第4話 見た目で人を判断してはいけません
タクマは酒場の扉を開ける。
内装はまるで某狩ゲーを彷彿とさせる木造の集会所のようだ。
左にはレストランのような小さいコーナー、真ん中は張り紙でいっぱいの掲示板と受付のような場所、そして右には「〇〇行き」と現地の文字で書かれた馬車達が並んでおり、今キョーハイ砂漠行きの馬車が出発した。
タクマは本当にここの字がちゃんと読めるのか確認する為、まずは掲示板を見に行った。
「ゼンマイ採取にスライム掃討、マジかよ全部読める……」
アラビア文字のような難解な記号ばかり並んでいる筈なのに、タクマには全て読める。
だが、そんな事考えていては金が集まらない。
タクマは目に入ったゼンマイ採取と、その目的地が同じスライム掃討の紙を受付へ持って行く。
「いらっしゃいませ~!あら?見ない顔だけど新人さんかなぁ?」
受付嬢のお姉さんが身を乗り出してタクマの顔を見る。
「そ、そうですけど近いっす……」
タクマは照れながら答える。なにせ彼女、胸がデカい。
女を性的な目で見た事がない純粋なタクマからすれば、目のやり場に困るものだ。
「あら?そういえば君、武器貰ってきてないみたいねぇ…」
受付嬢は、タクマの背中に何もない事を見て訊く。
そういえばそうだったが、どこで貰えるのか分からない。
「いや~、俺まだこの国来たばかりだから、ここの法って言うか、義務的なの良く分からなくって」
タクマはまた笑って誤魔化した。タクマの世界は異世界にあたる、幸い伝説で「日本出身」なのは何とか不思議に思われなかったが、もし異世界人である事がバレたら何かと面倒だからとタクマは黙っておく事にしていた。
「それじゃあこのクエスト達はお姉さんが預かっとくから、武器を貰ってくるのよ~」
タクマは武器屋へ行く為、急いで酒場を出た。
【武器屋】
タクマは受付嬢を待たせまいと、剣の看板に「武器屋」と書いてある家へ急いだ。
別に受付嬢が、タクマの事を好きになった訳でもないのに。
「あの~、初陣の為、新人に武器配ってるのはここですか~?」
タクマは大きめの声で、無駄に縦長な店の店主を呼ぶ。
すると、カウンターの方から、ヌ~っと、フランケンのような大男が現れた。
「いらっしゃい……少年」
「あ……あ……あああああああああ!!!」
タクマは驚いた。いや武器屋に入って早々フランケンなんて見れば誰でも驚くだろう。
身長は5mはあるのだろうか、天井ギリギリである。
もしジャンプをしようものなら、一発で屋根を突き破りそうなくらいだ。
「これで新人に驚かれたの……55913回目……もう慣れた」
地味に片言が残っているが、よく見た感じ普通の人なのは間違いない。タクマはホッとした。
「それより俺、新人冒険家に武器を支給してくれるって聞いて来たのですが……」
話をしてる途中、その大男はタクマを片手でつまみ上げた。
「お前……若いのに……関心!」
「あ……ありがとうございます、というより下ろして」
「すまない……俺……目が悪いから……」
大男は素直にタクマを下ろした。
「それより……ギルドカード……見せてくれ」
タクマは少々ビビりながらも、言われた通りギルドカードを渡す。
「なんだ……コレ……適正武器……一個だけ……しかも……魔法……無い……珍しいな。」
このギルドカードはやっぱりおかしいようだ。
しかし大男は、そのままギルドカードを返し、店の裏へ行き鉄の剣を持ってきた。
しかも良質な剣である。
「良いもん……見た。コレ一生見れない……だからトクベツだ!持っていけ」
大男は親指を立て、それをタクマに向けた。
「ありがとうございます、おじさん」
「ケンでいい……また来い……サービスするぞ……」
「それではまた、ケンさん!」
タクマは酒場へ戻った。
【酒場】
「あ、やっと来た。それじゃあ武器もあるしスライム掃討クエストは受けられるわね」
受付嬢は「何かを出せ」と言う感じで手を出してきた。
タクマはなんとなくだが察し、ギルドカードを渡した。
「あら?これはまた珍しいギルドカードだわ。」
またこの話、これでもう三度目である。
だが、特に使えない訳ではなく、受付嬢はクエスト用紙にギルドカードをかざす。
すると、ギルドカードからレーザー光線のようなものが出てきた。
レーザー光線で書き終わると、そこにはこの世界の字で「タクマ」とあった。
それを二つ終わらせ、受付嬢はまたその二つに大きな判子をドン!と押す。
「それじゃあマリジハ平原行きの馬車はまだ発車一時間前だから食事でも済ませてらっしゃい」
タクマは初出撃記念にお姉さんから食事券を貰った。
【飯屋】
「えーっと、イノブタソーセージパンとゼンマイ茶ください」
タクマはよく分からない食事を注文すると、なんと目の前に頼んだものが現れた。
なんでもこの世界の飯屋のほとんどは錬金術での料理らしく、すぐ提供出来るようだ。
「味は普通のホットドックだが、地元のパン屋で売ってるのより美味いな。」
タクマがソーセージパンをガツガツと食べてると、後ろの方でアナウンスが鳴った。
「マリジハ平原行き~マリジハ平原行き~、あと10分で出発いたしま~す!」
まるでどこかの駅アナウンスのような呼びかけだった。
タクマは皿と陶器のコップを「戻し口」と書かれた棚に置いて馬車に乗った。
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