第71話 第2の刺客と本物の遺書

 金貸しゼファーを丁重に拷問オモテナシしたあとギルドを通じて役人に引き渡した。


「まあ概ね思った通りだったな…」

 相手の


「え、ええ…」

 アニタが少し気まずそうに目を反らす。


「今日はとりあえず寝るか?でもな…」

 …おそらく奴らは来るだろう。俺を始末するには今日以外に無いのだから。


「ん…何かいい手は…そうだ!アニタ今から言う事をやってみて。知り合ったばかりの奴が出来たんだから多分アニタもできるはず」









「キャーッ!!」

 朝早く女性の悲鳴が響き渡る。誰が呼んだのかわからないがあまり間を開けずに衛兵がなだれ込んできた。


 そこには泣きじゃくる女性とベッドの上で胸を短剣で刺され倒れている銀髪の女性だった。






「朝…起きて…ご主人様を……起こしに来たら…こんな…状態…で」

 女性アニタは衛兵の問いに言葉少なく答えた。

「隊長!これを!」

 衛兵の一人が指し示す窓を見るとガラスの一部が割られており外から鍵を開けたらしいと言うのがその衛兵の見立てだった。

「外部からの侵入か…だが番犬もいるのにやすやすと侵入できるのか?」


「おそらくこれが原因では?」

 地面にこぼれていた灰を指す。


「おそらく眠り草の香だと思われます」


「…なるほどこれを焚いて無力化した後侵入したか…」


「犯人に心当たりは?」


「…わかりません敵は多いとは聞いてましたが…」


「そうですか…遺体はどうしますか?」


「…すみませんしばらく二人にしてもらえますか?」


「分かりました。後日人をやりましょう」

そういうと衛兵は引き上げて行った。遺体を前にを浮かべるアニタに気が付かず。









「まさか!妻が生きていたと聞きて飛んでやって来たのに!」


 玄関で座り込みながら嘆くのコルトと言う男爵の男。

 対象的に連れられた娘と呼ばれる女の子名前はリリアと言うらしいが、嘆く男の背中を蔑むような表情で見ている。


「…ここではなんですから中へどうぞ…」



「おお!リリス!」

 ベッドに寝かされているリリスにすがりつくように泣きじゃくるコルト、リリアはリリスの顔を見てギョッとしている。




「ごめん下さい!」

 二人を応接間に通してお茶を出していると玄関から声がした。

「少々失礼します」

そういうとアニタは出ていった。

「リリア…もう少し演技したらどうだ?あからさまにおかしい子だぞ?」


「…お前も大概だろうが…」

リリアら子供らしさがかけらも無い声で言った。




「戻りました」

戻ってきたアニタともう一人…


「…そちらは?」


「商業ギルドのギルドマスターで…」


「エイムと申します」


「商業ギルドのギルドマスターが何故?」


「この度リリス様が遺書を遺してましてその鑑定結果を報告に」


「え!?」

コルトは顔を青くした。


「どうでしたか?」


「間違いなく本人のものと断定されました。」


「な、内容は?」


「あなたは?」


「この方は御主人様の夫だと名乗る方です」

名乗る方に力が入っている気がする。


「ふむ…まあいいでしょう」

 封書を開き読み上げる。


「私リリスが死んだ場合アニタの奴隷契約を解除し一個人として生きる事を許可する。」


「な!?」

 

 こいつ等の真の目的は家でも財産でも無くだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る