第672話 2021/8/16 地震とか

 本日は10時起き。曇天。早朝に大雨の音で一瞬目が覚めた。おかげで中途半端な睡眠になったのか、意識が朦朧としている。気分は陰鬱。そして世界もまた陰鬱な話題に溢れている。


 アメリカ大陸の東側、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島のざっくり東側半分はドミニカ共和国であり、西側半分を占めるのがハイチである。ハイチはゾンビでお馴染みヴードゥー教が生まれた地として知られる。テニスの大坂なおみ選手の父親の出身国でもある。

 東日本大震災の前年、2010年1月にハイチでは大地震が発生している。マグニチュード7.0の直下型、震源の深さは13キロだというから、少なくとも震度5から6はあったのではないか。

 この大地震でハイチ国内では31万6000人に及ぶ死者が発生し、元々不安定だった国内がより混沌としてしまった。そこで国連はPKOを送り込んだのだが、この際派遣されたネパールの兵員から大規模なコレラ禍が発生した。それまでハイチにはコレラが存在していなかったため、ハイチ人にはコレラに対する免疫がまったくなかった。よって瞬く間に全国に拡大し、1万人の死者が出たとされる。踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂とはこの事だろうか。

 ハイチではこの後も政情不安が続き、地震に破壊された地域の復興は延々と後回しにされてきた。日本でも福島の原発周辺は復興できずにいるが、さすがに状況が違う。比較するなら、たとえば福島市の都心部で倒壊したビル群があったとしたら、それをいまだに放置しているような有様だ。先月の7日には大統領が暗殺されているのだが、もしかしたらハイチの国民としては「それどころではない」のかも知れない。

 そんなハイチで現地時間の14日朝、マグニチュード7.2の大地震が発生した。震源の深さは10キロ。これを書いている時点で1297人の死者が出ている。負傷者数は5700人に上っているが、どちらの数字もまだ増える可能性がある。首相は1ヶ月間の非常事態宣言を出した。しかし現状を考えれば、1ヶ月で済めばいいけどな、としか思えない。

 この先余震もあるだろう。二次災害にも注意しなくてはならないし、行方不明者の捜索も行わなくてはならない。そして被災地の復興も考えなくてはならないのだが、これにはまず11年前の被災地の復興を優先する必要があるはずだ。極めて難題である。何とか上手く行ってくれればと祈るばかり。


 何とか上手く行ってくれれば、とアメリカのバイデン大統領が思っていたであろうアフガニスタンの情勢であるが、現地時間の15日(日本時間の16日早朝)、反政府武装勢力――この言い方ももう必要なくなった――タリバンが首都カブールを占拠し、勝利宣言を行った。

 ガニ大統領はアフガニスタンを出国、と報じられているが、まあ要は逃亡したわけだ。これにてアフガニスタン・イスラム共和国は事実上崩壊し消滅した。今後はアフガニスタン・イスラム首長国へと変わるのだろう。日本語で見る限りあまり変化はないように見えるが、中身はまったく異質なものとなる。

 今後のアフガニスタンはイスラム原理主義、それもタリバン的解釈の、ローカライズされたイスラム原理主義というわかりにくい思想に支配される国家となる。女性の教育や就労に関してタリバンは柔軟な態度を一部メディアに見せたりしているが、そんなものは見せかけである。一時的に認める事はあっても最終的には従来の立場に戻る。法に反した者は娯楽として公開処刑され、自由や平等を求める声は抹殺される。北朝鮮も真っ青な時代錯誤の狂信者国家となるのは見えている未来だ。ただし、それが長く続くかは疑問である。

 豊臣秀吉は日本を平定した後、配下の大名に報償として与える領地がなくなってしまい困ったという話があるが、タリバンでも同様の事は起こるだろう。これまでは戦う事で金を与えられ、支配地での略奪も認められていた兵士が沢山いる。しかしこの先、いずれ戦いらしい戦いはなくなってしまうはずだ。

 アルカイダやISの残党を敵と認定して掃討作戦くらいはするかも知れないが、アフガニスタンの領土を拡大するために周辺国の領土を侵略するような方針をタリバンが取るとは考えにくい。ISのように無限に領土を拡大したいと考えるような集団とは異なり、タリバンはアフガニスタンという地域にこだわった土着集団である。タジキスタンやイランと小競り合いはあるだろうが、大規模な戦争を外国に仕掛けるとも思えない。その辺は北朝鮮が参考になろう。

 しかしタリバン中央がそう考えていても、タリバンに外部から参加した、つまり勝ち馬に乗った連中は「もう戦争はしないぞ」と言われて「はいそうですか」とは言うまい。金の切れ目が縁の切れ目、自分たちが不要になったと見るや反旗を翻すに違いない。この手の反乱が今後タリバンを悩ませるのではないか。

 戦争をしている間のタリバンは強かった。だが平和を維持する能力があるかどうかは未知数だ。平和は戦争ほど簡単ではない。ただ勝てばいい訳ではないのだから。平和を維持しようと思えば、主義主張を曲げてルールを変えて行く必要もある。果たしてタリバンにそれが可能だろうか。いずれ何の力も持たない田舎国家に成り下がるか、もしくはまた全部ぶち壊して一からやり直しになるだろう。勝った勝ったと喜んでいられるのは、いまのうちだけである。


 アフガニスタン関連でもう一つ。イギリスの公共放送BBCの報道によれば、

「チーヴニング奨学金は、イギリスの大学院で学ぶ海外留学生が対象。英外務省が全額出資する奨学金制度で、権威も競争率も非常に高い」

 との事。このチーヴニング奨学金の対象とされていたアフガニスタン出身の留学生に対し、イギリス外務省は来年度(つまり来月、2週間後の9月から)の奨学金を停止すると発表した。アフガニスタンの首都カブールにあるイギリス大使館が書類手続きを終えられない見込みである、との理由らしい。まあ確かにカブールのイギリス大使館はいまそれどころではあるまい。

 だが、さすがにいきなり停止はなかろう。状況が状況なのだから、何らかの救済措置があってしかるべきではないのか。学生の一人はBBCの取材にこう話した。

「眠れない。今こそ(奨学金とビザが)必要なのに、それを取り上げるなんて」

 悲痛な叫びとはまさにこの事。この決定にはイギリスの政界からも批判の声が上がっている。保守党のデイヴィッド・リディングトン議員はTwitterで、

「道徳的に間違っているし、イギリスの利益にも反する」

「チーヴニング奨学金を得たアフガニスタンの学生はもちろん、特にタリバンからのリスクが大きく、イギリス政府がイギリスに招きたい『最優秀』の学生たちのはずだ」(以上BBC)

 と政府を批判した。

 そう、イギリスに留学したような人物は、まして女性は、アフガニスタンに戻ればタリバンから攻撃される可能性は極めて高い。そして奨学金を得られるような学生は当然の如く優秀な人材だ。それを放り出すなどもったいないにも程がある。

 まあ、この辺イギリスはさすがにタリバンほど頭が固くはないだろうから、救済措置はあるのではないか。ある事を期待したい。こういうとき「なんなら日本に来てもいいよ」くらいの事を日本政府が言えれば、優秀な人材が確保できるのだけれど。無理だろうな。


 本日はこんなところで。あうー、昨日はミステリーを1500文字ほどしか書けなかった。まあ物語も後半だからな、段々難しいところに差し掛かる訳だし、仕方ないっちゃ仕方ないのだが、もう少し何とかならんか。とにかく頑張るしかない。

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