### 最高の主人公がいるセカイ
「あんまり女性に
説教めいたことをしたくはないのだけれど、」
どうしようかな?
私は
正しいことの
ほとんどを女性から学んだし
それ以外は女性から学んだ先人から学んだ訳だから。」
書いていることを詳しく教えてと
他愛無く聞いた時に
黄昏の魔術師は
そんなことを言っていた。
「いいから教えてよ。」
わたしは
少しイラつきながら話を急かした。
その時に黄昏の魔術師が少し嬉しそうだったのと
それから一段と
二人の距離が縮まったことを憶えている。
「私は
人間社会と宇宙の全てについて
近代人権思想と接続しつつ
ミクロとマクロにおいて
包括的に述べることで
一つの体系的な解釈として
普遍的に正しい人間についての公理体系を
定義している。
比喩として
神と人間の再定義とも言える。」
「特定個人が絶対の正しさを決めることには
問題があるんじゃないの?
憲法第19条の思想及び良心の自由!」
少し得意になって言う。
そんなわたしに
好ましそうに微笑んで全てに関する説明は続いた。
「問題ない。
私の解釈を
受入れるかを選ぶのは
各個人だから。
その上で、
個人によって成立する共同体が選ぶかでしかない。
私の提示したことが
国家により各個人に教育される未来も想定しているが
それは遠い未来にあるべき話だ。」
確かに強制がないなら
それを追い求めることも述べることも
むしろ権利だ。
「私の解釈の先の未来を
選ばないなら滅ぶとは思っているが
愚行権は万人に開かれている。
他に手段があるとすれば
全ての時計を破壊して
全ての人間が
時計の概念と形を
忘れることくらいだろうけど。」
何かの物語で聞いた話だけど、
そんなことが不可能なことは分かる。
冗談みたいな格好の人だけれど、
この人は本気だということも分かる。
「私は全てに関してが解かっている。
具体的なことは多く知らないことがあるけれど
全てのことは全ての一部であるから
現宇宙が終わるまで
私が正しい。
私の正しいとする範囲で
全てが揺れながら
生じ結びつき消えていく。
収束していく。
私は
宇宙全体の共同体において
精神における自由と幸福を
絶対にするために必要な正しさを
これまでの人間の歴史に従って
規定しただけ。
共同体内部での絶対は
これまでも
今も
特定の者達が決めている。
同じように私も
仲間内の
約束事に関するアイデアを纏めたに過ぎない。」
もしも、
これが大きく社会に受入れられるなら
政権交代では済まない。
社会のあり方が
根本的に変わる。
わたしは
出会うべき人に出会ったのかもしれない。
「私に従って
人間の歴史が
最後まで続くのであれば
人間の歴史の終わりが
宇宙の歴史に終わりとなる。
そこから外れた事象は
一部は発散を続け
どこにも繋がらず
霧散する。
一部は収束をして
破綻して
終了する。
どちらもリソースを食い潰す。
費やされたリソースを
再度生成する必要が出る
よく言えば、
その分だけ
歴史が終わる瞬間を
先延ばしにすることができる
とも言える。
無駄でしかない享楽は
人間にとっての最高の贅沢であり
至福の一つでもある。
一方で
その間、
整えられた者達は甘美の享受を妨げられる。
そして、
度を過ぎれば
全てが破綻する。
おそらく
全てが破綻する前に
何らかの警告があるだろうが
警告自体が災厄としてある。
最後の人間は
次の宇宙そのものになる。
私は
その者が身体を持つなら
女性か半陰陽としてあると予想する。
その時
既に人間が
身体を持っていない可能性も否定はしない。
しかし
それがデジタルデータでないことは断言する。
量子ビットの可能性ならある。
私の外側で
霧散も破綻もしない事象があるなら
私とは別の未来の宇宙を産む
種となる。
それは恐るべきことだ。
量子コンピュータと
その奴隷となった人間達がそうなる可能性がある。
私は
その者達を殺めることを
推奨はしないが
否定もしない。」
量子コンピューターはよく分からない。
最近流行のAIとは別なのかと
聞いてみる。
「AI?
あんな二進法の近似に踊る人間などは取るに足らない。
それに
踊りが上手な人達は
下手糞なDJの前で
流して踊れると信じている。
あれ、何の話だっけ?」
この人と寝たい。
全てを
かなぐり捨てたこの人に
求められたい。
その時には
もうそう思っていた。
わたしが
セカイそのものに溶けて
これまでの
わたしのセカイが変わった時より
幾らか前の話。
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