07 勇者 vs ???

 サポートメンバー商人を仲間にした勇者一行。

ついに激闘の末に『緑の魔王』を打ち破ったのだった。




「アリシアと剣聖が居ないようだが」


 激闘に勝利した私達だったが、

私はヒールでは癒しきれないほどの怪我を負ってしまい

しばしの療養を余儀なくされた。

現在、近くの町の宿屋に暫く滞在している。

私はようやく、昨日からリハビリを開始したところだ。


 大魔王の配下となった魔王の1人『緑の魔王』は

実に強敵だった。

これで残る魔王は『赤の魔王』、『青の魔王』、『黄の魔王』

『ピンクの魔王』、『どどめ色の魔王』、

そして 大魔王を名乗る『黒の魔王』だ。


「二人で出掛けていったよ。デートじゃない?」


と答えてくれたのはマリーだ。

その手にはのらないさ。

剣聖は自分以外には興味が無い男だ。

以前、剣聖は自身の将来のついてこう語っていた。


「僕は将来僕と結婚するつもりさ。

純白のドレスをまとった僕もさぞ美しいだろう」


正直、意味不明だが彼の中で決まったことなら

放っておこうと思う。

という訳でマリーが私に危機感を与えようとしても無駄である。

二人で出掛けたには違いないだろうが

おそらくアリシアが剣聖に頼みがあって連れ出したのだろう。

私ではダメだったのかな?

それだけが残念である。


「ちぇ! つまらないわね」


「私も少し出掛けてくるよ」


「レオンさんお出かけですか?」


「ええ、ルイさん。リハビリがてら少し散歩してきますよ。

少しでも早く旅を再開したいですから」


「そう言って二人を探しにいくんでしょ」


「そう思うなら一緒に来るか?」


「レオンはホントに散歩だけだし、平にご容赦を」


「市場に行くから多少おごってやれるぞ?」


「じゃあ行く!」


こうして私とマリーは散歩に出掛けた。





 私達が宿屋に戻ってもアリシアと剣聖は戻っていなかった。


「あれ、お姉ちゃん達戻ってないね」


「ああ、ルイさんも出掛けたようだな」


その後中々帰ってこない3人。

ルイさんは兎も角、アリシアと剣聖はもしかしたら

マリーの言うとおりデートなのか?

少し不安になる。


いや、あの二人に限ってそんな事にはならない。


でも、二人は年も近く、私よりは話が弾むかも知れない。


いや、アリシアを信じなくてどうする。


でも……、いや……、でも……、


ダメだ! 気になる!

以前マリーに言われた 自分の弱点。

こんな事ではアリシアを守り切る事が出来ない。

よし! 信じるぞ。

根拠はないが兎も角アリシアを信じる。そう決めた!


私はベッドに寝転がり悶々としている内に

昼寝をしてしまった様だ。

部屋をノックされて起きた。


「勇者様、お夕食にしましょう」


いつの間にかアリシアは帰ってきたようだ

夕食の時間か。我ながら3時間くらい寝てしまったらしい。


「ああ、アリシア。今行くよ」


ドアを開けると

私が待ち焦がれたいつものアリシアがそこに居た。


「いつの間にか寝てしまったみたいだ」


「ごめんなさい。起してしまいましたか?」


「いや、寝すぎるところだったから助かったよ。有難う」


アリシアはにっこり笑ってくれた。

この笑顔は私の癒しだ。


「私は荷物を取ってきますから先に行っていて下さい」


「ああ、分かった。先に行っているよ」


何気ない会話だが先程の不安が全て消えてしまった。

恋は盲目というが、私も単純だな。


 私達はいつも宿に併設されている食事処で夕食をとる。

酒場というよりは食事がメインでお酒も扱っている。

私が席につき、何を頼もうかと献立表を眺めている内に

皆も集まってきた。


「勇者様」


アリシアが呼ぶ声が聞こえ、

献立表から目を離すと

そこにはひと振りの剣を抱えているアリシアが居た。


「アリシア、この剣は?」


「勇者様、緑の魔王との戦いで

私を守るために剣が折れてしまったでしょう?」


「あ、ああ、アリシアを守るのは当然のことだ」


「その為に怪我までされて……」


「それで君を守れたんだ。悔いはない」


先の緑の魔王との戦いでは、

アリシアを狙った魔王の攻撃から私が守った。

その際、剣が折れ、私も深手を負った。

その時魔王に出来た隙を突き

剣聖とマリーの連携攻撃で倒したのだった。

私に悔いが無いがアリシアはずっと後悔していたに違いない。


「勇者様、私は何時だって守られてばかりで」


「当たり前だ。守るさ。何時だって何度でもな」


アリシアの目には涙が。

そんな、泣かせるつもりではなかったのだが。


私のこのパーティーでの役割は勇者といっても

アタッカーでは無くタンクだ。

タンクとして皆を守るのは当たり前だし。

ましてやヒーラーのアリシアに何かあったら

戦闘を維持できない。

冷静な判断の上での行動だ。

だから気にしないでいいという意味だった。

それに惚れた女を守るのは理屈じゃない。


「レオンもお姉ちゃんも見てられないよ」


マリーが冷やかしてきて、アリシアは顔を赤くする


「ああ、済まない。それでその剣は?」


「今日 剣聖様に頼んで目利きしてもらったのです。

勇者様が使うのにふさわしい剣をプレゼントしたくて」


「私の為に……」


「お嫌だったでしょうか?」


心配そうなアリシア。正直凄く嬉しい。


「アリシア。有難う!ありがたく使わさせてもらうよ」


「この美しい武芸百般の僕の目利きだからね。

自信をもって断言できるよ。それは相当いい剣だよ」


「そうか、剣聖も有難う」


アリシアから武器を受け取る。

その瞬間、何か、何だろう? 何か力が入ってきた気がする。

が なんとも無いようだ。気のせいか?


こうして

夕食を楽しく始めた私達だったが

そこにルイが帰ってきた。

手には何枚かの紙を持っている。


「ルイ おかえり」


「ただ今戻りました。 早速ですがレオンさん」


「何かな?」


「暫く、お酒とお小遣いは自粛でお願いします」


突然の発言に思考が止まる。

え? 何故?

私達はパーティー共通資金とは別に個別に『小遣い』を分配している

その小遣いと私の楽しみのお酒を自粛してほしいという。


「どったの? ルイ」


「お恥ずかしながら、

今回の魔王討伐に結構予算を注ぎ込んでいます。

討伐出来たのは幸いでしたが

その後の療養が想定以上に長く、

療養費、生活費、宿代等もう財政がピンチです」


「そうなのか?」


「そこに加えて」


「加えて?」


「レオンさんのその剣、いくらだと思います?」


「い、いや聞かないでおこう」


「勇者様にはいい剣を使って欲しくて」


「僕は本当にいいものを選んだだけだからね」


「アリシアの気持ちはありがたく受け取るさ」


「それで、アリシアはギルド口座払いでその剣を買ったんでしょ?

私を連れて行ってくれればよかったんだけど。

私、気になってレオンさんの冒険者ギルド口座調べたんですが」


「ですが?」


「真っ赤ですよ。マイナスです」


「うそーん!」


「1ヶ月以内に返済しないとなりません。

取り敢えず、依頼を受けて来ましたので

明日から早速こなして下さい。

場合によっては個別に依頼受けますので」


「あ、ああ、分かった」


 こうして私達は借金返済のため

暫く冒険者として活動することになった。

因みに剣は素晴らしい切れ味だったが

その代償なのか同時に呪われてもいた。

しかしあまりに分かりにくい効果だっただった為

それに気づいたのは相当後の事だった。


呪いの内容

それは、鼻血が出やすくなる、エロいこと考えた場合は

100%鼻血が出るというものだったのだ。



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Winner:無し(この戦いに勝者は居ない。)


ただ勇者がいろんなものに負けただけである。

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