第24話 終わりの少年5

「神林、速いご帰還だな。」


 遠藤修平に後ろ手で拘束された神林が戻っ

てきた。


「なんだか、逃げ出そうとしてたから捕まえ

たけど、よかったのかい?」


「手間かけたな。うちの身内だが、逃げたら

こっちで捕まえるつもりだった。まあ、助か

ったよ。」


「あんたたちの手伝いをするつもりはないけ

どね。ところで、ここでは何が起きてるんだ

い?、おっ、亮太、無事だったか。」


 修平は亮太を見つけて駆け寄った。


「お前、その手、どうした?」


 桜井亮太の右手の指はほとんど折れていた。


「大丈夫か?、高弥、救急車だ。」


「さっき手配しましたから、もうそろそろ着

く頃でしょう。」


「少し待ってくれないかな。」


 榊原が割って入る。


「亮太は怪我をしているんだぞ、待ってられ

るか。それより、これをやったのはあんたか

?」


「いや私ではない。さっきお前が捕まえた、

そいつだ。まあ、うちの身内ではあるが、私

を出し抜こうとしたようだな。」


「実行犯はそいつか。ただ、あんたも関わっ

ている、ということでいいか?」


 修平は反社の幹部を真っ向から見据えて言

った。


「私はそんなつもりはなかった。と言っても

いい訳にしか聞こえないだろう。だが、その

お嬢さんは丁寧に扱うよう指示はしたが、そ

の他のことは何も言ってなかったのも事実だ。

その所為で、君の仲間が傷ついてしまったこ

とは詫びよう。」


「詫びてもらっても、許すか許さないかは亮

太次第だし、亮太が許しても俺が許すかどう

かは別問題だぜ?」


「仲間思いなんだな、今時珍しい。」


「そんなの当り前だろ。」


「いや、褒めてない。若すぎて経験不足だと、

教えてやっているだけだ。」


「喧嘩売っているのか?」


「喧嘩を売っているのはお前の方じゃなかっ

たか?」


 ちょうどその時救急車が到着して一旦は騒

然となった。同行しようとする彩木瞳を、と

りあえずは残し、結城高弥が付き添って亮太

は運ばれていった。


「さて、結局、何が起こっているのか、誰か

説明してくれるんだろうな。」


「僕でよければ知っていることは話そうか。」


 突然巻き上がった炎の中から火野将兵が現

れて言った。 

 

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