあるのかと。生きているだけで忌み嫌われ、引かれる自分には意味はないと。そこにいてもいないほうがマシだともいう。


差し伸べられた手でさえもやがて伸ばさなくなる。一人ひっそりとそこにいるのだ。

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