第289話 2020/7/29 大男とか

 昨日はまったくダメ。何にも出て来ない一日だったので早めに寝たのだが、目が覚めたら午前1時。これはいかん、二度寝するしかないなともう一度寝たら、次に起きたのが午前4時。そして現在に至る。眠いしダルいし気持ちが悪い。なのに神経が昂ぶっていて眠るに眠れない。やれやれである。


 昔から「大男総身に知恵が回りかね」と言うが、「デカいヤツは愚鈍だ」というのは別に日本人独特の発想ではなく、海外でも同様と思われる。『ジャックと豆の木』の巨人なんかが典型例かも知れない。

 かつての恐竜図鑑には、恐竜は尻尾の先をケガしても、その痛みが脳に伝わるまで何時間もかかった、なんて事が書かれてあった。そんな間抜けな生物が大繁栄などできる訳がないと普通に考えればわかりそうなものなのだが、これもまた「総身に知恵が回りかね」的な先入観のなせる業だったのだろう。

 しかしデカくなれば愚鈍になるという考え方を、単に差別的だと一蹴するのは正しくない。個人はともかく、集団や組織になるとデカくなるほどノロマになるのは一般的な傾向と言える。

 虫けらがいま書いている『魔獣奉賛士』には「聖騎士百万人」の軍勢が出て来るシーンがあるが、これはフィクションならではである。実際には百万人の軍勢に正しく作戦行動を取らせるなど無理だろう。まず人数が多すぎて、情報伝達だけで膨大なコストが発生する。正確性にも欠けるのではないか。百万人に一斉に号令などかけたら大混乱になるのは目に見えている。

 ちなみに中国の人民解放軍の陸軍が160万人くらいらしいが、これはあの広大な中国領土の各所に分散している人数の総計である。160万人が同じ場所で同じ方向を向いて行動する事など有り得ない。

 日本で数的規模の大きな戦いが行われたのは戦国時代から江戸時代にかけてであるが、10万を超える軍勢を指揮したのは、豊臣秀吉とか徳川家康とか天下人のレベルだ。普通の戦は両軍合計しても10万に達しない場合が多かった。その戦でも、10万人が一斉にぶつかり合うような戦場はそうなかったろう。先頭がぶつかりあっているとき、後方ではのんびり飯を食っていた、なんて場合もあったかも知れない。

 さて、東アフリカの国スーダンといえばダルフール紛争で有名である。この紛争はもう思いっきりザックリと乱暴に説明するなら、アラブ系遊牧民とアフリカ系農耕民の争いなのだが、2019年にクーデターで当時のバシル大統領が失脚した事により、何とか解決する方向に進んでいた。

 しかし今月25日、西ダルフールの町マステリを、およそ500人の武装した集団が襲い、60人以上の住民が殺害された。武装集団の正体は不明であるが、24日にも別の村が武装集団に襲われ、農耕民20人が殺害される事件が起きたばかりだという。

 500人というのは、かなり恐ろしい人数である。軍隊なら小隊で30~40人ほど、中隊で200人ほど、大隊で500~600人となるらしい。つまり500人の武装勢力というのは大隊規模であり、仮に訓練された軍事組織ではなかったとしても、かなりの戦闘力を持っていただろう。それでいて機動的に動くのに多すぎない人数とも言える。総身に知恵が回りかねるような事はなかったはずだ。

 遠いアフリカの事なのでピンと来ないところもあるだろうが、いまの日本でも500人集まれば、それももし拳銃などで武装していたら、かなり無茶苦茶な事ができるはずである。おそらく警察もすぐには対応できないだろう。ましてやついこの間まで内戦をやっていた地域だ、どんな無法が行われたのかは想像に難くない。

 スーダン政府のハムドク首相は26日、ダルフールに治安部隊を派遣すると表明したが、それだけで解決できるかは不明である。たぶん相手は政府より小回りが効く。間抜けな大男のように振り回されなければ良いのだが。


 ニュージーランドは小さな国である。国土も小さいし人口も少ない。経済規模も軍事力も小さい。そんな国がいま巨竜に立ち向かっている。28日、ニュージーランドのピーターズ外相は香港との犯罪人引き渡し条約の停止を発表した。オーストラリアやイギリス、カナダに引き続いての対応である。また香港への渡航情報を更新し、「解釈の余地が大きく幅広い活動において、国家安全保障上の理由で逮捕および起訴されるリスクが高まる可能性がある」(NHK)と国民に注意を呼びかけた。

 香港国家安全維持法に絡んでの事ではあるが、かなり思い切った行動だと思う。ニュージーランドと中国では国の規模がまったく違う。もし貿易などで圧力をかけられたら、相当にキツいだろう。ましてニュージーランドは観光立国である。いまは新型コロナで観光客もいないが、今回の決定で、この先中国からの観光客が永遠に来なくなるかも知れない。だがそれでも決めるべきを決めたのだ。これは大変に勇気のある決断と言える。

 日本はこれを傍観していていいのだろうか。日本は香港とは犯罪人引渡条約を締結していないはずだが、他に何かできる事はあるだろう。日本政府には是非率先して行動していただきたいところ。


 朝鮮戦争の休戦協定から67年となった27日、北朝鮮の金正恩委員長は退役軍人の式典で演説を行い、

「敵対勢力のいかなる形態の圧迫や軍事的な脅しに対しても自らを守ることができるようになった」(共同通信)

「信頼できる有効な核抑止力により、今後、朝鮮半島で戦争という言葉が使われることはない」(AFP)

「自衛的な核抑止力によって、この地に戦争はなくなり、わが国の安全と未来は、永遠に確実に、担保される」(NHK)

 などと述べた、と朝鮮中央通信が28日に報じた。どこまで本当なのかは不明だが、まあ普通に考えればそうなるわな。どのレベルの核兵器を持っているのか知らんが、一度手に入れた力を手放す理由などなかろう。米朝首脳会談が行われたときに本当に朝鮮半島の非核化が進むと信じた人も居るようだが、あまりにも単純で純朴な希望的観測でしかなかった事は、もはや明白である。そういう国なのだという前提を忘れないでいただきたいところ。


 本日はこんなところで。

 このところ『魔獣奉賛師』が書けない。何故書けないのかはわかっている。話を膨らませられないからだ。物語はエンディングに向かっているのに、ここで別方向に話を発展させたら大事になる。文字数は稼げるが、いつまで経っても終わらなくなってしまう。だから路線を変更せずに物語を粛々と続けるしかないのだが、これが大層しんどいのだ。ていうか、なかなか上手い終わらせ方が見つからない。どうしたものかなあ。

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