爆裂業雷の純白魔女
第15話 ナンバー2『爆裂業雷の魔女』(フラグ建築回……あ、剣の、な)
『多
まぁ、トップからナンバー2に落ちたことに対しては気にしちゃあいないさ。ただ、なんか私の影が最近薄くなって来たなぁってちょっと寂しく思っちゃっただけ。
『
だから私も対抗して『全ての属性の魔法を扱える』けどあえて『苦手な炎や雷といったハデな属性』の魔法だけで最近はミッションをクリアしてきてるわ。
え!? これってトップからナンバー2になったこと気にしてるって? いやいや、ソンナコトナイヨー。
そのせいで『
最近、ちらりと聞こえてきた会話なんだけど
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「なあ、なんでハデな魔法しか使えないやつがオールマジックマスターなんて大層な名前付けられてんだ?」
「いや、俺もよく知らん。たぶん魔法が凄いってのを強調したかったんじゃね?」
「そうかぁ」
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って言われる始末なんよ!
だから今回のミッションで私の本当に得意な『氷結魔法』でみんなを驚かせてあげるわ! ふはははは! これで私はもう、影が薄い女と言われる心配はない。
きっと翌日から私の噂話で持ちきりよ! 今までみたいに『マルチデリーターの神速剣の話のせいで、私が華麗にこなしたミッションの話が無くなる』ってことにならないわ。ええ、そうよ! きっと、そうよ。
ふふぅん。これで私はきっと今より……いえ、マルチデリーターが現れる前より存在感が出るはずだわ。
ただ、一つ懸念があるとすればそれは、相手が氷属性攻撃に耐性があるやつだった場合よ。そうだった場合は仕方ないからいつも通り『爆雷魔法』をお見舞いしてあげる。もしそんなことになったら私の計画は諦めるしかないけど……こればっかりはどうしようもないわね。ミッション成功の方が大事だもんね。うん……。
よぉーし! お仕事頑張っちゃうぞ! って張り切ってみたけど私の出番は夜なのよね。夜遅くまで起きてることになりそうだから、ま、とりあえず、お昼寝しーよぉっと。Zzz。
パチッ。
私のお目目がパチッと開いた効果音よ。シーンが変わると思った? 残念。この回はずっと私のターンよ。
夕暮れ時に丁度良く目が覚めた私はまず、顔を洗って晩ご飯を食べることにする。朝起きたばっかだから軽いものが食べたいわね。……う~ん、いつも通りトーストにサラダでいいか。
そう思った私はイスに座り、目の前のテーブルの上に手をかざす。
「まずは食器……トースト、サラダに……あ、スープもあったわね。ならカップを出して……え~と、スープの入った鍋が……あ、あった」
と、口に出した順に『アイテム』がテーブルの上に出て来る。ああ、これは『時空間魔法』の一つ、『収納魔法』よ。俗に言う『アイテムボックス』ってやつね。
『全属性』が使える彼女は当然、『時空間属性』の魔法も使える。そ、天才の私だからできること。
「さて、いただきます」
彼女はモグモグ、モシャモシャ、ゴクゴクと食べ進めていく。私、そんな汚ならしく食べてないわよ。もっとお上品に食べていますことよ?
「んぅ~ん。やっぱりできたては美味しいわね~」
彼女は焼きたてのパンに新鮮な野菜に温かいスープを食している。うまうま。やっぱり、ニールベーカリーの焼きたてのパンは最高ね。
彼女は最後の一口を食べ、食器を台所の水に浸けて、
「どんなのがいいかしらねぇ。ただ気合いが入るだけじゃなくて、何か戦場で目立つような色もあって、今日の最後に何か『ナンバーツー凄い!』って思わせられるようなそんな色合いの……あ! これいい!」
彼女が手にしたのは純白のワンピース。少し肌寒さを感じるため白いロンググローブに白いロングブーツ、そして生地が薄くポケットの多いロングコートを羽織る。
「って、これって白すぎかしら? まぁ、いいわ。これで戦場で無傷で……いえ、一切汚れずにミッションをこなして見せるわ!」
姿見の前で全身をチェックし、未来を想像(妄想)してニヤケる。彼女はそれが出来る程の実力はあり、彼女自身もそれは分かっている。だからこその有言実行。彼女は今まで心に決め、口に出した言葉は曲げずにミッションを成功してきていた。
彼女はホウキを手に取り、魔法でホウキを白く染め上げる。
「せっかくだからこいつも白く染めあげちゃおっと。……よし、行きますか」
過去の異世界の勇者達が
「魔法使いはやっぱホウキで空飛ぶもんでしょ!」
「いやいや、魔法のステッキで変身でしょ!」
「いーや、杖を振ってだな……」
「いや、詠唱でしょ」
「魔導書で……」
「イメージが大事なんだ」
「手をかざして」
「魔法陣を書いて発動!」
というような魔法議論のもと、この世界での『魔法体系』や『魔法の考え方』が変わってきていた。正しくは今はまだこの国でしか変化はない。
が、どれもだいたい間違っていない。この世界の魔法は触媒を使い、魔力を魔法に変換するもので触媒はなんでもいい。つまり異世界の勇者の議論はどうでもよかった。
そのどうでもいい議論のせいでこの国の魔法の触媒はその人の自由になっていた。
「えーと、たしかウルフィリア平原の方と……ナザル森林の方と……あとはマルチデリーターのターゲット近くの北西の廃村。ま、最初は廃村から片付けましょうか。もしかしたらマルチデリーターがもう終わらせてたりしてね~」
そう言い終わった彼女は空間転移をして向かう。どれも方角がバラバラなのよねぇ。まったく、シルフィーちゃんは人使いがいつも荒いのよね~。
「うげ、廃村にいっぱいモンスターいるじゃん。ってことはまだマルチデリーターは到着してないってことよね。仕方ない、私が露払いしといてあげるわ」
廃墟に潜むモンスターどもをサーチする。ふぅん。火属性のモンスターがやたらと多いわね。なら、ちょうどいいわ。
「最近、氷属性の魔法って使ってなかったけど……いけるわね」
彼女は手の上で氷を作り出し、蒸発させる。彼女は現在、廃村の入口の空の上でホウキに座って浮いていた。
「サーチアンドデストロイ♪ サーチアンドデストロイ♪ サーチアンドデストロイ♪ サーチ……って、これで目標全部ね。お? 私のサーチに反応してようやく動いたの? もう手遅れよ。まとめて綺麗に凍てつかせてあげるわ。フフッ」
彼女が不敵に笑う。廃村の物陰に隠れていたモンスターどもがぞろぞろと出て来て今にも空に向かって跳びかかろうしている中、彼女は右手を空に掲げた。
「私にロックオンされた時点であんたらはもう死んだも同然よ! これが私の本当の力! 『氷結魔法・
彼女が叫ぶのと同時にある金属音が聞こえた気がした。彼女がその音を聞いたのか敵が聞いたのか、はたまた第三者が聞いたのかはわからない。が、たしかにとある金属音は聞こえた気がした。
カチンッ
廃村とそこにいたモンスター達が一瞬にして氷漬けになった。凍ったのはモンスターの体の表面だけじゃない。モンスターの血液、心臓、脳、魔力、魔法、思考のすべてを凍らせている。
廃村にいたモンスターは全部で100体以上いた。そのほとんどが炎属性のモンスターだが、その炎でさえ氷の中にある。廃村は文字通り『全てが凍って』しまっていた。
「あっれ~? 村にある建物自体は凍らせるつもりなかったのに~。久し振りに使ったから練度落ちちゃってるじゃない。はぁ、サイアク。敵だけ凍るようにしたはずなんだけどなぁ。サーチの意味無かったわね。……ん~。仕方ない。さ、気を取り直して、つぎ行きましょ。次!」
冷気が漂う氷漬けになった廃村をあとにし、彼女は空間転移でウルフィリア平原へ向かった。
彼女は当初の宣言通りに『服にシミ一つ付けず』に勝利した。魔法一つで蹂躙できる。それがオールマジックマスターの本当の実力。
「ん? なんで村が氷漬けになったんだ? まぁ、いいか。結果オーライってことで」
ある少年の呟きは誰にも聞こえなかった。
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