騎士という公務員になりたい僕は組織を抜けたい~能力は一つで剣を使わない多重万能能力の神速剣士~「お前はもう、死んでいる」
第11話 たとえ魔族が魔剣を持っていようとも、僕の剣に付いて来れまい。(剣使わんのに何言ってんの?)
第11話 たとえ魔族が魔剣を持っていようとも、僕の剣に付いて来れまい。(剣使わんのに何言ってんの?)
昨夜のミッションは急だったな。まぁ、あの後、リザさんから隠語無しで話をあの場で聞けたから別にいいけど……。
で、今魔族達の動きが活発なのは新たな魔王が誕生したからみたいなんだって。魔王か。まぁ、どうせ3秒で死ぬし。ま、いっか。ただ、前より忙しいくらいかな。
なんて呑気なことを考えながら学校へ行った。今日は特段何かあった訳でも無く、悪魔や魔族や狂人、殺人鬼や殺し屋、ヤクザやマフィアとか組織からこいつ殺って来てとかのミッションも無く、ごくごく平和に過ごせた。平和過ぎて文章に起こす程でもない。それぐらい平和だった。
ん? なんか嵐の前の静けさの様な気もするなぁ。いや、気のせいだろう。ここ最近忙しかったせいで何も無いのが落ち着かないだけなんだろう。そうなんだろう? なぁ? なぁ!
僕はフラグが立たないよう心の中でキレる。だけどそんなのは意味は無い。そう、明日は休日。リザさんに頼まれてた手伝いとやらをやりに行かなければならない日。はぁ、新たな魔王か……。
僕はベッドの中でそんなことを考えながら眠りに落ちた。
「やあ、レル君。久しぶりだねぇ」
「お久し振りです。ケインさん。」
そう挨拶を交わす僕。ここは組織の自称本部。本当の本部の場所は知らない。実行部隊の僕にそれを知る資格がないし、知らされない。理由は簡単。他の組織に捕まった時に場所を吐かれないようにするためだ。実行部隊の半分以上はここさえ知らないし、ランキングの上位者以外はここが正式な本部だと思わされている。
で、ここがどこかと言うと冒険者ギルドの地下だ。冒険者ギルトには老若男女、誰でも来るし、誰でも来れる。そんなアクセスしやすい所にあるし、ギルド内から4、5通りのルートで来れるし、外部の民家や店の地下通路から来れたりもする。
そんな場所にある本部のエントランスはバーにしか見えない。というかバーとしも機能している。客は全員組織の人間だが。そのバーのマスターがケインさんだ。
ケインさんは面倒見がよく、優しい人で僕が組織に入ったばかりの頃はよく世話をしてくれた。実行部隊の人だったけど怪我で実行部隊から引退し、今は組織の受付のようなバーのマスターのような仕事をしている。
「今日は何番なんだい?」
「2番です」
「……ああ、それでぇ。みんな集まってるよぉ。今日はそこから7番だ」
「はい、わかりました」
「ああ、レル君。今回はちぃとばかし……いや、今回も厄介なミッションになりそうだよ」
「あ、ありがとうございます。……はぁ」
僕はため息と共に手を振りながら人の目に付く柱の『ランキングボード』の横を通り過ぎて行く。通り際にちらりと『ランキングボード』を見ると1位の位置に僕の名前があった。はぁ、ここ2年間はトップの座が揺らいだことが無いんだってこないだリザさんが言ってたなぁ。
僕は心の中でもため息をつく。僕は別にトップでいたい訳じゃない。日常生活ができて学費が払えればランキングなんてどうでもいいのに。そんな僕の思いは叶わず毎月更新されるランキングから僕の名前が消えていない。
まぁ、対象と相対してからどんな相手だろうと3秒で必ず殺せるなんて僕以外いないのも事実だし。いるとしたら2秒以内に必ず対象を始末できる人しかいなくなる。ちなみに2位以下の順位は毎月変わってるらしい。
で、そのトップを呼び出して本部で
はぁ、そう言うのは勇者の仕事なんじゃないのか。と、思うけどあのレベルの勇者じゃまだ無理だな。
僕は心の中で愚痴りながら会議室へ入る。ああ、そうそう。この本部は誰の能力か魔法か知らないけど毎日、エントランス(バー)から先の通路と部屋の配置が変わるからケインさんに場所聞いてからじゃないと迷ってしまう。
「来たか。多
「あ、僕が最後でしたか。すみません」
「いや、気にするな。時間通りだ。それより座れ、マルチデリーター」
「はい」
周りを見るとリザさんとその諜報部隊の面々、ジェシカとその記録係りの人達、他には僕のいる実行部隊の人達などなど。計4、50人くらいの組織の人間がいて、僕に声を掛けたのが組織の大隊長、シルフィー・ハモンド。
大隊長と言うのは大規模作戦をする作戦指揮者のことを言う。色んなことが出来て色んな考えが出来る人で人の上に立ち、的確な指示を出せなきゃ務まらない。つまり強くて頭が良くて何でもできる人。
それを何故か僕にやれって言う人が多い。ハモンド大隊長もそう薦めてくる人の一人。ちなみにハモンド大隊長は上記の『何でも出来る人』に該当する天才だ。
シルフィー・ハモンド大隊長はキリッとした目付きに涙袋が特徴の恐い……じゃなくて、美人の女性。彼女の思想は騎士より『軍』のような考え方をする人だ。
そして僕が椅子に座った時に作戦会議が始まった。ハモンド大隊長が話を進める。
「これより作戦会議を始める。今回の作戦目的は新魔王誕生によって活発化した魔族共を間引きすることだ。」
そう『間引き』だ。殲滅ではなく間引き。『組織』は表に出てはいけないし、知られてはいけない。だから表だって動くのは……--。
「騎士やAランク、Sランクハンターが狩れるレベルの魔族と魔物は残して、我々は彼らが狩れないレベルの魔族共を消していく。無論、低レベルの魔物でも数が多ければ彼らが狩りやすいようそれらも間引く。それが今回の目的だ」
組織はこういうこともする。組織は表立って功績は上げない。だが、裏では……敵には目立つよう、分るようにする。ここは組織がいるから手を出すなと忠告するため。
「今回の敵の『頭』は新魔王の狂信者にして上位悪魔のサリフィスというやつだ。サリフィスは魔王軍幹部で頭が回り、口が達者なやつ。悪魔の中でも相当ひねくれた『良い性格』をしていて、人の絶望のその更に先にある、希望を捨て『生へ諦め』を感じ廃人となった人間を作るのが趣味だそうだ。能力は未来予知。どれくらいの精度で、どこまで先が視えるか不明。武器は大鎌の魔剣。魔剣の能力は非物質の切断。無論、物質も切れる。以上がサリフィス本人からもたらされた情報だ」
ハモンド大隊長は顔をしかめながらサリフィスについての情報を話した。ハモンド大隊長は話を続ける。
「まったく、我々の存在を認知しながらなめた真似をしてくれたもんだ。本来なら
ハモンド大隊長は僕に顔を向けた。やはりと言うか何と言うか。『確実に消す』となれば僕に振るよね。うんうん、知ってた知ってた。
「マルチデリーター、こいつを消してくれ。やれるな」
「たとえ魔族が魔剣を持っていようとも、僕の剣に付いて来れまい」
僕は足を組み、ニヒルに決めゼリフ吐く。ここで「剣使わんのに何言ってんの?」とツッコミを入れる者はいないから僕はドヤ顔を決める。
僕のセリフを聞いたみんなは「うんうん、なるほど、そうだな」と頷き、「マルチデリーターに任せれば確実」と同調し、「やつの未来予知よりマルチデリーターの予知能力の方がどうせ上だろう」と僕を過大評価する者しかこの場にはいない。さらにハモンド大隊長もそのみんなに同意する。
「ふっ、その自信、心強いな。頼むぞマルチデリーター。やつの居場所はこのアストフィア王国の外、北西のリディア森林の中にある旧リディア教会の教会廃屋にいる。上で学生依頼を受けて向かってくれ」
「ああ、わかった」
みんなの信用と信頼に応えるために態度を大きく見せる。少し上から目線な態度をとるのがコツだ。まぁ、僕の適当な持論なんだけどね。
作戦会議はまだ続く……--。
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