第394話 2020/11/11 正義とか

 本日は8時起き。いささか遅めではあるものの、何とかまともな大人の起きる時間と言えるだろう。よし、今日はまともな一日だ。と言いつつゴロゴロするだけなのであるが。

 それはさておき、終わった。昨日で『魔獣奉賛士』が完結、無事更新は終了した。やったーっ! 終わりだーっ! はあ、まさか丸一年かかるとは思わなかった。文字数にして38万6000字超。とりあえず「長編です」と言っても笑われない程度には書けたろう。よく頑張った。あとはあちこちのコンテストにこいつを放り込むだけだ。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるのである。

 さて、問題は次だ。次は何を書こうか。現段階ではおそらくミステリーか巨大ロボット物のどちらかなのだが、設定もプロットもなしで書くのはもう当分やりたくないので、何とかそこから詰めて行こうと思う。思いつくまでは本を読んだり録画したアニメを観たりして頭を動かすとしよう。どうなる事やら。


 日本語に「正義の味方」という言葉が初めて出現したのは、1958年(昭和33年)に放映されたテレビドラマ『月光仮面』の中である。原作者の川内康範氏が主人公の決め台詞として考えた中の一つで、幾つかの候補からこれが選ばれたのだが、川内氏としては「正義の助っ人」が良かったとずっと思っていたらしい。

 それにしても「正義の味方」とは絶妙な言葉である。あくまでも味方であり、自らが正義ではないのだ。この辺は川内氏の宗教観とも関わってくるのかも知れない。確かに、神でも仏でもないただの人間が正義そのものであるはずなどない。正義というものは別のところに、より高い次元にあって、人間の善行とはそれに味方する行為なのだろう。

 実際、意図して行われる善行に正義という言葉が結びつけられる事はあまりない。どんなに社会的に立派な行為であろうと、それを正義だと誰かが言い出したら、途端に胡散臭くなる。まあ、だからといって自ら「これが正義だ」と主張してる訳でもない人に向かって、「それ偽善ですよね」とか言う必要はまったくないと思うのだが。

 正義というのは結局のところ、意図せず無心に行われる善行の中に宿るものなのではないか。たまたま道を聞かれて、たまたま知っている病院だったので道を教えた。そこに何かの意味があると本人は思っていないし、何かを得ようとする下心もない。だがもしかしたら、そのちっぽけな行為のおかげで子供の手術に立ち会えた親がいるかも知れない。人の命を救うとか、世界の平和を守るとか、そんな大きな事でなくて良いのだ。正義とは本来ほんの僅かな、小さなところに宿る灯火のようなものなのだろう。

 だが、正義という言葉は人を魅了し誘惑する。自らを正義の味方の立場に置きたいと思わせてしまう。正義を守りたいと願う気持ちは人として正しいのでは、と思うかも知れないが、残念な事にそれはたいてい悪魔のささやきなのである。

 今年の9月に香川県高松市で、母親が駐車場の車の中に女児2人を置き去りにして熱中症で死亡させるという、何とも痛ましい事件があった。これを報道で知って怒りに震えた方もおられるだろう。香川から遠く離れた福島県の26歳の男もその一人。

 保護責任者遺棄致死罪で起訴された母親はそのとき、香川県警高松北署の留置場にいたのだそうな。男は9月8日午後6時55分頃、福島県郡山市の携帯電話販売店のタブレット端末から――自宅からじゃなかったのは多少賢いが、何とも迷惑な――香川県警ホームページの意見欄に、実在するテレビ局の男性アナウンサーの名前を騙って女児の母親を殺害すると書き込み、「殺害できなければ、この留置場を爆破します」(産経新聞)と書き加えた。バレないと思ったのだろうが、2ヶ月経った昨日10日、警察業務を妨害した威力業務妨害の容疑で逮捕された。日本の警察もそこまで間抜けではない。

 調べに対して男はこの母親に怒りを感じたと話し、「香川県は遠いし、爆弾も用意できないので諦めた」(産経新聞)とも供述しているそうだ。この件に関し、ネットでは「気持ちはわかる」という声が多く上がっている。まあ確かに、怒りを覚える事自体は理解に苦しむものではない。だがそれ以外は単に馬鹿である。間抜けで愚かしい。感情のコントロールを失い、正義の誘惑に負けただけなのだ。

 相手が悪人だからといって、何をしても許される訳ではない。そんな正義は狂った正義だ。仮面ライダーがライダーキックで悪の怪人を倒せるのは、フィクションの世界だからである。機動戦士ガンダムが正義の怒りをぶつけるのは、スポンサーへの配慮である。実在の人間に対して法を超越した怒りをぶつけてはならない。それは法治国家に暮らす我々にとって絶対に守るべき基本原則であると思う次第。


 ナゴルノカラバフ自治州を巡り、9月27日からずっと続いていたアゼルバイジャンとアルメニアの戦いは、現地時間の10日午前1時(日本時間午前6時)からの「完全停戦」で合意した、とロシアの報道官が10日未明に明らかにした。プーチン大統領とアゼルバイジャンのアリエフ大統領、アルメニアのパシニャン首相の3者が停戦に関する共同声明に署名した模様。これまで3度の停戦合意があったが、それらはいずれも発効直後に双方から破棄されていた。しかし今回は違うはずだ。何故なら今回の合意では、アルメニアが事実上の敗北を認めているのだから。

 産経新聞によれば、以下の3項目が合意文書に盛り込まれている模様。

(1)アルメニア側が実効支配していた同自治州と周辺地域のうち、今回の戦闘でアゼルバイジャンが占領した地域は原則的にアゼルバイジャンが確保する

(2)アルメニアは過去の紛争で支配下に置いた自治州周辺の3地域をアゼルバイジャンに返還する

(3)ロシアは2千人規模の停戦監視部隊を派遣する

 つまりナゴルノカラバフは今後アルメニアと完全に切り離され、しかもその一部はアゼルバイジャンが支配する事をアルメニアが認めたという事である。ナゴルノカラバフの内部にいるアルメニア系住民をどうするのだろうという問題は残るが、とりあえずアゼルバイジャン側にとってはほぼ完全勝利だろう。

 アゼルバイジャンのアリエフ大統領は共同声明署名後に行った10日の国民向け演説で、

「目標は達成された。最も望ましい形での決着だ」(産経新聞)

「人々は(取り戻した)土地に帰り生活する。われわれの30年に及ぶ苦難が終わる」

「事実上アルメニアの降伏だ」(以上時事通信)

 と述べ、一方のアルメニアのパシニャン首相は、

「筆舌に尽くせない苦痛だが、やむを得ない選択だった」(産経新聞)

 とFacebookに投稿した模様。

 この決着に不満を持つアルメニア国民が首都エレバンで政府庁舎に乱入し、野党勢力は首相の辞任を要求しているという。だがおそらく、国単位でミサイルを撃ち込み合うような戦闘は、しばらく起きないのではないか。今後発生する問題としては、まずテロがある。これは双方の応酬があるかも知れない。しかしもっと怖いのは、ナゴルノカラバフに暮らすアルメニア系住民に対するジェノサイドが起きる可能性である。ロシアが停戦監視部隊を送り込むのは、この辺を意識しての事だろうとは思うものの、果たして実際にはどうなるか。何とか機能してもらいたいところなのだけれど。

 

 本日はこんなところで。ああ脱力脱力。放心している。昨日まで毎日やってた事がもう終わってしまっているというのが、何とも言えず不思議な気分。数日は違和感でもぞもぞする事になるのだろう。でもとりあえず完結できて良かった。さて、今度この気持ちを味わうのはいつになるのか。どんなに早くても来年だろうな。

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