騎士という公務員になりたい僕は組織を抜けたい~能力は一つで剣を使わない多重万能能力の神速剣士~「お前はもう、死んでいる」
第6話 お前達の敗因を教えてやろう。僕の剣速が早すぎた。ただそれだけだ。(剣速関係ない)
第6話 お前達の敗因を教えてやろう。僕の剣速が早すぎた。ただそれだけだ。(剣速関係ない)
スーパーに行き晩飯を買って、家に帰ると手紙がドアの隙間から入っていた。この連絡手段はおそらく組織からだろう。
えっと…なになに、ふむふむ、ほうほう。リザさんからの指示書のようだ。ざっくり言うと、この前屋上で魔人に追われて瀕死になっていた組織のあの女の子と組んで今夜、彼女とツーマンセルミッションをやれという。詳細は彼女から聞けだとさ。
ツーマンセルミッションか…。組織からのミッションはソロが良いって言ってんだけどなぁ。組織の連中に僕の能力がバレる危険あるからね。まぁ、今回も上手いこと誤魔化しますか。
「さて、飯でも食うか」
スーパーの安い弁当を食い、お茶を飲んで一息つく。家のドアがノックされる。そろそろか。僕は立ち上がり、剣を腰に差しドアを開ける。
「あれ?ハンスさんじゃないですか。今回のミッションはツァアリさんって人とのツーマンセル…って…」
「こんばんは、レル君。そうそう、今回きみはツァアリ君と組んでもらいます。で、その彼女のもとに僕が送ります」
「ああ、そういう…。ってことは結構遠いんですね。」
「ん?まぁ、そうですね。帰りももちろん送ってあげますよ。ツァアリ君からの連絡がき次第ね」
「わかりました。じゃあ、お願いします」
「はい、では、いってらっしゃい」
僕の体がその場から一瞬にして消える。
「彼女のこと、よろしくね。レル君」
流石ハンスさん。魔方陣も出さず、なんの前触れもなく、正確に人を転移させることができるなんて。ただ、ハンスさんの転移って正確過ぎるんだよねぇ。
目の前にツァアリさんがいた。そう、僕と彼女の距離がゼロセンチゼロミリの距離に。
僕は馴れている。彼女はどうだろうか。僕はゆっくり後ろへ重心を倒し、彼女との距離を空けようとする。が、僕の剣の柄と彼女の剣の柄がぶつかり音を鳴らす。その音に彼女は驚き、前につんのめる。つまり彼女が僕に覆い被さるように倒れ込む。
彼女の剣は腰の右側に差していた。おそらく左手利きなのだろう。そんな考察しているよりまずこの状況をどうにかせねば。とりあえず俺は声をかけることにした。
「えっと、あの~。すみません」
「へ? …えっ? ………………あ、こ、こちらこそすみません」
彼女は状況を理解し、僕から離れる。流石は組織の人間。こんなマンガみたいな倒れ込みが起きても動じない。そして彼女は僕の顔を見る。
「マッ、マッ、マッ、マママママ、マルチデリィイータアアあぁ!?」
「あれ? あなたはツァアリさんで良いんですよね?」
(コクコクコクコクッ!)
ヘドバンするツァアリさん。首が痛くならないのかな?
「じゃあ、ツァアリさん。今日のミッション概要とその詳細を教えて欲しいんですけど、説明お願いできますか?」
「はい! はい! はい! 喜んで!」
「の、前に少し落ち着きましょうか。はい、深呼吸してーーー。はい、吐いてー。はい、すってーー-…」
ここはどこかのビルの屋上だろうか?僕は立ち上がって辺りを見ると僕のいた国ではないことがすぐにわかった。こんな立派なビルなんてないしな。僕のいる国に。科学ってのが発展してないからかな?
まだ辺りが夜だとすると緯度はそんなに違わない所かも知れない。気温は少し高めか。
今回のパターンはおそらく、『このビルの下にいる悪党か経済的重鎮の始末』このどちらかだろう。ま、国外ってことは重鎮の始末の線が濃厚か。
頭の中で考察している間に彼女は落ち着いたか?ツーマンセルミッションは普段、リザさんとハンスさんとあと何人かくらいしか組まないからか組織の他の人が僕と組む時、凄い驚く。
まぁ、それも仕方ないか。組織の実行部隊、ナンバーワンだからな。なんか自分で言うの恥ずいな。
「…。あのー。落ち着きましたか?」
「は、はいぃ。もう大丈夫です。ま、まさかマルチデリーター様と組むとは思いもしておりませんでしたので」
なんか凄いかしこまるなツァアリさん。僕がナンバーワンってことは組織に入っている人なら大体の人が知ってる。僕のことを知らない人はランキングに興味ない人か組織に入ったばかりの新人か。
「ツァアリさん頭を上げて下さい。そんなにかしこまらなくて良いですよ。…大方、ハンスさんが意図的に僕と組むことを言わなかったのが原因だと思いますんで」
「し、ししし、知ってたら知ってたで緊張で夜も眠れなかったと思いますよ、わた、私!」
「はい、どうどうどうどう。もっかい落ち着いてー。………よし、じゃあ、今度はミッション概要を教えてくれませんか?」
「っん、はぁ。……では、今回のミッション概要を説明致します。今回はお分かり頂いていると思いますが国外ミッションです。マルチデリーター様は対象と邪魔者の始末をお願いします。対象までの案内、及び組織への速やかな報告が私の担当になります。私からの報告完了後、ハンス様の力により帰還。以上の流れが今回のミッションになります。ここまではよろしいでしょうか?」
「はい。ツァアリさん、続けて詳細をお願いします」
「わかりました。このミッションはこの国のトップから組織への依頼となります。対象はこの国の経済面での実質一位の権力者。実質というのはやり口が汚いからです。個人の能力をどう使おうが別に構いと思いますが、対象の使い方があまりにも倫理に反するので排除。という形になりました」
なるほど。よくある話だ。組織を通してこのミッションが発生したってことはよっぽど倫理に反してたんだろうなぁ。どう倫理に反してたか言ってないけど、聞いたら大抵胸クソ悪い気分になるのは間違いないな。だから聞かんし、このまま言わんでくれ。
「ただ、経済面で実質一位とあってお金をふんだんに使い、自衛手段を強化しているようでこの国が下手に手を出したら内戦にまで話が大きくなってしまう様です。このビル自体がもはや一種の要塞とまで言える程、警備の者が強く警備システムも厳重なので軍を相手取るものだと思って下さい。誰も喧嘩を売りたがらないですし、侵入さえしようと思う
警備の最も薄い屋上から侵入。で、上階にいる対象を抹殺。かな?ハンスさんの転移先がここだとするとそんな感じだろう。
「ちなみにこのビルって何階建てなんでしょうか?」
「このビルは55階あります。私たちはその上の屋上にいます」
「ヴァベルダンジョンかよ」
「あちらの方は50層ですね。ただ、一層一層の階高が高いのであちらの方が高いですね」
「ええ、そうですね。ヴァベルは上の方『霧』掛かってますもんね」
「今回、対象はこのビルの50階にいます。正しくは50階と51階の間と言いますでしょうか」
「
「はい。ですので直通の隠しエレベーターでしかその部屋にアクセスできません。私達はその隠しエレベーターシャフト内を通り、エレベーターのドアをこじ開け中に入ります。あ、カメラや感知器などは私の能力でどうとでもなりますのでご安心を」
「中に何人くらい護衛がいるかってのはわかります?」
ダメ元で聞いてみる。大抵わからない。が、分かってる時もある。人数次第だと『お前はもう、死んでいる』を連呼しなきゃならないし、そんなとこ彼女に聞かれでもしたら能力のことがバレるし、ドン引かれるだろうし…。
「二人の護衛がいます。よっぽどの身内で信頼のある人で強い人。これがその対象のいる部屋の護衛にできる人になります」
「ハハッ。やっぱ組織の情報力はスゲーな」
「ありがとうごさいます。我が諜報部隊に実行部隊のナンバーワンからそのようなお言葉を頂けるとはこちらのトップもお喜びになるでしょう」
おっと、こいつは初耳だ。諜報部隊の人か。迂闊な言動は控えなきゃな。能力のことがバレるのは是が非でも避けねば…。さっきから独り言を言って拾われてたけど結構危なかったな。ちょっとから笑いしか出ない。
「ハハハッ。……よし、じゃあ、行きますか。案内をお願いします」
「はい。では………ミッション開始します」
ツァアリさんは耳元に手をあて、開始の合図を出す。そして屋上から建物内へ入るドアノブに手を添えて魔法か能力かで鍵をいとも簡単に解錠し、ドアを開ける。
「さ、こちらへ。ここからは私の能力範囲内にいて欲しいので私から半径八メートル以内にいて下さい。私との間に遮蔽物がある場合は三メートル圏内にお願いします」
「はい。わかりました」
ツァアリさんの解錠がさくさくで、警備の穴という穴をついて穴がなければ意図的に作り出し先に進んだり。と、ツァアリさんのケツ追っかけてただけで気づけばもう例の隠しエレベーターシャフト内にいる。
警備は厳重。だが、ツァアリさんの能力の前では無意味と化していた。おそらくツァアリさんの能力は殺傷能力は皆無なのだろう。だから確実に殺せる僕が対象を始末する。そんなところか。まぁ、彼女にナイフを持たせただけで十分暗殺に向いていると思うけど彼女の理由か組織の理由か…或いは相手との相性の理由で僕がいるのか。そんなこと今気にする必要は無いな。
あと少しでエレベーターのドアが開く。そろそろ僕の出番か。ツァアリさんがゆっくりとドアを開け、中の光がシャフト内に差し込んだ辺りで僕は彼女を止める。
「待て」
「!?」
ツァアリさんが少し驚き僕の顔を見る。彼女の能力は評価するが彼女自身はどうやら詰めが甘いようだ。こういう限定された出入口は基本ブービートラップが仕掛けてある。よかった。まだ、作動してないようだ。
ツァアリさんの顔を見るとびっしょり汗をかいていた。呼吸も少し荒い。どうやら今までかなり緊張していたらしい。ミッションの重さを考えるとそりゃそうか。僕は場馴れしているせいか汗一つかかず涼しい顔をしている。
「ここを解除して中に入ればあとは僕の仕事だ。中に侵入したら僕の後ろにいるといい」
「わ、わかったわ」
こーゆー時は強めの口調で彼女の重みを背負ってあげれば良い。まぁ、実際僕の仕事になるわけだし。
「さて、中に入れたは良いものの…。ま、ここから先はトラップはないだろう」
「へ!? ちょっ…」
目の前にドアがある。そしてそこまでの周りは壁しかない。ドアまで十メートル程。僕は独り言を呟き、ズボンのポケットに両手を突っ込み歩き出す。何事もなくドアの前に辿り着く。そしてポケットから片手を出し、ノックした。
-コンッコンッ
振り返るとツァアリさんは心底驚いた表情をしていた。だろうな。さっきのイージーミスをやらかす前より驚いているようだ。
ノックをしてからしばらく後、ドアが開く。おそらくここまで侵入した者は僕達しかしないだろう。さてさて、どんな歓迎をしてくれるかな?
ドアの前に一人の男がいた。そして部屋の奥に対象とその対象の前にもう一人の護衛がいる。情報通りだ。目の前のこいつも護衛だろう。
「なんだお前達は。どこから入ってきた?」
目の前の護衛が口を開く。まぁ、ここまで気付かれずに侵入したんだ。いきなり殺しに掛からず用心しながら聞いてみたくなるだろう。そう…今、僕の首元に剣の
いやー、全く見えんかったわー。この人に僕の神速剣士の称号みたいな二つ名をあげても良いんじゃない?僕は敢えて聞こえない程度の小さい声量で能力を発動する。
「お…………ぅ、し…で…る」
3
「あぁん!?何てった?」
「…………はも…、…んでいる」
2
3
「だから! なんつったぁ!?」
「はぁ、聞こえないのか?」
1
2
「…」
「『お前はもう、死んでいる』そう言った」
0
1
3
「こばでえェェェー!!!!!」
僕の目の前にいた護衛の人の体が内側から弾け飛び、死ぬ。僕はいつも通り返り血を浴びる。左手で剣の鍔軽く弾き、刀身を見せる。ただし、構えない。それだけだ。そして決めゼリフを言う。
「お前達の敗因を教えてやろう」
0
2
「ヒェダバアアァー!!!!!」
対象の隣にいた護衛も胴体が吹き飛びながら断末魔を上げ、死ぬ。僕は決めゼリフを続ける。
「僕の剣速が早すぎた」
対象はまだ今起こったことの事実を受け止めきれずに硬直したままだ。
1
「ただそれだけだ」
「…ハッ。た、たたたたす…-」
僕は左手を剣の鞘に当て、右手を剣の柄に持っていく。
カチンッ
「ゲバブゥウウウ!!!」
対象は全身を滅多斬りにされたかの様に傷痕が付き、死ぬ。特に顔は原型を留めていない。むごい。って、僕がやったんかこれ。予想以上のむごさだったから、ついそんな事を考えてしまった。
僕はツァアリさんの方に振り向き、報告する。
「ツァアリさん、対象の始末をしました。ミッションコンプリートです。ハンスさんに報告をお願いします」
「…………あ。ああ、はい、すみません。…………対象の始末の確認。ミッション完了」
ツァアリさんは最初少し
ってか、あの時って魔人に追われてなかった? …………………ああ、そうか。あの魔人の索敵能力が異常に高くて強かったってだけか。僕の相手は何だろうと誰だろうと三秒後には死ぬから強さとか関係ないんだよね。
「じゃあ、お疲れ様でした。ツァアリさん」
「はい。お疲れ様でした」
何の前触れも無く、何の魔方陣も展開もされなく、突然視界が暗転する---。
「お帰りなさい。レル君」
「はい、ただいまです。ハンスさん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます