第35話 榊さんの情報収集

 数十分後、榊から電話がかかってきた。


『式くん、めーぷるちゃんについて調べた結果、いくつかのことがわかりました』

「何?」

『まずSNSを見てみたのですが、めーぷるちゃんの配信で異変が起きた後、近くで爆発音がしたから気になっていってみてたら、一件の家が火事になっているという情報がありました。どこで起きたのか調べた結果、明戸高校からそう遠くない場所だということがわかったのです』

「え、じゃあめーぷるちゃんは結構近くに住んでたんだ」


 意外な事実に驚愕する。


『それだけではなく、めーぷるちゃんの家の近くを通っていた目撃者が警察や消防に通報したらしいのですが、その呼ばれた警察というのが隼人兄さんだったようです』

「そんなことまでわかったんだ」

『私の情報収集力を甘くみたらいけませんよ』

「はは、そうだね」


 何だか少し怖い発言だな、と式は思った。


「それで、隼人さんから何か情報は来たの?」

『いえ、そもそも私には何も言わずに現場に向かっているようなので』

「そうなんだ」

『ええ。というわけで、今から一緒に行きましょう』

「え?」


 榊がそう言った後、式の家の前に一台のバイクが止まった。

 様子を見てみると、それはバイクに乗った榊だった。


「え、榊さん!?」

「さあ後ろに乗ってください。ここからでもそう遠くないので、すぐに着きますよ」


 突然のことで頭が回らなかったが、勢いに流されるまま式はバイクに乗った。


「というか榊さんバイク運転できたんだ……」

「免許を持っているのですから当然です。では行きましょう」


 事件現場に向かって、二人を乗せたバイクが発進する。




 事件現場に向かう途中、式はいくつかの質問をした。


「そういえば、隼人さんは俺たちが現場に向かうことは知っているの?」

「知らないはずですよ。特に何の連絡もしていないので」

「やっぱりか……」


 相変わらず強引な手を使うな、式は思った。


「それなら、何で隼人さんがこの事件を担当していることがわかったの?」

「……式くんはエシュロンって知っていますか?」


 エシュロンとは、軍事目的で利用される通信傍受システムである。


「ああ、名前だけなら聞いたことあるよ。通信傍受システムだっけ」

「ええ。私は本物と同じとは言わないまでも、簡易型のエシュロンを自作し、それで隼人兄さんが関わる事件について情報収集を行っているのです」

「そんなことしていいの……」

「もちろん秘匿情報は外部に漏らさないようにしていますし、そもそも私も知ろうとは思いません。あくまでも私たち探偵会が解決できるような事件がないかを調べるために使っているので、悪用する気はありません」


 榊が言うには、簡易エシュロンで得た情報で現場に向かっても、偶然を装えば特に疑われることはないだろうと考えているらしい。

 もっとも、隼人は榊なら何かしらの方法で自分が関わる事件をすぐに調べ上げて嗅ぎつけているのだろう、という予測くらいはしているかもしれない。

 もちろん、簡易エシュロンの存在は大きい声では言えないことなのはわかっている。


「そういうわけなので、今後は事件も発見しやすくなっています。これで私たちもどんどん事件を解決し、探偵会の名前を広げることができるでしょう」

「でも、事件解決は俺の仕事なんだよね」

「もちろん私も手伝いますよ。だから一緒に解決しましょう」

「はは、まあよろしくね」


 そのような話をしているうちに、事件現場に着いた。

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