6.愚痴を聞く≠ソラの自慢話を聞く




 その日の夜から早速私はアルトの愚痴を聞くことになった。


 場所は昨夜アルトと出会ったあのリディア木のある森の中だ。

 今まで自分の身代わりとして殴られていた木のそばでアルトの愚痴を聞くとか、嫌がらせかと苛立つ私であったが、イライラはすぐに上書きされた。

 悪い意味で。


 「……それでね、ソラの口の周りにソースがついていて、すっごくかわいかったんだよ」

 「へー」

 「そのときのソラを見た?いや、君は見てないよね。というか見るな。見てたとか言ったらどうなるか わかるよね?」

 「はいはい、見てませんから殺さないで下さーい」


 棒読みな私に対し、誰か一人くらいは思ったんじゃない?もうちょっと真面目に話を聞いてやれよ、アルトがかわいそうだろ、と。

 だが、聞いていただきたい。


 この調子でアルトはかれこれ3時間、ずぅーっと話し続けているのだ。


 「君がいない時を見計らってソラがこっそり僕に言ったんだ。兄様、リスがいるよ。リディアには内緒。僕と兄様だけの秘密だよ。リス、かわいいね!って。かわいいのはソラなのに!」

 「ソラかわいー」


 おわかりかな?3時間、ノンストップだぞ。かわいそうなのは私だよ?

 最初は私もね、反応してあげていた。

 でもさ、3時間だよ!?

 私の苛立ちはすぐに疲れで上書きされたよ。これなら上書きされないほうが良かった。…っと、そこで私はアルトににらまれていることに気が付いた。


 さっきまで脳内に焼き付けたソラを想像しながら、へらへら笑っていたくせにいったいなんだ。


 「君に言おうと思ってたんだけど、今日ソラに抱き付いてたでしょ?どさくさ紛れてさ。殺すよ?」

 「…すみませーん」

 「まあいいよ。それよりも、ソラがさぁ…」


 にらまれたと思ったら、またへらへらと笑いだす。

 なんだこいつ。


 このように、アルトはさきほどから、ソラの自慢話と愚痴を繰り返しているわけだ。

 ちなみにさきほどの私がソラにどさくさに紛れて抱き付いたという話だが、私はソラに抱き付いたのではなくて、不覚にも石につまずきソラにぶつかっただけだ。

 私の行動…いや、私をはじめとするソラの近くにいる女子の行動は、おそらくすべて、アルトによって悪い方へと変換される。さすが悪役だ。

 今度からは気を付けよう。


 「ねぇ、僕の話聞いてる?」

 「キイテル、キイテルー」


 と、そんなこんなな生活が5日間連続したところで、


 「それでソラが…」

 「だぁぁぁ!」


 私はとうとう爆発した。

 むしろいままでよく堪えたなとほめてくれてもいいくらいだ。


 それだというのにアルトという男は怪訝な顔で私を見る。

 まるで奇怪な者でも見るかのような目で!誰のせいで私が奇怪になってるとっ!?


 「ちょっと、にらまないでよ。なんなの?」

 「なんなの?じゃないっ!!?」


 突然キレられてアルトは目をぱちくりさせて驚いている。が、そんなの知ったことかぁ!


 「もう、ダメ!アホか?お前は、アホなのか!!」

 「君に言われたくないんだけど」

 「うるせー、お前はアホだ!5日間連続で、夜更かし!私、睡眠時間減少!原因は、あんたが、日が昇るまで、しゃべり続ける、せい!」


 マシンガンのようにしゃべり続ける私を見てアルトは目を丸くしている。一生目を丸くしていろっ!


 さきにも叫んだ通り、私はアルトの愚痴?を聞き始めた日からずっと睡眠時間が2~4時間なのだ。

 子供は寝て大きくなるんだ!私の背が小さいのはお前のせいだ!というか愚痴を聞くことを取引条件にしたのは私だけど、5日間連続とか聞いてないから!?


 「見ろ、私のこの顔!」

 「ああ。ブスだね」

 「ちっがーうよ!?あんたのせいで、ブスになったんだからな?ていうか、私ブスじゃない!」

 「ソラ以外の人間は全員ブスだよ」

 「はい。わかりました。弟フィルターね。はいはい、一度眼球洗ってこいやっ!」


 じゃ、ない。

 私が言いたかったのは、そんなことじゃないのに。あぁぁぁ。


 「もう、ツッコミ疲れた…違うの。私が顔を見ろと言ったのは、私の目の下の隈を見ろってことなの~!」

 「ああ。確かに、隈できてるね。アーカワイソウ」


 イラッ


 「おーまーえーはぁ、ほんとうにぃ~!」

 「ちょっと唾飛ばさないで。汚い」

 「キィ~ッ」


 殴ってやりたいが、悲しいことに寝不足とツッコミ疲れのせいでそんな気力はない。

 披露を全く感じさせない顔で私を見るアルトが憎くてしょうがないよ。


 「なに?あんたはどうして、眠くならないわけ?」


 リディア木に八つ当たりをして寝不足だったころは顔色が悪かった。なのに今の彼の顔色は全く悪くない。むしろ血色がよく、生き生きしているように見える。

 意味が分からない。

 どういう仕組みになっている?

 だけど答えは簡単だった。


 「ソラの話をしていて眠くなるわけがないでしょ?」

 「ああ、はいはい、そうね。あんたに聞いた私がバカだわ。私は眠くなんのよ!」


 そう。あの日以来私はずっとこいつに、愚痴ではなくソラの話を聞かされるのだ。もちろん、私がソラと遊びすぎだとかの愚痴もあるけど、断然ソラの話。

 もうやめて。やっとアルトのソラ自慢から解放されたかと思ったら、夢の中にまでソラが出てきて、起きたらソラと遊んで、寝たら夢にソラが出てきて、起こされたらアルトにソラの話をされて……

 寝ても覚めても、ソラソラソラソラソラソラソラ


 「うがぁぁぁ!」

 「うわっ。なに、気持ち悪いよ。暴れないで」

 「暴れるわ!あんたの脳内の9割がソラなわけがわかったわ。私ですら、もう脳内の9割がソラになってる。うん、私死ぬ!」

 「それはいいことだね。死ぬなら川で死んでよ?」


 笑顔でアルトは目の前の川を指さした。


 「いいことって、そっち!?ソラをめでる仲間ができたとかじゃなくて!?」

 「ソラは僕だけのものだからね」


 私はぐったりとその場に倒れ込んだ。

 パト○ッシュ、早く迎えに来て。


 「もう、無理。愛が重すぎ…。ていうか、なんで5日連続なのよぉ」


 愚痴を聞くとは言ったが、まさか毎日のように聞かせられるとは思っても見なかったよね。


 「君が望んだことでしょ?」


 何言ってんだこいつって顔で君は私を見ているけど。うん。そうだね。私たちの中で、ボタンの掛け違いがあったことは確かなようね。


 「いや、望んでないから」


 むしろ何で人の愚痴を聞くことを私が望んでいると思ってるんだよ。

 私は愚痴マニアかな?


 「私はただ、木を殴るくらいなら私に愚痴を言えっと言っただけ。記憶を捏造するな。ていうかなんで愚痴を聞くっていったのに、ソラの自慢話ばっかりになってんのよ!?」

 「愚痴ばっかり聞きたくないだろうと思った僕なりの配慮だよ」

 「いや、9割がた自慢話なんですけど!?」


 頭が痛い。

 なんか私、取引内容を間違えた気がする。

 でもここまできたら仕方がない。今更もう愚痴ききません。一人でソラの好きなところをつぶやいていてください。はい、わかりました、他人に迷惑かけずつぶやいています!とはならない。


 私が愚痴を聞かなくなったら、確実にアルトはまた顔色を悪くして木を殴り始めるだろう。

 アルトの体調も悪くなるし、私の腹の調子も悪くなる。そのうち私以外の女子たちの腹も被害にあうかもしれない。今ならまだ私だけしか被害にあっていない。私ってば自己犠牲の固まりすぎる。自分で言うのもなんだけどいい子すぎぃ!

 …まあそれに。アルトの悪役要素をなくすためには、めんどうながらも今の立場が必要なのだ。


 「わかった。愚痴でも自慢話でもなんでも聞いてあげるから。ただ、毎日は話聞かないから。せめて一週間に2回にして」


 妥協案。

 ほんとうは私の体のことも考えて一週間に1度の頻度にしたい。が、私の目先の目標は、アルトと友達になること。残念ながら一週間に1度では足りない。


 そりゃあ以前よりは、(ソラを交えてだが)アルトとまともな会話をするようにはなった。だがしかし周りの目があるため、どうしても完璧を演じていない本当のアルトとはおしゃべりができないのだ。うわべだけ仲良くなっても意味がない。

 だから一週間に2回は、面と向かって本心でおしゃべりしあうことが必要。


 まあきっとこの交渉はうまくいくだろう。

 アルトは私のことが嫌いだ。

 私がアルトの愚痴を聞くといったときも不満げでしたし、彼のことだ今回の私の提案を聞いて「なんていいアイデアなんだー」と小躍りするに違いない。

 そう高をくくっていた私は、悪い意味で、この男が私の予想を容易に壊していくことを忘れていた。


 「はあ?今ですら話し足りないのに、一週間に2回だなんて…却下」

 「は、話し足りないぃ!?」


 彼は感心するどころか眉間にしわを寄せて私を見ていた。

 うん。なぜだ?

 驚きすぎて声が裏返ってしまったよ、おい。


 「一週間に2回とか、少なすぎ」

 「……は?」


 彼はムッと頬を膨らませる。はい、かわいいねー。顔だけならかわいいんですけどねー。私の顔はひきつりまくりだ。


 この男。なぜ私の考えの斜め上を行く!?私に恨みでもあるのか?

 いえ、ね。かわいい弟の友人ポジションにいる私を恨んでいるのは知っているよ。けど、それとこれとは話が別だろう。


 「あのぉ、私毎日、アルトにたたき起こされているよね?」

 「うん」

 「それでも話足りないと?」

 「うん」


 彼は真顔で私の質問にうなずく。

 おかしいな、小首をひねっちゃうよね。

 ゲーム内でのアルトは見た目の通り文武両道、この年にして王国の騎士と同等の戦闘力と知識を持っていたはずだ。

 そのアルトが、毎日、朝方まで、私に、話を、聞かせて。で、足りないと?


 ちなみにこの孤児院での生活は6時起床夜8時就寝だ。でも私は眠れないので、神父様には黙って孤児院の子たちと遊んで(この時間は私の癒し)から夜の9時に就寝する。そして私はアルトに深夜0時に起こされる。


 「いや足りない以前に時間がないから!?あんたの頭はどうなってんのよ!?計算したらわかるだろ?」


 するとやれやれとアルトは肩をすくめる。

 なんかむかつくな。


 「時間は無いと思うからダメなんだよ。時間はつくるものだ」

 「それっぽいこと言ってるけど、つくれないからね。一日24時間を28時間とかにできるとしたら、とっくにしてるわ!」

 「君の行動において生じる余計な時間を無くせば時間を作れるでしょ。いっつも夜の9時まで君が他の子どもの部屋に行って遊んでいるのは僕もソラも知ってる。その時間をなくせば、夜の11時からソラの話ができるよね?」

 「……。」


 平然とアルトは提案してくる。なんてことないでしょ?と。

 いやいや、なんてことあるから。彼は己がかなり自分本位な提案をしていることに気づいていないだろうか?私は頭を抱えた。頭いいけど、考え方が偏っている。

 なんで私がアルトのために、自分の時間を調整するのが前提みたいになっている?世界はあなたを中心に回っているわけじゃないんですけど?


 「あの…心の底から、その提案やめて。私に、あんたたち以外と遊ぶ時間を頂戴。ていうか、知ってたの!?2人にはばれないようにこっそり部屋を出ていたつもりなのに」

 「あれさぁ…ソラがいつもうらやましそうに、部屋を出て行く君を見るからやめてほしいんだよね」

 「え、マジで?」


 ばれているだけではなく、ソラが私をうらやましそうに見ていたとは。

 でもどうしてうらやましいの?ソラも夜ふかしして、遊びたいとか?

 あの子、最初こそは一緒にいたずらしたけど、神父様に怒られて以来、意外とまじめに頑張っているから…と思ったところで、私はアルトが眉間にしわを寄せながらこちらを見ていることに気づいた。


 「なによ。若いうちからそんなにしわよせてたら、将来、しわしわおじいちゃんになっちゃうんだからね?」

 「うるさい。なんでソラは君みたいなバカを友達として選んだんだろう」


 心底理解できないというように、アルトはため息をついた。

 おい。なんかこいつ、めっちゃ腹立つんですけど。


 「鈍感で人の好意にも気づかない君には僕が教えてあげるよ。ソラは優しい子だから、日中君を独占している分夜は他の子に譲ってあげてるんだよ。ほんと僕のソラはかわいいなぁ」


 最初の方は「え。そうだったの、ソラ……じーん」って思ってたけど、最後の言葉で台無しだ。僕のコメントはいらないから、ソラのやさしさだけを伝えてほしかった。

 ていうか自分の体を抱きしめて身もだえするな。気色悪いぞ、ブラコン。


 「だから君はソラと僕の話を聞くためにも、夜に他の子と遊ぶのをやめてよ」

 「ごめんなさい。気色悪いぞブラコンと思ったことは謝るので、私の至福の時を奪わないでください」

 「ブラコン?ていうか、気色悪いって……は?」


 おぉっと、口が滑っちゃった~。

 リディアは話を逸らすの術を繰り出した!


 「わかった。わかりました。妥協しますよ。愚痴を聞くのは二週間に3回!これでどうだ!」

 「それ結果的に最初の提案より回数減ってるよね。騙されないよ。それよりも気色悪いって…」

 「チッ。ただの弟バカであればよかったのに。どうして頭いいのよ」

 「頭いい以前にふつうに気づくから」


 私はイライラとこめかみを押さえた。

 視界の端から見える空の境界線は、淡い黄色だ。

 チッ。

 この空の色はだいたい朝の3~4時。

 私たちは空がこの色になるとおひらきにして孤児院に帰る。


 つまりもうそろそろ帰らなければならない。


 アルトは乙女ゲームでも今も、ずるがしこい性格をしている。

 今日このまま帰ることになれば、アルトは私の提案を伸ばせることに気付き、今後うまい具合に話をそらして、うやむやのまま解散!とするに違いない。

 そうして、結局私は毎日アルトの愚痴とソラ自慢を聞かせられ、脳内9割がソラに改造され、なおかつ、私の睡眠時間は減少していき、成長に支障が出て、衰弱していき、最悪死ぬのだ。やばい。めっちゃやばい。

 今日のうちに決着をつけなければ。


 「わかった。いいでしょう。妥協する。一週間に3回でいいよ」

 「ダメ。せめて、1日置き」

 「な、なんだと!?」


 こいつめぇ。愚痴を聞いてもらうと見せかけて、私を衰弱死させることが目的だな(※リディアは睡眠不足のせいで思考が偏っています)。


 「そんな顔しても無駄だよ。むしろ、僕は1日置きで手をうってあげると言っているんだから、それを飲み込むしか、君に道はないよ?」

 「嫌よ。眠たいもん!」

 「でも一日置きであれば君が最初に提案した、週3回の日もあるよ?」

 「うぬぬっ」


 一日置きだったら、最高一週間に4回になる。だがたしかに、その分一週間に3回の日も出てくる!

 しかしそんなのは言葉の綾だ。

 私が実際年齢通りの6歳であれば騙されただろうが、私の精神年齢は20歳だ。簡単には騙されない。


 週3回には休日が確実に4回ある。が、一日置きの場合休日は3~4日なのだ。つまり1日置きのほうが絶対ハード!

 1日置き、ヤバイ。それはわかった。

 だがわかったところで、アルトを妥協させる案を出さなければ意味がない。


 一番いい案は、アルトを動揺させること。

 アルトを動揺させてしまえば、こちらのものだ。動揺させることができたからこそ、今私はアルトとこうして、会話をすることができているのだから。

 だが、逆にそれは、動揺させることができなければ、アルトに私は敵わないということだ。


 ほんとうに、こういうところが嫌いだ。

 アルトは交渉上手というか、言いくるめるのがうまい?とにかく強かな人間なのだ。だからこそ、ゲームの本編でリディアはアルトに散々苦しめられた。


 まあつまり何が言いたいのかと言うと、今の私には打開策が、なにもない。ということ。

 そんな私の心の中で敗北を悟ったのか、アルトは勝ち誇ったような笑みを私に向ける。


 「で?結局どうするの?僕の愚痴を聞くこと自体やめる?そしたら、僕はまたストレス発散に木を殴るから、原理はわからないけど君は腹痛に襲われるようになるよ?」

 「うぐっ」


 私の考えていることを、こいつが読めないわけがないのだ。


 「それとも、この提案自体をなしにして、毎日僕と楽しくおしゃべりする代わりに、孤児院の他の子たちと遊ぶ時間を睡眠に充てる?」

 「うぐぐ…あぁー、もうわかったよ。一日置きだからね!」

 「素直な人間は、嫌いじゃないよ」


 フッと笑うその顔が腹立たしくて仕方がない。

 僕にかなう人間はいないんだよ、どんまい。とでもいうように、肩を叩き帰路につくその後ろ姿も、むっかつく~。

 お前なんか動揺させなけりゃ、怖くないんだからな!

 今からその背中に抱き付いて、熱烈なキスでもしてやろうか、あん?そしたら確実にアルトは動揺するぜ!


 そう思いクラウチングスタートのポーズをとったが……やめた。

 私はいったい、何を考えているんだ。

 怖い、自分が怖い。

 睡眠不足のせいで、頭が回らないっていう理由もあり、今の私かなり危険思考だ。

 これはやばい。実行に移さなくてよかった。

 もし実行なんてしていたら、我に返った時の自分に対しての精神的ダメージが大きいし、なにより動揺した後のアルトに確実に殺される。


 自分が殺されるところを想像して青ざめたところで、アルトが振り返った。

 ま、まさか、私の考えていたことが伝わって~っ。

 ひぃーと、さらに私は青ざめた。が、


 「ちょっと、遅い。置いてくよ?」

 「……へ?」


 彼が立ち止まり、振り返ったのは私が来るのを待つためだったようだ。

 いつもは私を置いてスタスタ帰るくせに。めずらしい。

 なんだ?雪でもふるの?


 「なに、その顔。あと10秒で来なかったら、神父様にリディアが夜中に孤児院を抜け出したってばらすよ」

 「ちょ、それあんたも同罪!」

 「僕はたまたま、早起きしたらリディアを見つけたんだよ。10、9…」


 それずるくない!?と言う暇もなくカウントダウンを始めたので、私はアルトの元へ走るしかない。


 「5…4……」

 「ちょ、待ってよぉ~!」


 どうして脅して取引を持ち掛けた私の方が、今アルトに脅されていて。どうして私をにらんでいたはずのアルトが、今私に意地の悪い笑みをむけているのか。


 「…1」

 「ギリギリセーフぅぅうぇへっ…」

 「アハハ。変なむせかた」

 「うるせぇっ…ゲホゲホ!」

 「その変顔はおもしろいけど孤児院につく前には止めてよね。君の声でソラが起きちゃう」

 「クソ!自分勝手すぎる!」




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