第2話 発見
「おお、いたぞ!エネルギーの波形が画面に映っている!」
ガイガーカウンターのような形態のエネルギー探知機を、辞書や本に翳していた科学者のカイル・サランジェが叫び、友人である言語学者の津田良平が、やったなとカイルの肩を叩く。
全身を防護服に包んだその場に居合わせた研究者たちの間に、緊張とも喜びともつかぬ空気がさざ波のように広がった。
「捕獲準備!」
カイルが期待に目を輝かせ、部下の2名に命令を下すと、彼らは防護服で全身身を包んでいるとは思えない速さで、携帯用の機器をケースから取り出し設置した。
「チェック1、スピリット吸入器設定よし、チェック2、デジタル信号変換機作動、チェック3、捕獲エネルギーをスコープ内の焦点に絞り込みO.K、発射準備完了」
カイルが満足気に頷き、上げた片手をまっすぐに伸ばして合図する。
「発射!」
ラッパの先のような物をつけた機関銃型のエネルギー捕獲機から、細くて鋭いイナズマが発射され、暗い空間をまばゆい光がまっすぐに突き進んだ。
そして、ロックオンされた見えない物体を取り巻くと、バチバチと音を立てて、激しく上下左右に振れたかと思うと、ラッパの先から捕獲機に吸い込まれていった。
「捕獲成功しました」
カイルの部下が大声で報告したので、カイルは次の命令を下す。
「これより、エネルギーのデジタル化開始、本部へ転送しろ」
捕獲機に繋がれたコードから取り入れられたエネルギーは、デジタル化するための装置の中で暴れているのか、映ったモニターにはそのエネルギーの波形が大きくうねっている。そしてデジタル化が進むと、疲れ果てて、命が尽きるように徐々に平らな波形になり、転送先へと消えていった。
「デジタル化完了。本部へ送信しました」
カイルの部下の声に、一緒に探索に来ていた者たちが色めき立った。
「おお!やった!新しい言霊を手にいれたぞ!」
「サランジェ博士おめでとうございます!」
湧きかえる仲間たちを後目に、言霊をデジタル化した際にモニターに記された言霊の意味を見て、良平が難しい顔をしているので、カイルが心配そうに声をかける。
「良平どうした? 何か問題でも?」
「うん。果たして今度捕まえた言霊が、使えるかどうか疑問でね。カイルならどういうシーンで使う?」
良平の問いにモニターを覗き込んだカイルが一瞬目を見開き、それから眉間に皺を寄せて思案するが、目が左右に揺れている。
「う~ん?どう使うかって聞かれても、過去の遺物というか、スクリーンの中でしかお目にかかれないからな……急には思いつかないよ」
現実主義、論理主義の科学者のカイルが困り果て、その整った顔をしかめながら、しどろもどろに答えた。
いつも冷静沈着で、冷たい印象を受けるカイルの見慣れない顔を見て、良平が面白そうに笑う。
「まぁ、頑張れよ、言霊通信社の社長さん。後は優秀な部下を仕切って、使い道とキャラクターデザインを考えてくれたまえ。さあ、そろそろ僕たちも引き上げるとするか」
湧きかえる仲間たちを後目に、言霊をデジタル化した際にモニターに記された言霊の意味を見て、良平が難しい顔をしているので、カイルが心配そうに声をかける。
「良平どうした? 何か問題でも?」
「うん。果たして今度捕まえた言霊が、使えるかどうか疑問でね。カイルならどういうシーンで使う?」
良平の問いにモニターを覗き込んだカイルが一瞬目を見開き、それから眉間に皺を寄せて思案するが、目が左右に揺れている。
「う~ん?どう使うかって聞かれても、過去の遺物というか、スクリーンの中でしかお目にかかれないからな……急には思いつかないよ」
現実主義、論理主義の科学者のカイルが困り果て、その整った顔をしかめながら、しどろもどろに答えた。
いつも冷静沈着で、冷たい印象を受けるカイルの見慣れない顔を見て、良平が面白そうに笑う。
「まぁ、頑張れよ、言霊通信社の社長さん。後は優秀な部下を仕切って、使い道とキャラクターデザインを考えてくれたまえ。さあ、そろそろ僕たちも引き上げるとするか」
「良平だって、共同経営者だろうが! 俺だけに任せるなよ。日本語に関してはお前の意見がデザイナーのイメージを左右するんだからな。頼むぞ」
「カイルは上っ面を剥ぐと、俺様キャラになるんだな」
先ほど捕獲した言霊に、よっぽど戸惑っていたのだろう。冷めた仮面が剥がれ、熱くなったカイルがいつになく突っかかってくるのが面白くて、良平はもう少しカイルをからかってみたい気もしたが、他の者たちが、放置された図書館から引き上げるのを見て、分かった、分かったと、カイルを落ち着かせてから出口に向かう。
研究者たちが、和気あいあいと引き上げる中、カイルはなおも思案気な表情をして一番後ろからついて行く。
防護服を着た男たちが通った後は、降り積もったちりや、ほこりが踏み荒らされて、幾重にも重なった足跡が残っていた。
開いた扉から射す光に、舞い上がった無数のほこりが照らされて、まるで、静けさを破った侵略者たちを取り巻いているようだ。
「愛、か‥‥‥」
地上に打ち捨てられたまま、また眠りにつく図書館を振り返ってつぶやいたカイルの声は、扉が閉められる音に掻き消されたのだった。
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